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せんべえ空間

淋しがりやの一人好き。
あまのじゃくなせんべえの矛盾に満ち溢れた日々。

心に風を。

『ダリア』

2006-09-06 01:17:11 | 
野中柊『ダリア』
<女の子>である前に<自分>なのか、
それとも<自分>である前に<女の子>なのか。
そんな問いを勢いよく蹴飛ばすがごとく、
時代遅れでお頭の陽気な女の子と思われるチアガールをする主人公ハナコ。
そんなハナコに対し、<子供の主体性>を頑なに重んじ、
口には出さずに非難する両親―――通訳として働く母と家庭を守る父。
プレイボーイよりプレイガールを読みたがる幼なじみの太郎。
既存のジェンダーにゆれる10代の二人が
生と性について悩みながら生きていく。
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題名は、ハナコが友人から貰った「ダリア」というポルノ小説から。
んで、感想。
正直よくわからなかった。
作者の思いとか構想が広がりすぎて、
収集つかないまま話を終わらせてしまったという印象を持ってしまうのは、
あたしの理解力が足りないからかもしれない。
ハナコたちが悩み考えてる内容は理解できる。
男と女だけでは分けられない性。
そこでもがく人間たち。
そして、悩まずにはいられない10代。
んで、結局ハナコたちは自分の気持ちにどういう風に向き合ったの?
ぬくもりを求めて、それを感じたからオッケーみたいなこと?
よくわからない。
もやもやしたままだ。

最後の方でパパが作ったバナナクリームパイが
全体的な象徴となってるように思う。
ポルノ小説の主人公ダリア自身がバナナクリームパイっぽいとも思うし、
この本全体がバナナクリームパイっぽいとも思う。
結局ハナコはダリアのことをどう思ってたんだろう?
自分に重ねていた?
ハナコがダリアを読んで抱いた印象をもっと描いてほしかった。

一番好きなシーンは、
ハナコが「私がアメリカの女の子だったらよかったのに」って思うシーン。
そこだけはすごく共感した。

『ママの狙撃銃』

2006-09-04 15:45:55 | 
荻原浩『ママの狙撃銃』
曜子は二人の子をもつ主婦。
夫の孝平は中堅企業のサラリーマン。
ごく普通に見える毎日の暮らし。
しかし、曜子には秘密があった。
彼女は幼い頃にアメリカに住む祖父の元で
射撃や格闘技や銃の分解・組み立てを仕込まれていた。
祖父の職業はなんと、暗殺者だった。
平凡に過ごしていたある日、
25年ぶりにKという人物から電話が。
「もう一度仕事をしてみないか?」
さて、曜子は。。。
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おぎわらでもはぎわらでもどっちでもいいよ。
ってふかわりょうじゃなくても言いたくなる名字ですが、
おぎわらだそうです。
はぎわらだと思ってました。
まぁそれはさておき、本の感想。

はっきり言って中途半端。
おもしろいよ。
おもしろいんだ。
そこそこね。
文章のテンポとか割と好きだし、
暗殺のシーンはページをめくる手が早くなって
はやく“ユー”に辿り着かないかなーなんて思ったし、
おじいちゃんと曜子のシーンも好き。
でも、全体として、話の焦点が定まっていない気がする。
ブラックユーモアみたいな感じにしたいのか、
暗殺というものをスカっとする感じで描きたいのか、
母・曜子のパワフルな部分を見せたいのか、
はたまた泣かせたいのか。
どんなスタンスで読めばいいのだろう。
すごくわかりづらい。
最後ちょっと感動っぽくなりつつあったけど、
でも、でもなぁ、って思っちゃうよ。
家族との生活を守るため。
そのためにとんでもないことできちゃうってのは
母親としてすごく頼もしい。
だけとそれとのすりあわせとして、
銃や暗殺は
重すぎる。強すぎる。
あまり深刻に考えさせるつもりなど作者の意図にはなかったのだろうけど、
でもやっぱり、それってどーなんかな、って思っちゃう。
それぐらい苦しんで当たり前でしょう、みたいな。
ラストも簡単すぎる。
どうせなら奇跡とか起こってほしかったよ。
最後にやつらが何か言うとか動くとかすれば、
もやもやしてたの飛び越えて、ぶっとんだものとして読めたのに、
普通に終わっちゃうんだもん。
依頼を受ける受けないで悩んでるときも
日常の様々な問題にしても、
ラストシーンにしても、
全ての行動にいちいちいいわけして理由つけてる感じがうっとおしかった。
もういいじゃん、そう決めたんならすればいいじゃん。
何言い訳してんの。
そろそろ割り切ったら?
そんな気分でした。

