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せんべえ空間

淋しがりやの一人好き。
あまのじゃくなせんべえの矛盾に満ち溢れた日々。

心に風を。

『重力ピエロ』

2006-03-29 21:46:33 | 
伊坂幸太郎『重力ピエロ』
半分しか血のつながりがない私・和泉と弟・春。
春は、母親がレイプされたときに身ごもった子だった。
ある日、遺伝子技術を扱っている私の勤め先が、何者かに放火された。
町中の落書き消しを請け負っている春は、
現場近くにグラフィティーアートが残されていることに気づいた。
連続放火事件と謎の落書きの関係は?
そして、
レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ自分が存在しない春の思いは。
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苦しいけれど、苦しくて重い部分の話を読みやすくするのが
この人の文章の魅力で上手さなのかなぁ。
まだ伊坂作品は2本しか読んでないからよくわからないけれど。
でもまぁ、今んとこ、伊坂作品の登場人物はクドいなぁ
ほんとよく喋る。
知識が豊富で、それを語りたがるなぁ。

遺伝子がACGTの4つから成り立っているとういのなら
50音で伝えられる気持ちにはもっともっと可能性があるのかなぁ。
放火犯とか落書きとの関係とか、
そういうミステリー的な部分?は、単純だし、
実際はどうでもよかったりなんだけど、
「空中ブランコを飛ぶピエロが、一瞬だけ重力を忘れることができるように、
いかに困難なことであっても必ず飛び越えることができる」
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」
って。こういうとこがステキだった。

矛盾に満ちた真実や、正義から程遠いものから得る充足感。
スッキリしなくとも何か越えたような。
倫理も道徳も正義ももうくそくらえな1冊
ちょっと疲れたけど。。。

『黒喜劇』

2006-03-17 11:03:00 | 
阿刀田高『黒喜劇』
ちょっとしたきっかけから生まれる
家族や恋人や友達に対する疑惑や邪念。
そんな気持ちが引き起こす13個のお話。
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ぞわっ。
もうずっとそんな感じだ。
人と話していて、『その話笑っていいの?』って思うときがあると思う。
笑っちゃ失礼かな、笑うのは不謹慎かな、って。
そんな気持ちにちょっと似てる。
でもふふって笑っちゃうんだ。
これだから人間はおもしろいんだよなぁ。

各ストーリーはラストで急にぞくっ、ぞわっとさせる。
そこまではなんてことないのにね。
上手いなぁ。
職人芸みたいな感じ。
すごいなぁ。

『間宮兄弟』

2006-03-13 18:32:47 | 
江國香織『間宮兄弟』
“そもそも範疇外、ありえない、
 いい人だけど、恋愛関係には絶対ならない
 だいたい、兄弟で暮らしてるのが気持ち悪い”
彼らを知る女性は口をそろえてこう言う
そんな間宮兄弟。
兄の明信は35歳、酒造メーカー勤務。細身。
弟の徹信は32歳、学校職員。太っている。
女性にふられると、兄はヤケ酒をし、弟は新幹線を見に行く。
読書家で母親思いでマイペースで人生を楽しむ兄弟だが、
おたくっぽいと女性にはもてない。
そんな二人を取り巻く恋愛小説。
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何も始まらず、何も終わらない。
そんな、江國さんらしい感じのお話。
図書館で見つけて題名に惹かれたので読んでみたら、
最新作でしかも映画化するんだそうで、何か得した気分だ
でも、兄は佐々木蔵之介、弟はドランクドラゴンの塚地だという。
佐々木蔵之介が好きなあたしとしては、
それじゃいい男すぎるだろーって気分だ。
佐々木蔵之介が、35歳にして一度も交際経験が無く、
徹信の同僚依子に『うわ』っと思われるような男を演じるのは
ちょっとムリないかなぁ。
塚地はぴったりだけども。
でも、小学館の、間宮兄弟のページはなかなかよかった
興味のあるひとはぜひ→間宮兄弟

徹信が小学校の用務員という設定なので
読んでる間、ずっと小学校や中学校の用務員の方を思い出していた。
教わった先生の中には名前を覚えていない人も多いのに、
なぜか用務員の方のことはよく覚えている。
フルネームは書くわけにいかないが、
小学校の時の用務員の人はスミ子という名前で、
スミちゃんと呼ばれる、ダジャレと緒方直人が大好きな陽気なおばちゃん。
中学校の時の用務員の人は、小林さんというおじさんで、
普段はむすっとしているが、
2階や3階のベランダから庭の花の世話をしている小林さんに向かって
『小林さーん』と生徒が声をかけて手を振ると
恥ずかしそうに顔をうつむかせながらも手を挙げていた。
二人は、あたしにとって、先生よりも近い存在だった気がする。
特にスミちゃんは生徒に人気で、
休み時間になると彼女の周りにはいつも生徒が集まっていた。
小さかったあたしたちの、一番身近な大人だったのだ。
スミちゃんも小林さんも、元気にしてるかな。

