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セイネンキレジェンド30話

2025-03-23 06:52:18 | 小説セイネンキレジェンド

疲れきっているのは直也だけではない相手の選手も同じだ。ラストチャンスへ向けて両者リングの中央に走る。その時リングの中央で起きた出来事は誰もが予期せぬ事だった。息を荒くしガードの下がった直也の顔面に相手の選手は右ストレートを放ち直也はまともにパンチを受けてしまう。
「ダウン!ダウン!ダウン!ダウン!ダウン!」
直也の力は抜けロープの前で膝まつき全て終わりかのようにリングの上に直也は倒れこんでしまった。カウントダウンの声だけが直也に聞こえてくる。観客達や関係者などは総立ちとなり直也の経過を見守る。そんな時だった。
「直也ー!見てよ!こっち向いてー見てよー!」
優子の必死な声は直也の眼を開けさせ優子が直也に見せていたのは久美子が仲間達に残し思いを託したドリームキャッチャーであった。
「直也は死なない、こんなとこで倒れてる場合じゃないでしょ!」
優子の叫びと反対に会長やコーチ達は直也に大声で叫んでいた。
「もう無理だ、直也!立つんじゃない!」
優子の声掛けで直也はリング上で審判のカウントダウンの声が消えた。時間が止まったように直也は優子のドリームキャッチャーを見ながら幼き頃の事を思い出していた。春樹と久美子と直也の3人で小さな輝く蛍の群れを見ている。3人は輝く蛍の灯火を見て驚きながら笑顔で見ている。蛍の群れの後に見ているものは夜の海辺で見る月明かりだった。月は海に明かりを灯しその灯火は3人の歩いて行く道のように一本の線だった。灯された一本の線が消え去ると海の中に蛍の灯火。ホタルイカの大群は海の中で輝きを見せる。まるで夢の世界の中にいるかのような直也だった。その夢の中で春樹と久美子を見つめた直也は優子が手を伸ばしドリームキャッチャーを直也に近づけると直也は荒い息をつきながらヨロヨロよろけながら立ち上がろうとしていた。
「ガンバだよ!ガンバ!ガンバ!」と優子は大きな声で叫ぶ。
優子の声に合わせて周囲の観客達からもガンバという声援があった。この時「頑張れ!」の意味ではなかった。幼い頃の直也と久美子はガンバの冒険というアニメを見て久美子が気に入っていた言葉だった。ガンバの冒険というアニメは久美子にとって元気になれる番組であった。
「なんでだよ優子、何でお前が知ってるんだ」と直也は思った。優子は幼い頃から久美子のお気に入りだった言葉を口にせず久美子が消えてからガンバの言葉は優子が受け継がれていた。ガンバの意味を知らない観客達も優子の声に合わせて「ガンバ!ガンバ!ガンバ!…」と繰り返していた。ガンバの言葉が大きく大きく大きな声援となり崩れかける直也の心に再び戦いの炎を与えるとふらつきながら直也は眼を大きく開き立ち上がり審判にやれるぞという意志を伝えていた。直也は立ち上がり審判に腕を上げ試合は続行と知らせる。リング上の審判はリング下の審判員達や直也のコーナーを見て試合続行を伝えていた。
「なんだアイツ、何で立ちやがるんだ!ハァーハァー」と疲れを感じていた相手は思った様だった。
心理戦を続ける直也が立ち上がると相手の選手は息を荒くし首を振り虚ろな目つきで直也を見つめリングの中央まで歩き直也を待っていた。



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