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せんべえ空間

淋しがりやの一人好き。
あまのじゃくなせんべえの矛盾に満ち溢れた日々。

心に風を。

『キップをなくして』

2006-05-16 23:39:08 | 
池澤夏樹『キップをなくして』
「キップをなくしたら、駅から出られないのよ」
イタルはコレクションの切手を買いに行くために電車に乗った。
有楽町に着いてホームに降りるとキップが見つからない。
そこで出会った女の子・フタバコさん。
フタバコさんについていき、イタルは駅の子になった。
学校も家もないけれど、仲間がいるから大丈夫。
電車は乗りたい放題、時間だって止められる。
子供達の鉄道ファンタジー。
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すごくよかった
ミンちゃんのある事実が発覚するとこから
子供たちは「死」について考える。
そこで語られる作者の死生観。
すごくやさしい(優しい、易しい、どちらの意味でも)言葉で語られていて
あぁ、そういうことなのか、と納得してしまう。
悲しいシーンでも、なぜか心が温まって幸せな気持ちにすらなる。
中学生の読書感想文の課題図書とかにぴったりな感じ。
あたしに子供が生まれて、
「ねぇねぇ、お母さん、死ぬってどーゆーこと?」
って聞かれたら、うまく答えられなくてこの本を渡すかもしれない。

『逃亡くそたわけ』

2006-05-14 21:27:44 | 
絲山秋子『逃亡くそたわけ』
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
いつもこの言葉が幻聴で聞こえるあたしは
同じ病院の入院患者の気弱な男・なごやんを誘って病院を脱出した。
何処へ逃げるのか、何から逃げるのか…。
2人を乗せた車は九州を東へ南へ。
逃げるのに、理由なんていらない。
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九州旅行がしたくなった。
この二人のことをどうこう思うより、
九州おもしろそうだなぁって、
それだけを思った。
九州のガイドマップみたいな本だった


『4TEEN』

2006-05-10 17:25:38 | 
石田衣良『4TEEN』
月島で暮らす中学2年生4人組・ナオト、ダイ、ジュン、テツロー。
友情、恋、性、暴力、病気、死。
出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく少年達のストーリー。
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放送作家の鈴木おさむさんがHPでのさまぁ~ず大竹との対談で
『東京出身の人って、芸人さんもスタッフも、
 絶対地方出身者が努力しても手に入れられないポップ感が
 作る物にあるんですよね!
 作り手で言えば、「ひょうきん族」を作った三宅さんとか、
 「めちゃイケ」の片岡飛鳥さん。
 芸人さんだと「とんねるず」さんがズバ抜けてる・・・』
と話していた。
石田衣良の作品にも同じことが言えるように思う。
ポップ感はあるけど軽々しくなくて、
すごく爽やかで爽快感がある。

読み始めたとき、あぁ、ちょっといまいちかなぁ
これって直木賞取ったんでしょ?
他にももっといいの書いてると思うけどなぁ
って思いながら読んでいた。
まぁ、話としてはすごくおもしろいんだけど。
ほんとにビックリするプレゼントだし
でも、話を進めていくうちにおもしろくなっていった。
普段は読まない作者あとがきを読んでみたら、
これは、最初の話から1年半後くらいに次の話を書き、
その後も1年ごとぐらいに書いていったらしい。
どうりで少しずつうまくなっている(何様かしら)。

彼らは14歳で、まだまだ子供として描かれているけど、
少し大人びた14歳だと思う。
最近の14歳はこういう感じなのかなぁ。
それとも都会の14歳だからなのかなぁ。
20歳を過ぎた彼ら、30代になってそれぞれ家庭を持っているかもしれない彼ら、
40代の、おそらく3人になってしまっている彼ら、
今後の彼らのことをすごく知りたい。