曜子のキャラは好きだけどね。
母親ってそういう人だと思うんですよ。
家族のためにならとんでもないことしちゃう人。
あたしの母親はスバラシイ人ではない。
育ててもらって食わせてもらってる娘が言うのもなんだが、
人として未熟な部分はいっぱいあるはず。
だけど、
あたしたちを守るためならびっくりするようなことできちゃう人だと思う。
だから、母親としての姿勢をすごく尊敬している。
曜子はあたしが思い描く母親像と近い人。
だからなんか好きでした。
秀太もかわいいし、珠紀もまぁ普通の子だ。きっとステキな人になれる。
だけど孝平はほんとイヤ。
大嫌い。
こういう男イライラする。
曜子、もっと早く叱ってあげてよかったんじゃないの。
きっとここ男今後も変わらない。
あー、やだやだ。


なんだかんだで、
この人の本他にも読んでみようかなって思える作家さんでした。
今この人の『噂』ってやつ売れてるみたいだし。
でもサイコサスペンスらしいから読みにくいかなぁ。
他の読も。

『どきどきフェノメノン』

2006-09-02 14:00:31 | 
森博嗣『どきどきフェノメノン』
窪井佳那は大学院のドクターコースに在籍中の24歳。
「どきどき」の探求が趣味。
7つの大きな悩みの一つは、飲酒時の記憶喪失。
公園にある犬の銅像がやけに気になる。
研究室の後輩の爽やか系鷹野史哉、
同じく後輩で人形オタクで怪しげな水谷浩樹、
指導教官の相沢助教授、
謎の怪僧・武蔵坊。
この中で佳那を一番どきどきさせるのは誰だ??
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かわいいお話でした。
佳那も水谷も武蔵坊もかわいい。
思考というか脳内が完全に理系な感じ?
ぶつぶつ考えてることがおかしかった。
結構あっさり読める本です。
あぁ、理系男子にモテる女の子ってこういうのかしら、
みたいなことも思ったり。

一番好きなのはシャンプー送ってくるお父さん。
ステキなパパさんだなぁ。
シャンプーの研究してる人か何かなんだろうけど、
その設定がすごくスキでした。
あと、最後に佳那がお父さんに言ったセリフがめっちゃかわいかった。
そんなこと父親には言わないだろうって思うけど。


森博嗣って初めて読んだ。
推理モノとかミステリーのイメージがあったんで、
あたしはそういうのあんまり読まないし、
ちょっと怖そうって思いつつも、
結構魅力的な題名と装丁の本が多いので気にはなってた。
できれば、森博嗣の王道っぽい作品も読んでみたい。
ちょっとむずかしそうだけど。

『銀の皿に金の林檎を』

2006-09-01 14:31:25 | 
大道珠貴『銀の皿に金の林檎を』
観光名所のある町に生まれた夏海。
若くして夏海を産んだ母親と、
同じく若くして夏海の母親を産んだ祖母と、
その祖母が40代半ばで産んだ双子の空と歩と、
祖母のヒモの魚谷。
そんな人々に囲まれながら
夏海は女子高生から銀座のホステスへ。
夏海の16歳から31歳までの物語。
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久々にタイトル買い&ジャケ買い。
いや、買ったんではなく借りてきた本だけど。
表紙可愛いなぁって思ってたらこれ、土屋アンナなんですね。
なんとなーく借りたのであまり期待はしていなかったのだけど、
意外とおもしろかった。
夏海はさみしい人だな。そしてかなしい人。
めちゃくちゃ不器用だし。
安定を求めず、思い出も求めず、どこかへ行きたい、と思いながら過ごす夏海。
必死で愛を求めてる感じが痛々しかった。
懸命に居場所を求めてるのがつらかった。