『陰日向に咲く』

2006-03-10 16:01:21 | 
劇団ひとり『陰日向に咲く』
ホームレス生活を経験したサラリーマン、
売れないアイドルを懸命に応援する男、
ギャンブル生活から抜けきれない男、
さえない人々を描いた5つの連作小説。
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劇団ひとりが本を書いたっていうから、
しかも、暴露本みたいに品の無いやつじゃなくて、
ちゃんとおハナシを書いたっていうから、
きっとあいつならおもしろいの書くだろうと期待して買って、
やっぱり期待を裏切らなかった
期待を超えちゃった
もともとネタ用に書いてたものだったって話をどこかで聞いたけど、
これをネタとしてやっているひとりを想像すると笑えるし、
そんなの関係無しに、とにかく一人の小説家のデビュー作として読んでも
十分おもしろい
こういう、先の話に出てきた人が後の話で主役になるような
話の作り方ってあたしはすごく好きだ。
それぞれの人生、悩み、考えが大事にされていて、
みんな主役でみんな脇役なのは心地よいし楽だ。

「あと2冊は書いてもらわなくちゃ」
帯で恩田陸がそう書いてるけど、
いやいやいやいや、2冊どころで終わってもらっちゃ困る。
10冊だって読みたい。
いつか文学賞取るのだって夢じゃないと思う。

爆笑問題の太田が品庄の品川に勧められて
「品川に本のことなんかわかんのかよー」
って思いながら読んだらすごく良かったとラジオで絶賛してたらしい。
「いやぁ素晴らしいね~、
 これは本当嬉しくなる位おもしろい!
 バカ野郎~、お笑いをなめんなよ~、
 ざまぁみろと言ってやりたいね。
 これはもう直木賞ものだし、
 放っておいてもあいつは文学賞を必ずとるよ。
 あいつは芸が細かいから細部にまでよくこだわっている。
 でも、今売れてるそうだけど こんな売れ方じゃ俺は不満だね!」
とか言ってたらしい。
最後に「これだけ言ったんだから俺も劇団ひとりから何か貰わないとな」とも(笑)


追記
結構評価が高くて、
『芸人なんかやめて小説家になればいいのに』
って言う人が結構いるようなんだけど、
何かその言い方は、芸人より小説家が上であるかのようでイヤだなぁ。
お笑い芸人ってすばらしい職業だと思うのに…。
人に笑いを提供するってすごいことなのに

『マダムだもの』

2006-03-08 00:40:53 | 
小林聡美『マダムだもの』
小林聡美がオットや犬や猫とともに過ごす日常を綴ったエッセイ。
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やっぱりこの人大好きだわ。
あたしは普段、エッセイを全くと言っていいほど読まない。
好きな作家さんでもエッセイは苦手。
でも、先日『おしゃれイズム』に小林聡美が出ていて、
けらけら笑いながら見てたら、
母が、お母さんこの人の本持っとるよ~って出してきてくれて、
ちょっとめくったらすぐに読み終わってしまった
読むのが遅いあたしでも2時間かからなかったのだから、
他の人は1時間ぐらいで読めちゃうんじゃないかな。

最後の方は、まだ終わんないで、まだ終わんないで、
っていっぱい願いながら読みました。
それぐらい楽しかった。
テレビで喋ってるときや演技してるときと同様、
なんだか淡々としていて、でも愛らしくて、
なぁ~んか心地いいんだよなぁ
クールな雰囲気漂わせてるのに、
どことなく不器用な感じがあってそこがまたいいんだわ。
旦那さんとのお話もとてもとてもほほえましくて、
三谷さんのこと大好きなのね、
三谷さんも小林さんのこと大好きなのね、
って、なぜだかこっちがうれしくなっちゃう感じ!
この夫婦がますます好きになってしまったよ。

『永遠の出口』

2006-03-06 23:46:27 | 
森絵都『永遠の出口』
<永遠>という響きにめっぽう弱い少女紀子。
お友達との誕生日会での小さな事件、
黒魔女のように恐ろしい担任との戦い、
前髪を気にしながら少しグレた中学生時代、バイト、失恋。
紀子の小学校3年生から高校3年生までを描いたお話。
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悪くはないけど、なんか物足りないんだよなぁ
『私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった』
という最初の一文に惹かれてこの本を買ったから、
その、<永遠>へのこだわり?みたいなものをもっと描いてほしかった。
第二章の「黒い魔法とコッペパン」は「女王の教室」の阿久津真矢を思い起こさせ、
原作?って思うほどだった。
真矢とは全然違ってたけども。

