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「逝く夏」

「逝く夏」

黄色い樹の葉がふるえる。
樹の葉が降っている。
やさしいもの、なつかしいものが残らず
枯れて、沈む、墓の中へ。

森の梢の周りに、いたましげに
日没の光がふるえている。
これは、別れを告げてゆく夏の光の
最後の口づけかも知れない。

心の底の底から泣かずにはいられない。
今この有様がわたくしに
恋の別れをまたしても想い出させる。

お前と別れるさだめだった。
まもなくお前の死ぬことが判っていた。
私は、去りゆく夏であり、
お前は枯れゆく森だった。


ハイネ詩集より
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