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せんべえ空間

淋しがりやの一人好き。
あまのじゃくなせんべえの矛盾に満ち溢れた日々。

心に風を。

『だれかのいとしいひと』

2005-11-17 21:46:43 | 
角田光代『だれかのいとしいひと』
転校生じゃないからという理由で彼にフラれた女の子、
別れた彼氏のアパートに忍び込む子、
友達の恋人とこっそり付き合ってしまう子、
誕生日休暇を一人でハワイで過ごすOL、
ドトールで一人“完璧なキス”について考える男性
それぞれが主人公となる8つの短編
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あー、この人かわいい人なんだなー。
それが一番の感想。
それぞれのお話の主人公の不器用さが、
そのまま角田さんのかわいさな気がする。

「転校生の会」
主人公と同じく、あたしも転校の経験が無い。
だから転校生の気持ちなんかわかんない。
“絶対”って言われたらそれを否定したくなる気持ちはわかるなー。
「ジミ、ひまわり、夏のギャング」
この話が一番好きだった
主人公が別れた彼の部屋で盗むものを考えたとき、
スラムダンク全巻を挙げてたのが特に好きだった。
あたしだったら別れた彼の部屋から盗むかなー。
バガボンド全巻はとりあえず持ってくだろう。
あと、possibilityのCDも貰ってこよう。
それからあの鍋も。
「バーベキュー日和(夏でもなく、秋でもなく)」
まず、題名が気に入った
(夏でもなく、秋でもなく)ってとこ。
そして、主人公の、大好きな友達の何もかもを知りたくなり、
共有したくなるという気持ちにちょっと共感しながら、
それをしないでいられる自分に安心。
「だれかのいとしいひと」
主人公が感じる“もうすぐ終わる”という感覚。
そして、その理由が思い当たらないという感じ。
悲しいほどよくわかるから、ちょいつらかったな
「誕生日休暇」
またハワイかー。
最近、ハワイに出会うことが多い。
読む本や雑誌や映画など、色んなところでハワイに出会う。
あたしにハワイに行けと言ってるのだろうか。ってくらい。
色んな人に断ったり色々する手間を考えるなら、
いっそハワイに行ってしまっちゃおうっていう主人公の感覚が
あたしそっくりで、でもあたしの変えたい部分だったからついつい苦笑
「花畑」
最後の、笑いたいことなんかないのに
とりあえず“ははは”と口に出してみるというシーンが好き。
「完璧なキス」
ただただドトールに行きたくなった。
それだけ。
「海と凧」
“靴下のたたみかたのことを話しながら言葉外でほかのことを主張する”
最初の一文にそういうことってあるよなーとうなづく。
そういうことを思い出そうとする。
でもよく思い出せなかった。
何だかんだでこの二人はもうしばらく一緒にいるんじゃないだろうか。


次は“空中庭園”あたりを読んでみたいな。

『姫君』

2005-11-02 12:40:50 | 
山田詠美『姫君』


「MENU」「検温」「フィエスタ」「姫君」「シャンプー」という5つのお話。
どのお話も参ってしまうほど正直で、
心の皮をめくられてしまったような気分になった。
誰かを愛してしまったら、その人が自分を最も傷つける人になりうる。
誰かに愛されてしまったら、自分がその人を最も傷つける人になりうる。
そういうことなんかな。
自分の気持ちとか必要なものとか、しっかり見極めなきゃいけないな。

「MENU」
“母が首を吊ったのを見つけた時、ぼくが、まだ5歳だったのは幸せなことだ。”
これが最初の一文。
何かドキドキしてしまって夢中でページをめくった。
話はおもしろかったんだけど、最後が少しありきたりでがっかりした。
「検温」
主人公が水で手を暖めようとするシーンが印象的だった。
“必要なあまりに、不必要だと思い込もうとしていたもの。”
この一文にぎくりとして思わず本を閉じた。
きっと、本当の恋は愛よりもずっとずっと覚悟がいる。
「フィエスタ」
醜女の中の“欲望”が語り手となっているお話。
ただただおもしろかった
読んでいて、困ったり参ったりする作品。
そうなんだけどそう言っちゃだめでしょっていうような、
あまりにも真実だからちょっと休憩させてくださいって言いたくなるような。
「姫君」
姫子を愛する摩周という男がとてもかわいくて、
この本を読んだ人の多くは摩周をとても愛しく思うんじゃないかなー。
こちらもありきたりなラストなんだけど何だか涙が出てしまった。
そういえば、久々に泣いたな。
「シャンプー」
前の4つが読むのに体力を必要とするものだったから
かなり読みやすく感じた。
主人公の女の子がとってもかわいい
中学生でも読みやすいかも。