好きなのは、第三章の「春のあなぼこ」
乗り越えることができること、忘れてしまうこと、
それを知っている虚しさや切なさはとても共感できる。

女の子なら「あ~、そういうのあったな」って思う部分あると思う。

『光の帝国 常野物語』

2006-03-02 13:48:36 | 
恩田陸『光の帝国 常野物語
遠くの出来事を知りえたり、近い将来を見通せたり、
不思議な力を持つ“常野”の人々。
ふつうの人々の中でひっそり暮らす彼らのお話。
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儚くも美しい物語。
“哀”という字がとても似合う。
でも、かわいそうなお話なわけではない。
全体が優しさで包まれていて、心地よい。
垣間見える暗さや残酷さ。
ぐいぐい引き込まれてしまった。
色でいうと“藍”の雰囲気かな。

恩田陸の作品は、以前、ネバーランドを読んだことがあるだけだ。
そのときは、なぜか、その話に覚えがあって。
外国の男の子たちがそれを演じたのを見たような気がして。
はっきり覚えてるストーリーなのに、
その本を読んだ覚えもドラマか何かを見た記憶もないから
読んでる間、ずっとその気持ちが拭えなくていやだった。
それ以来、恩田作品は手にしてなかったんだけど、
これは、読んでよかった。
ツル先生は存在してたんじゃないかという気さえする。

『陽気なギャングが地球を回す』

2006-02-23 02:48:30 | 
伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』
人の嘘をすぐに見抜く公務員・成瀬、
言ってることのほとんどが嘘な自称喫茶店経営者・響野、
スリの天才で動物をこよなく愛する20歳の青年・久遠、
正確な体内時計を持つシングルマザー・雪子。
彼らの正体は銀行強盗。
いつもどおり、シンプルに強盗をして逃走する途中、
世間をにぎわしている現金輸送車襲撃犯の車と接触事故を起こし、
彼らに銀行強盗で得た4千万を奪われてしまう。
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爽快
大筋のストーリーは先を読みやすいものだけど、
話のテンポや、彼らの会話のおもしろさがとても心地よい!
伏線張りまくりなので
『あぁ、ここもかぁ、忘れてたー』って楽しめる。
銀行強盗を行っているときの、彼らの紳士的な振る舞いがとても愉快♪
久遠というキャラクターがすごく好きだったな。
一番よく喋る響野のセリフがほとんど頭にも心にも残らないのが
とてもおもしろいと感じた。

まさにエンターテイメントなんだよなぁ。
成瀬の息子タダシくんの自閉症や中学生のいじめの問題など、
重いテーマを加えながらも決して重っ苦しくなく、
明るく、しかし絶対に軽くはない目線で進めていくところが
とても上手いなぁーと感心。

こいつら今頃どうしてんだろー?って
ついつい考えちゃう人も多いだろうから、
ぜひシリーズ化してほしい

『優しい音楽』

2006-02-18 16:35:41 | 
瀬尾まいこ『優しい音楽』
駅で偶然出会った千波とタケルのお話。
二人の間はうまく行っているのに、
なぜか千波はタケルを家族に会わせるのを嫌がる。
その理由は?(「優しい時間」)
深雪は不倫相手である平太の娘・佐菜を預かることに。(「タイムラグ」)
いろんなものを次々持ち帰ってくるはな子。
なんと今度は彼氏である章太郎と同棲している部屋に
佐々木さんというおじさんを持ち帰ってきたが。(「がらくた効果」)
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物足りないと言えば物足りないが、
何か本読みたいけど難しいのとか泣いちゃうようなのはヤダなー
ってときにちょうどいい一冊
こういうの好きなのは女性だろうな。
男性はあまり好きではないかもしれない。
ふんわりとしていて、温かな空間でした。
個人的にはちょっと身に覚えのある部分があって
そこは反省を強いられているかのようで困りましたが。

短くて読みやすいので、ちょっと時間が空いたときにでもどうぞ

『南の島のティオ』

2006-01-22 23:33:54 | 
池澤夏樹『南の島のティオ』
個性的な人々とティオとの出会いを通じて
ティオが住む島の暮らしを描いた連作短編集
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暖かでキラキラしていて、
読んでいる間、とても心地よかった。
ティオの住む島には行ったこともないし、存在すらしないであろうに、
“帰りたくなかった二人”というお話の二人が
島になかなか近づかない気持ちが何だかとてもよくわかる

ティオの姿を何度も想像した。
寝る前に一つずつ読んで、
そのたびに瞼の内側でティオの姿を思い描く。
きっと小さな、形の良い頭をしているだろう。
首筋がすっとして美しい。
月並みな想像だけど、やっぱり肌は小麦色。
歯並びが良くて、背中の筋肉が整っている。
きゅっとしまった足首をしていて、ちょっとやわらかいお腹をしている。
とてもとてもステキな少年だろう。
ティオとたくさん話がしてみたい。
あたしがティオに与えられるようなものを持っているかについては自信が無いが。

疲れた顔をしている友人がいたら、
こっそりと鞄に忍ばせてあげたくなるような一冊