淡々とした文章で読みやすく、
<16歳><21歳><26歳><31歳>と、
4部構成になっているので、
あと、ちょっとだけ読んでから寝ようって思いながらすすめていったら
結局最後まで読んじゃってた。
一人の女性の半生の物語だからといって、
何かを得て成長いていくようなストーリーではない。
ただただどうにか生きてるというのだ。
それがとても切なく思える。
薄いようで濃い人間関係。
淡々と飄々としていながらも何か熱い人たち。
かなしい人たちだ。

魚谷いいなぁ。
別にいい男じゃないんだけど、魅力的な男。
ついつい惹かれてしまう男。
うんうん。
岸田風太もいい。
健康的で。

あと、やぎを飼いたくなっちゃいそうな本でした。

『あなたと、どこかへ。』

2006-09-01 00:24:57 | 
『あなたと、どこかへ。』
吉田修一、角田光代、石田衣良、甘糟りり子、
林望、谷村志穂、片岡義男、川上弘美

日産TEANAスペシャル・サイト発信。
あなたと二人で、ここではないどこかへ。
かつての、もしくは今の愛を確かめに車で出かけるふたりを
8人の作家が描いた短編集。
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母が図書館から借りてきた本の中にあったので、
ちらっと読んでみたのだけど、
かなりあっさり読めました。
内容はまぁ、あー、うん、そうね、っていう程度のもんだけど、
どこか車で旅行とかドライブとか行きたくなるような感じがした。
甘糟りり子のと林望のは好きになれなかったな。
主人公?にばかじゃねぇの、みたいな気持ちが湧いちゃって。
吉田修一のはかわいい感じ。
川上弘美はもともと好きだから贔屓目になっちゃってるかもしれないけど、
やっぱり一番好きな話だったなぁ。
あと、角田光代のも。
この弟かわいすぎ。
あたしが引きこもったらあたしの弟も連れ出してくれるかなぁ。
他はまぁ、別に

『ぶらんこ乗り』

2006-08-31 02:17:05 | 
いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
ぶらんこ乗りや指をならすのが得意な男の子。
悪ふざけやつくり話の天才。
声を失ってしまった男の子。
でも動物と話ができる。
今はもういない、わたしの弟。
天使みたいだった少年が、
この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。
ある日、わたしとおばあちゃんは、古いノートを見つける。
そこに残されていたのは、痛いほどの真実。
ある雪の日、わたしの耳に懐かしい音が。
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とってもよかったです。
前に読んだ「トリツカレ男」も好きだったけど、
これもほんとよかった。
子供の頃に戻りた~いって思うときってあるけど、
これを読むと、
ああ、大人になってよかった(まだまだガキですが)
って思える。
無邪気な子供にはわからないような、
そんな優しさ、温かさ、痛み、愛しさ、とかが溢れているから。
すごく優しい雰囲気のお話で、
まさに‘物語’というお話なんだけど、
なんとなーくドロドロした部分が見え隠れしていて、
ちょっと恐ろしくもあった。
読んでいるとどんどん淋しくなってきた。
心が痛くなってきた。
でも、温かさも感じた。
すごく色んなものが溢れている本でした。

やさしいやさしい弟。
あまりにかわいいせいで神様は弟を自分のものにしちゃったのだろうか。
すごく頭がよくて、お話も作れるしブランコも上手だし、
だけど、そんな弟は平凡なおねえちゃんのことが大好きで、
おねえちゃんを喜ばせるのが大好きで、理解してほしくて、
そこがとてもかわいかった。
おねえちゃんがぶらんこにあがってきたことを喜んで日記に書いてるとこ、
そのシーンはまだまだ最初なんだけど
なんか泣きそうになってしまった。

すごく印象的だったのは、
おばあちゃんが死というものに対して
「わからなくてもいい。わかるもんじゃない。でも目はそらすんじゃない」
と言ってたシーン。
すごくすごく、心にぐんっと来た。
このおばあちゃん大好き。
すごくかっこいい。
一番好きなキャラかも。

