お月さまがやさしく地上に光をそそがれていた満月の夜でした。
仔猫のルンナは、おばあちゃまのおうちにあそびにいった帰り道で、お空をみあげました。
きっれ~い~
やさしいひかり、お月さまが暗い夜も道を照らしてくださってるから安心しておうちに帰れる。
お月さま、ありがとうにゃ~。
ルンナはルンルンと歌いながら、歩みをはずませ、ステップしながらおうちにむかいました。
ルンナは、毎日おばあちゃまのおうちに遊びに行っていました。
おばあちゃまのお話で、猫とネズミの物語を聞くのを楽しみにしていました。
ある日のことでした。
その日もルンナは、おばあちゃまのおうちに行ってから、帰るとちゅうでした。
とつぜん、ゴーゴーと、風の音がしてきました。
お空を見上げると、お月さまが雲にかくれてみえなくなっていました。
お月さま・・・ルンナは明るいみちしるべが突然消えて、風の音がするので不安になりました。
くらやみになっちゃった。なんにもみえないよ。
風の音はゴーゴーとちかづいてきました。
まわりの木や草が風にゆれはじめました。
逃げるんだよ~
どこから逃げてきたのか、たくさんの犬やネコ、動物たちが走ってきました。
どこへいくの?
とにかく、高い所に。キミもおいで!
黒ネコさんがいいました。
キミも逃げないと巻き込まれちゃうよ。
ボク、おうちにかえるところなの。
ボクたちがきた方向に行ってはだめだよ。
ていぼうがけっかいして、川があふれているんだよ。にげなくちゃ。
黒ネコさんは、ルンナをゆうどうしました。
でも、ルンナはお母さんのことが気になりました。
ボクのおかあさんがおうちにいるの。おばあちゃまもこっちにいるの。
みんなにげてるよ。きっと!さあ、いこう!
ルンナは黒ネコさんにゆうどうされて、いっしょに走りました。
ネコたちが走って逃げているうしろから、水がおしよせてきました。
あと1メートルおそかったら、ネコたちもみんな水にのみこまれてしまうところでした。
猫たちは一気にジャンプして丘へ上がっていました。
ルンナが振り向くと、水面に浮かんでいる猫の姿が何匹も見えました。
犬やそのほか、走っていたのに巻き込まれた動物たちも見えました。
あ、おかあさんだ!
ルンナの目にうつったのは、おかあさんとおばあちゃまでした。
助けてあげなくちゃ、おかあさん、おかあさん。おばあちゃま~。
黒ネコさんは、ニャーメンと言って、ルンナにめくばせしました。
行くんだ!
黒ネコさんは、ルンナのくびをくちにくわえて走り出しました。
もう一つ高い丘へ逃げるんだ!
黒ネコさんは、ルンナをくわえて、いちもくさんにはしりました。
小高い丘の上についた時、やっと黒ネコさんはルンナを草の上におろしました。
ゴーゴー、ゴボゴボ、ヒューヒュー
不思議な音が丘の下できこえていました。
何が起きているのかわからないよ~。
ルンナは疲れてしまって気を失いました。
どれくらい時間がたったのかわからないくらい、長い時間が過ぎました。
そのあいだルンナは眠っていました。
やがて、目が覚めると、黒ネコさんやほかのネコたちが心配そうにルンナを見つめて祈っていました。
やあ、気がついたんだ。よかったよかった。
おかあさんは?
ルンナがたずねたときでした。
空から何本も地上に光の柱のような光がさしてきました。
そして、その光の中を、猫や人間がひきあげられていくのがみえました。
あ、おかあさん。おばあちゃまもいる。
ルンナはさけびました。
ルンナのおかあさんは光の柱の中から、ルンナに声をかけました。
ルンナ、生きるのよ。黒猫さんはずっとあなたと一緒にいてくれるから。
あなたは黒猫さんが通ってきた道を一緒に歩いていけば無事に生きのびていける。
お母さんも、光や風といっしょにあなたのそばにいるわ。
また、必ず会える日が来るまで、強く生きるのよ。
愛してるわ。ルンナ、永遠に愛してるわ。忘れないでね。
光の柱はす~っと天に吸い込まれるように消えていきました。
おかあさ~ん。おばあちゃま~。
ルンナは声の限りに泣き叫びました。
泣いているルンナの横に、白ネコさんがそっと近づいてきていいました。
おかあさんやネコたちは、住む場所をかえただけなのよ。
神さまがそうしてくださるの。
今は会えないけど、いつかまた会えるのよ。
泣くだけ泣いていいからね。
そして白ネコさんは静かにうたいはじめました。
♪月と星、太陽をつくられたかたに栄光がありますように
かんしゃをおささげします。
キリエ・エレイソン
キリエ・エレイソン。ニャーメン♪
ルンナはそのうたをきいていると、心があたかかくなってきました。
悲しい涙がす~っと歌のなかに吸い込まれていって、
なぜだか元気が出てくるようでした。
また会えるんだね。
そうだよ、その日までせいいっぱい、生きていこうネ。ボクたちもそばにいるからね。
ありがとう。
ルンナは悲しいのにうれしい。・・・ふしぎな感情の中で涙をふきました。
朝がくるよ。
太陽とお月さまが交替する時間だよ。
朝日をあびて元気になろうね。
ルンナはネコたちに声をかけていました。
見よ、神の幕屋が人と共にあり、神が人と共に住み、人は神の民となり、
神自ら人と共にいまして、人の目から涙をぬぐいとってくださる。
もはや、死もなく、悲しみも、叫びも、痛みもない
先のものが、すでに過ぎ去ったからである。Bible