時々、はっとするような言葉が出てきて、
思わず本を閉じて、目を瞑って深呼吸して反芻させて、
気持ちを落ち着けてからまた本を開く。
という動作を何度も繰り返して読み進めた
数ヵ月後、あるいは数年後、
この本を再度開いてどういう感想を持つか楽しみだ

『カイマナヒラの家』

2005-10-29 20:37:47 | 
池澤夏樹『カイマナヒラの家』



この本すごくよかったです。
またもや写真と文章を何度も見比べました
サーフィンと全くつながらない風貌なので。

写真がキレイで、色の鮮やかさはあまりないけど、
眺めているのがとても気持ちのいい写真。
特に、夕やけの中のサーファーの写真が好きです。

すごく読みやすく、穏やかな気持ちになる本なので、
ふとしたときに読み返す一冊になりそうです。
元々のんびり暮らしているのに、さらにのんびりしたくなっちゃった。

『その日のまえに』

2005-10-24 10:42:44 | 
重松清『その日のまえに』


王様のブランチで特集されて注目されてる本
“その日”ってのは人の亡くなる日。
身近な人の死に出会った人や、
自分自身の残り少ない余命を知った人などが主人公の短編集。
最後の「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」は続きもので、
ガンで亡くなる女性とその夫と2人の息子の、その日の前後の話。
他の話で登場した人物も少し関わったりしてます。
最後の3つは実家に戻る電車の中で読んだのだが、
もし一人で部屋で読んでいたら号泣していただろう。
ほんとに悲しくて苦しくて、でもほっとして、
電車から降りたら
車で迎えに来てくれた母と伯母に思わず元気良く手を振ってしまって笑われた。

やっぱりこの人は上手だな、と思う。
「死」がテーマになっているが、重っ苦しくなく、
読みやすい文章で、しかし決して軽くはない。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」が特に好きかな。
何か、感情移入しやすかったんかも。

看護婦の山本さんが最後の方に言ったセリフは
小学生のときに感じながらも
言っちゃいけないんじゃないような気がしたことだったので、
何だか安心してしまった。
もっともっとそのこと考えよう。


身近な人の死に直面したら、また違った感想を持つのだろう。


『シルエット』

2005-10-20 23:50:03 | 
島本理生『シルエット』


『リトル・バイ・リトル』は好きになれなかったけど
デビュー作である『シルエット』を読んだ
この人あたしと同じ年なんだなー。
『シルエット』を出したのは15歳のとき。
あたしが15歳のときなんて
ダサい学生鞄をいかに飾り付けるかばかり考えてたわよ。。。
本なんて読書感想文のために読むもんだと思ってた。

2004年に文庫化するときに少々手を加えたらしい。
できれば元の形で読みたかったが。

本なんて書いたこともないのに
『初々しいなぁ』なんて思うのは失礼かもしれないけれど、
やっぱり初々しい作品だと思う。
頭の中に色んな思いとかが溢れてきて、パワーがどんどん外に向かっていて、
でもまとめるのにものすごく苦労しているような感じ。
ただ所々で感じる違和感があまり心地いいものではなかった。
例えば江島君は携帯を持っていなくて、いつ帰ってくるかわかんないのに、
スパゲッティを茹で上げてスープも盛り付けて、
しまいにはジントニックまで注いじゃう主人公がすごくイヤだと思った。
スープが冷めるじゃん!ジントニックぬるくなるじゃん!
あと、江島君と主人公が朝早い学校でサックスを吹いていたことなんかも。
絶対うるさいしー。
近所から苦情来るし。
有り得んー!!って。
妙にちっちゃいことが気になってしまって、
話にのれなかったなぁ。