弟が書いたお話として出てくる「たいふう」というお話と、
その挿絵になっているひねくれ男の絵。
これは作者自身が4歳のときに実際に書いたものらしい。
それを聞いて、また泣きそうになってしまった。
なんて子供でしょう。

『小学生日記』

2006-08-30 01:06:38 | 
華恵『小学生日記』
母と行くフリマのこと、
日本での新生活に戸惑う兄モトイのこと、
授業で指されても
決して声を発せずニコニコしてるエリカちゃんとのこと、
学校のこと、
お仕事のこと、
受験のこと、
NY大停電のこと、
などなど、
10歳の頃からモデルや女優として活動するhanae*のデビュー作品集。
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結構おもしろかったです。
軽~く読める本。
すごくかわいい本。
丁寧で、キラキラしてて、楽しかったです。
ほんとうに『小学生日記』って題名がぴったりな、
小学生の作文をまとめた感じの一冊。
でも、全然ちゃっちい感じはしません。
すごく一生懸命に毎日を過ごしていて、色んなこと考えてて。
ほんとかわいい。
一人一人の人間の描写とかが生き生きしてて、
そこが好きです。
作者自身がそれぞれをすごく好きですごくよく見てるからこそ書ける。
そういう文章。
「ペイ・フォワード」の感想を書いてる部分、
あぁ、そんなこと全く考えなかったなぁーと感心しちゃった。
「ミュージック・オブ・ハート」見たことないし
今度見てみようかな。
あと、フリマも久々に行きたくなっちゃった

『ポプラの秋』

2006-08-22 14:20:18 | 
湯本香樹実『ポプラの秋』
交通事故で夫を失い虚ろな母と、もうじき7歳の私。
私達は夏の昼下がり、あるアパートに引っ越した。
庭に大きなポプラの木がある「コーポ・ポプラ」。
不気味で近寄り難い大家のおばあさんはある日、
私に奇妙な話を持ちかけた。
18年後の秋、お葬式に向かう私の胸に、
約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに甦る。
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小さな子供がお年寄りとの関わりによって色んなことを学ぶという
主軸となってる部分は『夏の庭』と同じで、
全体的な構図は、作者は違うけど『西の魔女が死んだ』を思い出すものでした。
さらっと読めて、なかなか楽しめた。
同じアパートの佐々木さん?が
「私」にあげようとしてうさぎの気ぐるみを持ってくるとこが好きだったな。

お年寄りが私達に教えてくれることの中で
一番大きなものは死だと思う。
もちろん小さい子供だって死ぬけれど
老衰による死はとても静かなものだと思うから。
『夏の庭』もこの本も、
共通して“お年寄りってすごいんだぞ!おもしろいんだぞ!”
って主張してる気がする。
でもなぁ。
お年寄りとの関わりで何かを得ていくような話を読むと
“けっ”って思っちゃうのは、
私の祖父母がそんな人たちではないからかな。
祖父はまあ痴呆が進んできてイライラすることが多いが、
基本的には普通のおじいさんだ。
でも祖母の意地の悪さと言ったらヒドいもんだから。
祖母がヒドい性格だから近所での母の評判はいい。
あそこの嫁さんはよくあんな姑さんと一緒に暮らせるわね~、
よくできた嫁さんだねぇ~
と言った具合に。
祖母は私が修学旅行で買ってきたお土産のお菓子を
気に入らないのかすぐに誰かにあげちゃう人。
敬老の日とかに何かプレゼントをしても
「こんなものいらんわっ」って感じでその辺に置いて忘れちゃう人だ。
誰かがテレビを見てると部屋の電気を消しちゃう人だ。
もうどれも慣れてしまったけども。
昔に比べたら私だって大人になり、
色んな理不尽な人に対して寛大な気持ちを持てるようになったつもりだが、
うちの祖母だけは未だに寛大になれない。
いや、いくらとんでもない人がいても、
うちの祖母に比べればなんてことない、
っていう風に思えるようになっただけかもしれない。