『町長選挙』

2006-05-09 11:45:36 | 
奥田英朗『町長選挙』
トンデモ精神科医伊良部が帰って来た!
町長選挙真っ最中の離島に伊良部が赴任する表題作の他、
球界を牛耳る大手新聞社のオーナー・ナベマン、
合理主義のIT企業社長アンポンマン、
40歳を過ぎてブレイクしたアンチエイジングに勤しむ女優白木、
が伊良部の元にやってくる3本。
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表題作以外の3つは明らかにモデルがいて、
その脇役の人たちまでモデルがいる。
“オーナー”はナベツネ、
“アンポンマン”はホリエモン、
“カリスマ稼業”は黒木瞳、という風に。
まぁ、別に彼らをモデルにしているとは言ってないけど、
読んだ人は必ずと言っていいほど、彼らのことだと思うだろう。
だから、その人たちの顔がどうしても浮かんでしまって、
話の内容に入り込みづらかった。
もっともっと伊良部ワールドに引き込んでほしい。
前作2本では、患者は普通の人で、
伊良部のキャラがおもしろい感じだったのに、
今回のは患者側がすごくキャラが強い。
特に最初の2つ。
一つの作品としておもしろいけど、
伊良部のシリーズとして読むと、
こうじゃないよなぁ~って気分になる。
だから最後の“町長選挙”が今までの流れに合っていて
これが一番好きだったなぁ。
あと、マユミちゃんが喋りすぎ。
マユミちゃんの不思議な雰囲気が壊れてくー!!
マユミちゃんは1つのお話で2回ぐらいしか喋んなくていいのにー。。。

『変身』

2006-04-28 17:49:59 | 
フランツ・カフカ『変身』
グレゴール・ザムザはある朝目覚めると、
自分自身が1匹の大きな毒虫に変っていることに気づいた。
なぜこんなことになってしまったのか。
その謎は追い求められぬまま、
いつもどおりの日常がすぎてゆく。
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NHKの「名作平積み大作戦」という番組の中で
いとうせいこうがこの本をすすめていた。
ツッコミ不在でカフカがボケまくっているところに
読者自身がツッコミをいれることで楽しめるとか言ってたかな。
最初の方はまさにそのとおりで、
とんでもないものになってしまってるのに
どこか冷静なままで外の景色なんかを眺めてるグレゴール・ザムザに対して
おいおいっ と苦笑しながらつっこんでられるんだけど、
途中からもう笑えない世界になってしまってきた。
まさに不条理の極みといった感じなんだけど、
これを不条理だといって憤慨してる場合ではなくて、
人の本質を突いてると思った。
例えば、もう痴呆がかなり進んでいて話も通じず、寝たきりで、
周りが下の世話をしてやらねばいけなくなってしまった老人がいたとき、
その老人が死んだ後、どこかほっとしてしまうのはあると思う。
実際、私の家でも曾祖母が数年間寝たきりになって
痴呆もかなりヒドくなってから亡くなったあと、
どこかほっとした雰囲気があったように思う。
私はそのとき小学校6年生だったけど、
子供ながらに家の中の安堵というか、肩の重荷が降りたような雰囲気を感じた。
悲しい感情だけどよくある感情だと思う。
この話の結末は、そのときの状態によく似ているんじゃないかなぁ。

『トリツカレ男』

2006-04-21 13:53:35 | 
いしいしんじ『トリツカレ男』
「トリツカレ男」と呼ばれる男・ジュゼッペ。
何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかりになってしまう。
オペラにとりつかれれば一日中歌い続け、
三段跳びにとりつかれれば世界記録だって出してします。
サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミなどなど、
本当にたくさんのものに次から次へとりつかれた。
そんな彼が、次にとりつかれたのは風船売りをする無口な少女。
寒い国からやってきた彼女の名はペチカ。
悲しみに凍りついた彼女の心を、
ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが。
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なんて美しいお話だろう。
すごくピュアで、かわいらしくて、一生懸命で、優しくて。
心が温まる。
そして、読みながらついつい涙がこぼれた。