『海辺のカフカ』

2005-10-20 03:33:09 | 
村上春樹『海辺のカフカ』


あたしの弟は村上春樹さんが大好きです。
んで、夏休みにあたしの部屋に来たときに、
あたしの本棚にある村上春樹の本を全部持ってった。
そしたらかなり本が減った気分になりました。
いっぱいあったわけじゃないけど分厚いし何巻かになってるし。
あたしは村上春樹さんが好きかと聞かれたら、そうでもない。
それほど読んだわけでもないけど。
でもなぜか時々読みたくなる
読後はとっても疲れるんですけどね。

海辺のカフカは、今まで読んだ村上作品のほとんどがそうであったように、
最初は別の視点の話が交互に描かれ、途中でつながる。
そしてまた、今まで読んだ村上作品のほとんどがそうであるように、
残虐な、想像することすら恐ろしいようなシーンが出てくる。
別の視点でのストーリーがちゃんと繋がるのが上巻の終わりごろなので、
そこへ辿り着くまでに少し時間がかかってしまった。
春樹ファン以外は、そこまで行く前に飽きてしまう人もいるんじゃないでしょうか。
つながりが見えると楽しくなるんですけどね。
んで、残虐なシーンは今回もありました。
どの作品に出てきたシーンか分からないが、
砂漠の中で剣で人の皮が削がれるシーンなんかはほんとに恐かった。
海辺のカフカでのそのシーンは、1つの章だけだったのでまだ良かった。
どういうシーンかはネタバレになるので言いませんけど。
とにかく気持ち悪すぎて文字を追えなかった。
途中からはセリフだけを目に入れるようにした。
いやーほんとにキツかったー。。。
とりあえず、猫好きな人にはオススメできませんな。
優しいシーンとそういうシーンとの幅が広くって、
それが村上作品の魅力の一つなのかな。

『海辺のカフカ』は登場人物のキャラクターが結構楽しかったです
ナカタさんとホシノちゃんの部分はとても楽しんで読めました。
ナカタさんが生きていたことそのものが感涙に値するような気がする。
そしてホシノちゃんがいるおかげで、
この作品はぐっと読みやすくなってるんじゃないかと思います。
それに比べて田村カフカくんはちょっと薄い気がするかも。
彼のキャラクターが像を結びづらいかなー。
あと、作中で“メタファー”って言葉をやたらと使いすぎじゃないかい?とも…。

あたしは今までに読んだやつの方が好きでした。
でも火曜日に買って、木曜日の夜に読み終えたってのは、
あたしが村上作品を読んだ中では結構早い方だったかも。

『恋する日本語』

2005-10-20 01:26:50 | 
小山薫堂『恋する日本語』


何だか最近日本語ブームのようで。
ついついあたしもこういういのを手に取りました
小山薫堂(こやまくんどう)さんの『恋する日本語』という本。
料理の鉄人とか電波少年とかハンマープライスとかパパパパパフィーとかの
放送作家とかしてた人みたいですね。

35個の日本語が紹介されてます。
今まで使ったことの無いような言葉が。
んでその言葉に合ったショートストーリーがついてるわけです。
使ったことない言葉だらけなので、ついつい使ってみたくなる。
17日の日記の題名に使った「僥倖」ってのもこの本で知った言葉なんです。
「ぎょうこう」って読みます。
「思いがけない幸福。こぼれさいわい(p.52)」って意味らしい。
んで、この本から言葉を使わせてもらっておいてなんだけど、
一個一個のストーリーがちょっと。。。
クサッ!とか、はぁっ?とか、そんな男やだよーとか思いながら読みました。
実際にそういう場面に遭遇したら、鳥肌が立ってしまうだろうと思うような、
何かさむ~い話ばっかりなんですよー。
なかなかイイ話も少しはあるんですけどね。

