去年だったか一昨年だったか、図書館でたまたま手にとって強力にその魅力にとりつかれてしまった本。
インドネシア、ジャワ島に伝わる影絵芝居「ワヤン」の世界を、絵本にしたものです。
結婚式や誕生日などお祝いの席で、一晩中上演されるもので大人も子どもも、観るのだそうです。
本来は、水牛の皮で作られているワヤン人形が、絵本ではみごとに版画で再現されています。
神々と人間が交わっている混沌とした時代の話です。
美しい兄(スマントリ)と、醜いが不思議な力を持った弟(スコスロノ)の悲しい物語。
兄が神々から出される無理難題を、弟がいつも助けてやるのです。しかし、その姿の醜さゆえに
恐れられ・・・。
勝手な振る舞いをする神々に、なぜこんなに意地悪なのでしょうと、つい憤ってしまう。結末だって、ひどすぎますよ。
兄弟愛あり、戦いありで、話も面白く絵も美しくて迫力がある絵本なのですが、神が人間界では○○王の子として
生まれて・・・など、設定が少し子どもには分かりずらいかな~。
なにせ、何時間もかけて語る壮大な物語を、ぎゅっと一冊の本にしているのですからね。
出てくる神々も、他のワヤンの物語にも登場するから、インドネシアではおなじみなのでしょうけれど。
最初はちょっと、とっつきにくいかも知れないですが、何度も読むと神々が人間くさくていつの間にかワヤンの世界に
魅了されてしまいます。
そしてもう一冊紹介したいのが、たくさんのふしぎ「ノントン・ワヤン」です。
「スマントリ・・・」と、どちらを先に借りたのだったか、今となっては思い出せないほど、何回も借りているのですが
これは、ワヤン人形をつくる工房に出入りする子どもの目を通してみたワヤンと、ワヤンの中でも子ども向けの
短い話を織り込んだ、ワヤンの入門編ともいえる本です。
「ノントン・ワヤン」というのは、インドネシア語で「ワヤンを見にいこう!」という意味だそうです。
いつか、ワヤンを観てみたいなぁと思っていたのですが、なんと!それが実現します。
この夏の美術館イベントで、影絵芝居のワヤンが上演することになったのです。
今回の人形展とは直接関連しないのですが、ワヤンも人形なので、駄目かな~とわかりつつも
企画を推してしまいました。
またもダメもとで、日本ワヤン協会にコンタクトをとってみたら、スケジュールもOKになって
「えっ!ウソー」みたいですけれど、「夏のイベント」として美術館のホールでの上演が決定しました。
あ~、ガムランの音色と、スクリーンに映し出される影絵の世界。 今から わくわく、楽しみです。
好き勝手な企画を出すボランティアに、学芸員さんも手を焼いていることでしょう。
8月14日(日)14:00~です。
演目「アノマン 使者に立つ」→(
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お近くの方は、いらして下さいね。