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湘南でゆるゆら暮らしココロ赴く先へガシガシ出かけるライター山秋真が更新。updated by Shin Yamaaki

選択の権利を奪い返す! 国会占拠支持および参加について:台湾の環境NGOの声明

2014-04-09 17:02:22 | 原発/原子力/核

数年来ときどき集まっては
原子力とそれに通底する問題に関連する
情報や意見を交換してきた仲間のひとり、
台湾から日本に留学中の友人が、
興味ぶかい貴重な翻訳をしてくれました。

 

応援の気持ちにくわえ
読んでみたところ示唆に富む内容だったので、
ひとりでも多くの人に知っていただきたく、
以下に転載させていただきます。

 * * * * *(以下、拡散希望、転載歓迎)

環境NGO「緑色公民行動連盟」声明:

選択の権利を奪い返す! 国会占拠支持および参加について        

        翻訳:陳威志(一橋大学社会学研究科博士課程)

 

 

3月18日の夜、台湾と中国との間で結ばれた「サービス貿易協定」に反対する青年および市民は、立法院議事堂に突入、歴史上経験のない「国会占拠」の幕が開かれた。この夜から、一万人以上にのぼる市民が議事堂の周りに集まって、占拠を応援し、「サービス貿易協定を撤回! 民主主義を守ろう!」と訴えてきた。

 

緑色公民行動連盟は、長い間原子力発電、エネルギーの政策転換、および環境、資源配分のガバナンス問題に取り組んできた。こういったイシューは、サービス貿易協定をめぐる争議とは無関連のように見えるが、現在原発反対運動がおかれた状況からみれば、実に類似している。いずれも、政治と経済の構造的抑圧に直面しているのだ。

 

市民団体による長い間の取り組みの積み重ね、また福島原発事故の教訓を受けて、脱原発を支持する市民は6割を超え、安定した多数を占めるようになった。しかし、脱原発社会を実現するなかで、人びとは徐々に以下のようなことに気づいた。すなわち、「なぜ多数派の意見が、いわゆる民主主義体制のなかでうまく反映できないだろうか」ということである。現在の台湾では、行政権はもはや統治者の原発擁護・推進のための暴力装置になってしまい、民意を受け止める窓口としての国会もまた、党議の拘束をうけ、市民の望みから目をそむけている。さらに、代議制民主主義の補完としての国民投票は、多数の民意を反映できないように操作され、反対の世論を封鎖するための道具になってしまった。そこから、この「民主主義体制は」は、実は民主主義をうらぎるもので、あくまでも支配者が異議を抹消する道具にすぎないと、多くの国民は気づいた。

 

サービス貿易協定をめぐる争議においても、同じようなことが起きた。過半数以上の国民は、メリットとデメリットが知らされないまま、行政が独断専行で協定に調印し、通過させようとしていることに疑問を持っている。にもかかわらず、行政権と立法権を握る国民党政権はそれを無視し、強引に進め、我々に選択の権利をあたえようとしない。

 

つまり、すべては「選択の権利」に関わってくる。現行の「民主主義体制」は、片や選挙を通して、有権者が賢く有能な人物や政党を選出できると公言している。しかし、同時に、選挙制度、国民投票権、罷免権を骨抜きにすること、そして、与党・野党と各利益団体とのさまざまな利益交換を通じて、少しの隙間も無いほどに政治的空間をコントロールしている。その結果、利益共同体から除外されるわれわれは、選択の権利が奪われることになる。これこそ、緑色公民行動連盟が国会占拠を支持、そして力を尽くして声援する重大な理由である。体制が統治者の抑圧装置・道具になれば、われわれこの体制を機能させないことによって持つべき政治権利を奪い返すしか、選択はないのではないか?

 

サービス貿易協定の背後にある経済ロジックに目を向けると、これもまた馬政権による原発推進のレトリックと極めて類似している。利益集団や政治的支配者が、資本の利潤を最大化する道を選択してしまえば、もう国民には「NO」をいう権利は許されない。環境や労働者の剥奪を通して利潤を蓄積する資本はある国・地域で行き詰まったら、また国境を越えて、未開発のさまざまな資源を蚕食していく。この残酷なプロセス・企みを包み隠す言葉こそ、「経済成長」、「自由化」なのである。台湾がこの2、30年に経験したことは、無限な成長と自由化が虚妄であることを証明している。その結果として、格差の拡大、環境資源の枯渇、国家財政と社会福祉の破綻、農業と土地の不平等などの問題を招いた。これはもはや難しい学術的な予測ではなく、われわれ実際に肌で感じたことではないか。体制のいう利益はわれわれのところにまわってこない。それにもかかわらず、その負の結果はわれわれが背負うことになる。

 

サービス貿易協定は一連の経済自由化の推進の始まりにすぎない。このあとは『両岸物品貿易協定』(両岸貨品貿易協議)、『自由経済特区』(自由経済示範区?)、さらにほかの国とのFTAが進められる予定である。これらはすべて資本利益のカンフル剤にすぎず、しかしその代償は台湾の国民のほかの経済的自立選択の可能性を失うことである。したがって、サービス貿易協定への反対は、異なる産業利益の優劣の計算にとどまらず、このようなロジックのもとでは、美しい未来はありえないと見抜き、異なる発展を選択する権利を奪い返すたたかいでもあるのだ。

 

ここ数年、緑色公民行動連盟は、中国のさまざまなジャンルの市民団体と交流・協力しあってきた。そのなかで、お互いが異なる政治的歴史的文脈をもつことが分かると同時に、中国特有の政治経済状況のもとでの、市民団体のさまざまな取り組みは、民主主義の陣営に入ったと自賛する台湾にとっても意味深いことに気づいた。そこで、ここで呼びかけたいことは、中国政府の侵入を警戒すると同時に、中国社会と市民への敵視は誇張するべきではないということだ。中国のさまざまな側面を理解することによってのみ、両岸人民にとって適切な関係および今後の方向を見つけることができるのだ。

 

3月18日から、多くの市民はそれぞれの思いや期待を持って、議事堂の内外に集まって、占拠活動を守ってきた。有意義な議論や思考がそこでなされている。これはまた、台湾各地にも広がっていった。こうした一回一回の行動、対話、協力を通じて、ますます多くの民主主義の実践、および発展のイメージが生みだされている。これこそ緑色公民行動連盟が今回の運動に参加するもっとも大きなモチベーションである。「われわれにはどんな選択肢が残っているのか?」という鋭い質問は、政府・資本集団への挑戦であるばかりではなく、また「われわれ」自身への問いかけでもあるのだ。

 

訳者注:緑色公民行動連盟=Green Citizen’s Action Alliance. 公民とは市民の意味。

(原文参照先URLを記載するとなぜか記事がアップできないので、「緑色公民行動連盟」もしくは「Green Citizen’s Action Alliance」で検索してください。)

 


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