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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

【第12回ラテンビート映画祭】『土と影』

2015-10-31 | 洋画(た行)


原題: La tierra y la sombra
監督: セサル・アウグスト・アセベド
出演: アイメル・レアル、イルダ・ルイス、マルレイダ・ソト
コロンビア・フランス・オランダ・チリ・ブラジル/2015年

第12回ラテンビート映画祭 HPはこちら。

家族を捨てて家を出ていた初老のアルフォンソは、サトウキビ畑が広がる故郷の村へ17年ぶりに帰郷する。重い病に伏した息子や幼い孫マヌエルのために、アルフォンソは荒れ果てた家の再興と、家族の絆を取り戻そうとする。


コロンビア映画、これTIFFでもやってたんですけど、ラテンビート横浜分で観ることにしました。
新宿が終わったから横浜の方が空いてるかな・・・?と思いきや、意外と(すいません)お客さん入ってました。よかった。

『土と影』というタイトル通りの風景ばかり。見渡す限りのサトウキビと、あとは荒野と土埃だけが広がっていて。薄暗い空気に年中晒されている雰囲気が画面から伝わってくる。こんなところで暮らしてる人もいるんだな・・・と想いを馳せてしまう。ここで文化的な生活を望むことはかなりの忍耐を強いられるだろう。

寝たきりの大黒柱を世話しなければならず、経済的にも裕福ではないために過酷な土地を離れることもできない。子どもの教育について、この土地では十分に与えてやることができないとわかっていても、変えたくても変えようがない、どうしようもない現実だけが横たわる。長年家族を顧みずいきなりふらりと戻ってきた舅に驚き、そしてこの家を守ってきた姑の意向も組んで。いつも一緒に、明るく楽しく・・・ そんな、我々が思い描く「理想的な家族像」というものが微塵も期待できない状況の中、お嫁さんとしての苦労が手に取るようにわかるだけに、この一家にとって何が一番の幸せなのか、この話の結末はどうなるのか、そこを考えてしまう。

今後の生活水準向上のために一刻も早くここを離れたい、しかしながら一家を縛り付けるしがらみが厳然と存在する・・・ これは何もこの土地に限らず、世界各地に日常的にある。それぞれの想いが交差して生活圏を決めていく、その中に明らかに矛盾を感じながらも従わざるを得ないがために抱えるジレンマ、それが本作のテーマかもしれない。幼い子どもが「未来」であり、彼が一生サトウキビ畑で働くことを親は望んではいないのに、「過去」からずっと家を守ってきた姑の頑なな方針のために動くことができない。「過去」と「未来」、「頑な」と「柔軟」、「不変」と「変化」・・・映画の中にはいくつもの対照が提示されている。

旧世代と新世代、それもその中の1つで、見た目こそ成り行きに任せながら暮らしてはいるものの、互いに相反する志向を持ちながら生活していたことは想像できる。そんな一家に転機をもたらすものは、ずっと家を守ってきた姑の前に現れた昔の夫であり、重病に伏している大黒柱の息子である。この2人の存在や変化が一家の方向を決定づけていく。人は本能的に、自分の生きてきた環境からは逃れたくはないのかもしれない。時には血を分けた家族であっても、道を分かたねばならないこともあるだろう。家の中に棲みつく、澱みの全てを焼き払うかのような壮絶なラストシーンは、過酷な環境下に暮らす家族の苦渋の決断であった。離れる者も残る者も、複雑な想いはそこに横たわる事情に絡め取られる。苛烈な自然の中、それでも生きるために前を見つめる家族の視線の強さに心打たれる。


★★★★☆ 4.5/5点






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