『りはめより100倍恐ろしい』

2006-04-18 17:57:13 | 
木堂椎『りはめより100倍恐ろしい』
“いじり”と“いじめ”は一文字しか違わないが、
いじりはいじめより100倍恐ろしい。。。
中学生時代、ずっといじられキャラだった羽柴典孝は
高校デビューして自分以外のやつをいじられキャラに仕立て上げるが。
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現役高校生が全文を携帯で書き上げた1冊。
いじりはいじめより100倍恐ろしい。
その着眼点はおもしろいと思うし、
理由もそれなりに納得できるものだけど、
結局話の中で行われてることはいじりではなくいじめだしなぁ。。。
いじりってそういうんじゃないよ。
主人公や周りの友達がクラスや部活の中で自分の地位を確立させていくところ、
すごく危うい人間関係、愚かな見栄、
そういうのはリアルでおもしろかったけど、
“野ブタをプロデュース”で描かれたものとそれほど変わらない気がした。
それにラストがちょっと雑かなぁ。
でも、いじりはいじめより100倍恐ろしい
っていうテーマはおもしろいし、
高校生らしいセリフとか言い回しは楽しくてテンポいいから、
今後おもしろいの書くのかもって思います。
まぁ、全てを携帯で書いたっていう話題性のおかげで
青春文学大賞に選ばれたって感じは否めないように思うけども。

『蒲公英草紙―常野物語』

2006-04-08 01:30:24 | 
恩田陸『蒲公英草紙―常野物語』
“蒲公英草紙”とは主人公・峰子が綴っていた日記の題名。
20世紀初頭のとある農村の物語。
峰子は槇村家のお嬢様・聡子のお話相手を務めていた。
槇村家が守る農村と常野の一族の春田一家との交わりなどが
峰子の視点で語られていく。
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小さな子供がハリーポッターやナルニア国物語を読むかのように
わくわくどきどきしながら読んでいた。
でも、そんなもんじゃなかった。
想像以上に凄みのある作品で、
込められたメッセージはとても重いもののように思う。
最後の部分はあたしたちが考えることから逃げちゃいけない問い。
常野の人々の行うことはとても現実離れしているが、
ファンタジーな部分の裏に秘められたものや伝えたいことは
全く現実から離れていないものだ。

聡子様の様子がありありと浮かぶようで、
その農村の人たちがみなそうであるように
あたしも聡子様に魅了されてしまった感じだ。
ラストの方はついつい泣いてしまった。

目に見えるものしか信じないという人がいる、っていう話をしてるところで、
“だったら一番信じられないものは自分だ”
みたいな部分があって、そこがとても印象的だった。
目に見えないものほど大切だし、真実が隠されているのだろう。

この本は、ほんとにいい。

『きんぎょの夢』

2006-03-31 15:38:12 | 
向田邦子『きんぎょの夢』
おでん屋を経営する砂子。
砂子には結婚してもいいと思っている男がいた。
ある日、砂子の店にその男の妻がやってきた。(「きんぎょの夢」)
結婚をめぐった親子の心の行き違い。(「母の贈物」)
子供のいない老夫婦の哀しみと歓び。(「毛糸の指輪」)
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気持ちがいい。
ぽんっ、ぽんっ、って何かを差し出されるかのように話が進む。
「母の贈物」が一番好きだな。
人って結局そんなもの。でもいいじゃない。みたいな。
いい意味での諦めと、
そんな人達へ尚湧き起こる愛情。

『西の魔女が死んだ』

2006-03-30 22:30:59 | 
梨木果歩『西の魔女が死んだ』
中学に上がってすぐ、
どうしても学校に足が向かなくなったまい。
まいは「西の魔女」すなわちおばあちゃんのところで
魔女の修行を受けることになった。
その修行とは何でも自分で決めるということだった。
もちろん自分の幸せも。
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すごく読みやすくてキラキラしたお話。
小中学生向きという感じはあったけど、、、。
ショウコが一番好きだな。
まいのパパも憎めない存在だし、
ゲンジさんもちょっと愚かなだけでそう悪い人でもなさそうだ。
とても平和で、それぞれがかわいい人たち。