『ベロニカは死ぬことにした』

2006-08-21 01:04:37 | 
パウロ・コエーリョ『ベロニカは死ぬことにした』
若さも美しさも素敵なボーイフレンドたちも
堅実な仕事もそして愛情溢れる家族も持っていたベロニカ。
でもベロニカは幸せではなかった。
ベロニカは死ぬことにした。
ある朝彼女は睡眠薬を大量に飲んだ。
だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。
自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、
ベロニカは狂人たちと過ごすことに。
しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、
人生の秘密が姿を現そうとしていた。
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『全世界45ヵ国、500万人以上が感動した大ベストセラー』
らしい。
ただでさえ翻訳ものを読むのは苦手なのに、
こむずかしい事柄とか、
考え始めたら止まらなくなりそうな事柄が出てくるので
すごく時間がかかった。
途中で一旦休憩しちゃったし。
投げ出しそうになりました。
あー、また翻訳もの途中でギブアップしちゃったなぁ
ってな具合に。
それでも読み続けたのは、
ベロニカの最期が見たかったから(悪趣味?)。
どんなことを思いながら死んでいくのだろう、
のたうちまわるのだろうか、静かに逝くのだろうか。
気になってしまったから一日にほんの数ページずつでも読んでみた。

妙に気を張って読みました。
引きずり込まれぬように気をつけながら。
気持ちが鈍感なときの方が読めるなぁ。
悩みやすい人は読んじゃだめ。
ナイーブな時期とかにも。
そんな感じの本。
こういう本読みなれてる人にはたいしたことないのかな?
まぁ、気をつけて読んだからか、
思ってたほど読後感は悪くなかったけど。
「狂気」とは何か、「普通である」とはどういうことか、
「自分らしく生きる」とは一体?
そんな感じのテーマのようだから、
でもまぁちょっと疲れたかな。
真正面から受け止めると怪我しますよ、って感じ。
マリーが神の犯した罪について考えてるあたりのところが一番おもしろかった。
それ以外はまぁ、愛ってすばらしいですね、的なストーリーなのかな。
ラストも意外とさわやかだったし。
ちょっと拍子抜けした感じだけど。
もうちょい強くなったら気を張らずに緊張せずに読んでみようかな。
今回は肩に力が入りすぎた。
そんなに構える本じゃあなかったな。

『風味絶佳』

2006-08-08 22:46:56 | 
山田詠美『風味絶佳』
「間食」では鳶職、
「夕餉」ではゴミ収集員、
「風味絶佳」ではガソリンスタンドの店員、
「海の庭」では引越し屋さん、
「アトリエ」では汚水槽の作業員、
「春眠」では火葬場の職員
という、肉体の技術をなりわいとする男性と
その周りの女性の話。
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かわいらしい装丁だなぁと思いつつ買い、
読んでみたら、ああそうか、そういうことか、と思った。
似ているんだ。
小さな小さな一粒で贅沢な気持ちになるような味わいがあるキャラメル。
短編集で一つ一つは短いのにどれも中身がぎっしりしてて味わい深いこの本。
それもどの話も甘くてとろけそうなんだ。

山田詠美ってデビュー作のイメージとかで
よく思ってない人多いんじゃないかと思う。
実力がたいしたことないのに話題性が先行してるタイプって思ってたり、
現実味が無いっていうイメージだったり、
黒人とかセックスとかばかりが目立ったり、
食わず(読まず)嫌いしてる人も多いと思う。
でも、これは作者の文章のうまさとか日本語の使い方が
しっかり表れた作品だな、って思った。
評価も高いようだし。
一番最後の“春眠”がなかなかよかった。
やわらかで。
だけど、あたしは山田詠美の作品なら他のの方が好きだな。
なんでこの本がそんなに評価されたのかな。
アニマルロジックとかひざまずいて足をお舐めとかの方がおもしろかった。
この人は恋愛モノのイメージが強いけど、
そういうんじゃなくて、
もっともっと重いテーマをちゃんと扱える人だと思う。
しっかりした意見言える人だと思う。
ちょっともったいないな。

そうそう、この本とキャラメルが似ている部分がもう一つ。
一度に食べるもの読むのも一個ずつにした方がいいのかも。
一気に全部読むのには向いてないように思う。
ちょっとずつちょっとずつ。
一日に1~2話ずつ読むぐらいのペースが似合ってる。