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還暦おやじの洋楽日記

Strawberry time / 松田聖子

1987年、まだ返還前の香港に初めて単身出張で行ったのは今ぐらいの季節。その時期の香港って亜熱帯なもんでやたら暑くて湿度が高いのだ。眼鏡をかけているとしょっちゅう曇って困るぐらい。仕事が終わると毎晩、現地の駐在員がアテンドしてくれて彼の車で色んなところに連れて行ってもらった。その彼が松田聖子ファンだったのかどうか知らないが「新作が出たんですよ」と言ってカーステレオでかけてくれたのがこのアルバム。夜空が湿気で霞んでいるような高速道路からの眺めと1曲目の「Strawberry Time」のイントロが妙にシンクロして、まったく個人的な感想だけれども、このアルバムを聴くといつも香港の湿り気をたっぷり含んだ空気感を思い出してしまう。

1. Strawberry Time
2. 裏庭のガレージで抱きしめて
3. Kimono Beat
4. 妖しいニュアンス
5. シェルブールは霧雨
6. All Of You
7. 雛菊の地平線
8. チャンスは2度ないのよ
9. ピンクの豹
10.LOVE

最初に断わっておくが僕は松田聖子個人には興味がなく、むしろ苦手。ただ、有能なソングライターが魅力的な曲を提供し、主として松本隆の歌詞によって構築された偶像による物語を紡いだ80年代の”松田聖子プロジェクト”には当時から魅了されて彼女のアルバムはよく聴いていた。その聖子が結婚・出産したのでプロジェクトも終焉したのかと思っていたら、まだまだ続いていくことがわかったのがこのアルバムだった。
タイトル曲「Strawberry Time」はメロディも良くエッジの効いたアレンジも秀逸。歌詞もアイドルっぽくなくこれからは大人のシンガーを指向するのかと思ったら、次の「裏庭のガレージで抱きしめて」の歌詞はまさかのアイドル路線に戻ったかのよう。もちろん十代の頃のようなブリッコではなく、お見合いを題材にした「Kimono Beat」のように年齢相応ではあるのだが。この曲が小室哲也作曲だったなんて後から知ったが、このアルバムではタイトル曲と、ポップでキャッチーな広石武彦作曲「チャンスは2度ないのよ」が強く印象に残った。歌の表現力もこの頃には非常に豊かになってアルバムとしての水準は高く、まだまだ音楽面では”松田聖子プロジェクト”は健在であった。
とは言え、いつまでもアイドル路線の延長ではいられまいて。それまで松田聖子に仮託して作り上げた可憐でいじらしい女の子という偶像は、本人が結婚・出産までして次の行き場を失ってしまったようだ。このアルバムは確かに良い出来だったけれども、反面「もういいかな」という気分にもなり、その後の松田聖子は聴かないまま現在に至っている。

(かみ)
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