「Tさん、みぃの写真撮ったが持っとるんか?」
木曜日。
みぃちゃんの姿を見かけなくなってから3日目の朝。
みぃちゃんの世話をしていた、お店の大旦那さんから聞かれました。
「まぁ、いろいろと撮ったので・・・・でも下手ですよ」
写真やに勤めてはいるけれど、私はカメラマンではなくパソコン処理専門。
「ばあちゃんが、みぃちゃんの写真を飾っておきたいって言うんや。そやけど写真なんか撮っとらんし。」
「・・・・・もう、無理ですか?帰ってきませんか?」
「おそらく無理やろう・・・・ヒドイがにやられたみたいやし・・・」
ハクビシン2匹に(おそらく)2~3時間ほど攻撃を受け続けた・・・みぃちゃん。
近くの人たちも、(最初は)猫のケンカだろうと気にしていなかったらしい。
時折、喧騒がやみ静かになるけれど
しばらくすると、バタバタと動物の気配が戻る。
時間は深夜3時近くになり、あまりの騒音に一人の人が窓から水をかけた。
何かが逃げていく気配。
けど、しばらくすると戻ってきたのかバタバタと音がする。
窓を開けてよく見ると、タヌキのようなモノが2匹で猫を襲っていた。
襲われている猫に、見覚えがあった。
慌てて、今度はタヌキらしき動物を追い払う意図で水を浴びせた。
何度も、何度も水を撒いた。
タヌキのようなモノ(ハクビシン)は、一旦は猫の元を離れるがすぐに戻ってくる。
とにかく、戻ってこなくなるまで水を汲んではかけた。
ようやく、タヌキたち(ハクビシン)が居なくなり、あわてて猫の元にかけよったが
猫は怯えたのか、サッと姿を消した。
一瞬見えた姿は、血だらけで毛がむしり取られた姿。
想像すると、ハクビシンが許せないと腹が煮えくりかえる。
だけど。そう、彼らも必死なんだろう・・・・こんなところまで下りてくるなんて・・・。
「家に入れてなかったからな・・・入れてもすぐに逃げ出すし・・・」
大旦那さんの声は、とても寂しそう。
ノラのみぃちゃんがK家に居付いたのは、お腹が減ってるだろうと差し出した「ミルク」が始まり。
「それ(ミルク)飲んだら行けよ」
けれど、しばらくすると戻ってきて「ご飯」を催促する始末。
「ひょっとすると、どこかで飼われていた猫だったのかもしれん」
ノラにしては人懐っこく、人間に甘えることを知っていた。(しかも弱い、弱すぎる)
いつのまにか「ご飯」を貰いにK家に通っていた、みぃちゃん。
それなら・・・と、赤い首輪を用意して動物病院へ連れて行き避妊の手術をした。
「そんなもん、居付いてしまったし仕方ないわい」
この上、庭先で子供でも生まれたら敵わんと思ったんや・・・と笑って話す大旦那さん。
手術から帰ったときは、さすがに外には置けないと
お店の隅っこに段ボールに入れて(上蓋もして)おいてたのに・・・・・・・脱走。
納屋の屋根に上って動けなくなっているのを、救出。
「外が好きなんやろう」
みぃちゃんとの思い出話をする大旦那さんは、とっても楽しそう・・・。
みぃちゃんは、ちゃんと運命の人に出会えたんだね。
しばらくは、大旦那さんが虹の橋に向かうまでは・・・ルルたちと遊んでて。
まだまだ、大旦那さんにはいっぱい仕事をお願いしなきゃならないから、許してね。
みんな、「みぃちゃんに帰ってきてほしい」と願いながら
どこかで悲しい結末を予感もしていた。
最後のみぃちゃんの目撃情報が凄惨なものだったから・・・・・
だけど、きっと今は虹の橋で仲間たちとくつろいでいる。
本当だよ。
だって、私聞いたんよ。
水曜日のお昼頃。
みんなが撮影や外回りで留守にしていた事務所の中で。
「みゃあ」
猫の鳴き声。
聞こえた場所は、大旦那さんが仕事をするプリントの機械のあたり。
私の場所から、後方左側1メートルってところ。
それは苦しげな声ではなく。
いつものみぃちゃんの可愛らしい鳴き声。
「ありがとう・・・」
きっと、そう言いに来たんだと思う。
さすがに現実主義のおじいちゃんには言いづらく、伝えてはないけれど。
「じゃあ、写真データ全部かき集めて持ってきますよ」
少しだけでも、二人(一人と一匹)の思い出を振り返るお手伝いになれば・・・・・やね。
ありがとう、みぃちゃん。
いつも居てくれて、ありがとう。