でもまぁ、知らない言葉を知ることはすごく楽しいな、と感じました


『ジョゼと虎と魚たち』

2005-10-12 23:18:33 | 
田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』


映画が見たくて、でも原作も読みたくて、
どっちからにしようって思って結局読んだ
1冊丸ごと『ジョゼ…』だと思ってたら8篇の作品集ですぐ読めそうだったし、
解説が山田詠美だったから思わず買ってしまった。
普段は解説なんて読まないのに。

田辺聖子さんの本って読むの初めて。
あたしは新しく読む作家さんを決めるとき、顔を見て決めるときがある。
別に美人とか男前じゃなくていいんだけど、何か好きな顔ってありますよね?
味のある顔とかって意味で。
んで、失礼だけど、田辺聖子さんの顔ってあんまり好きじゃなかった。
だからなかなか手を出せなかった。
で、実際に読んでみて、何度も作者の写真と文章を交互に見た。
この人がこういう文章書くのかー、とえらく感心してしまった。
時々感じる、設定の時代錯誤な感じは消せないかったけれど、
初版が昭和62年ってことだから当たり前なのかもしれない。

一つ一つの作品の主人公の心の動きに共感して、
それは自分の心の中の恥ずかしい部分を見つけたのと同じ気分で、
何か、くそっ、って思いながら読んだ。
人にはバレたくない感情とかを見透かされている気分だった。
読んだあと、この気持ちの処理法に困ってしまった。

映画のほうはラストが違うらしい。
アマゾンの本のレビューに映画のラストを細かく書いてる人がいて、
興醒め。

今から見ます。

『古道具 中野商店』

2005-10-12 22:56:47 | 
川上弘美『古道具 中野商店』
骨董品屋さんではなく、あくまで古道具屋さんの中野商店。
そんなに忙しいわけでもないのに何とかなってるお店。
そこで働く女性ヒトミ。
中野商店の店長である中野さん、
そのお姉さんのマサヨさん、
ヒトミといい感じのような何だかわからない関係のタケオ、
中野さんの愛人(?)サキ子さん、
マサヨさんの恋人である丸山など、
中野商店をとりまく様々な出来事のお話。
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やっぱり好きだな、この人の本

最後の方で訪れる、ほんのりとした変化。
それは悪い変化じゃないし、社会的に見たら当たり前のこと。
むしろいい方向のように見える。
だけどそれが何だか悲しい変化に見えるのが川上弘美ならではだと思う。

川上弘美の本を読んでいつも思うのは、絵が浮かぶということ。
この日本のどこかで、こういう場所が本当にあるような気がする。

そして、川上弘美の作品に出てくる人たちは、
物事の変化も不変もありのままを受け入れている。
いや、ありのままを受け入れるということに、
常に心を砕いている、と言ったほうが正しいのかも。
今回の『古道具 中野商店』ではそれを強く感じた。
読み終えたら、何か幸せな気持ちになって、でもほんのり淋しくなった。

一番印象的だったのは、マサヨさんが使う和鋏。
あたしは和鋏って恐いイメージがあるから、
本を読んだのに残像がいつまでも残ってしまった。

『さいはての二人』

2005-09-11 16:37:09 | 
鷺沢萠『さいはての二人』


裏表紙には
“家族との繋がり、自分の居場所、死について描いた、著者最後の恋愛小説集”
とあるが、これは恋愛モノではないと思います。

作者自身が追い求め、だけど手に入れられなかったものが詰まっている。
そういう風に感じた作品。
家族以外の人との家族以上の繋がり。
目の縁に涙を溜めたまま笑顔を作っているような、
そんなやるせない気持ちになる物語たち。
鷺沢さんには「遮断機」のおじいのように、
『こんなとこまで来ちゃあ、いけねえよ』
と言ってくれる人がいなかったのだろう。
あたしは3つの話の中でこの「遮断機」が一番好き。

悲しいままでは終わらせずに、
小さな小さな幸せの種をそっと置いて終わらせるところが
鷺沢さんの繊細さとか崩れやすさを表しているように思う。

こんなこと言う権利はあたしには無いけれど、
やっぱりもっと書き続けて欲しかった人。