今日は、
残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
イ 日本アルカテルの給与規程の規定
原告に適用される(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)日本アルカテルの給与規程(以下「本件給与規程」といい,本件就業規則と併せて「本件就業規則等」という。)には,以下の規定がある(〈証拠略〉)。
「第4条 給与の構成
1 給与の構成は次のとおりとする。
(a)基本給
(b)スタンドバイ手当(適用となる場合のみ)
(c)通勤手当
(d)割増賃金(時間外勤務(残業)手当(残業代)/休日勤務手当/深夜勤務手当,適用となる場合のみ)
(e)季節賞与
(f)インセンティブ・ボーナス(適用となる場合のみ)」
「第6条 給与の計算期間,支払日
1 給与の計算期間は,当暦月の1日から末日とする。
2 給与は当月の25日に支払う。ただし,時間外勤務(残業)手当(残業代)および深夜勤務手当は翌月の支給日に支給する。
3(略)」
「第12条 時間外勤務(残業)手当(残業代)/休日勤務手当/深夜勤務手当
1 支給対象社員が,所属長から事前の命令または許可を受けて,所定労働時間外・・・および深夜(午後10時より午前5時までの間)に勤務した場合は,時間外勤務(残業)手当(残業代)・・・および深夜勤務手当を支給する。
2 各手当の支給額は次のとおり算出する。
(a)時間外勤務(残業)手当(残業代)(所定就業日に時間外勤務(残業)した場合)
時間単価×1.35×時間外勤務(残業)時間数
(b)(略)
(c)深夜勤務手当(午後10時より午前5時までの間に勤務した場合)
時間単価×0.25×深夜勤務時間数
深夜勤務が時間外勤務(残業)・・・と重複する場合は,深夜勤務手当を上記に定める時間外勤務(残業)手当(残業代)・・・に加算して支給する。
3 前項の計算の基礎となる1時間当たりの給与額(時間単価)は次の算式による。
(月額基本給+スタンドバイ手当)÷月平均所定労働時間
4 時間外勤務(残業),休日勤務,深夜勤務は30分を計算単位とする。」
(4)原告の労働時間等
ア 原告の平成18年7月から平成19年6月までの労働時間
原告の平成18年7月から平成19年6月までの日本アルカテル又は被告における就労の状況,すなわち,各就業日の出勤時刻,退社時刻,休憩時間,これらを前提とした労働時間は,別紙勤務状況一覧表の「出勤時刻」,「退社時刻」,「休憩」,「労働時間」欄記載のとおりである(〈証拠略〉)。
また,上記期間の各就業日の労働時間のうち1日の所定労働時間(7.5時間)を超える時間数の各月の合計は,以下のとおりとなる。
平成18年7月 27時間30分
同年8月 56時間
同年9月 60時間
同年10月 14時間30分
同年11月 22時間30分
同年12月 20時間
平成19年1月 10時間
同年2月 25時間
同年3月 45時間30分(午後10時以降の深夜勤務である6時間30分を含む。)
同年4月 35時間
同年5月 40時間
同年6月 38時間30分
イ 原告の月平均所定労働時間数
原告の平成18年の日本アルカテルにおける所定休日は123日,平成19年の日本アルカテル又は被告における所定休日は120日である(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)。したがって,原告の平成18年及び平成19年の月平均所定労働時間数は,以下のとおりとなる。
平成18年 (365-123)×7.5÷12=151.25(時間)
平成19年 (365-120)×7.5÷12=153.125(時間)
(5)原告の退職
ア 被告からの退職勧奨と退職に至る経緯
原告は,平成19年7月13日,B氏から,会社支援プログラム(CSP)の提案と被告からの退職の勧奨をされ,当初,これに応じなかったが,B氏及びC氏との数度の話合いを経て,同月25日,退職勧奨に応じて被告を退職することに同意し,会社支援プログラム(CSP)合意書(以下「本件合意書」といい,これによる退職の合意を「本件退職合意」という。)に署名した。(〈証拠略〉)
イ 本件合意書の内容
平成19年7月25日に原告が署名し,作成された本件合意書には,以下の記載がある(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)。
(ア)前文
被告による平成19年7月13日付けの会社支援プログラム(CSP)の提案に基づいて,本合意書によって,原告はCSPの適用を申請するものとし,被告はかかる申請を受諾することに同意する。そこで,原告は,被告との合意により,被告との間の雇用契約を終了させることとする。
両当事者は,ここに以下のとおり合意する。
(イ)第1条:退職
原告と被告は,本合意書に記載の事項が,平成19年10月31日付けの雇用契約の終了に関する原告と被告との間の友好的かつ最終的な解決の内容であることを確認する。
(ウ)第2条:転職活動のための休暇
被告外で転職活動を終日行うことを可能にするため,被告は,平成19年8月1日から10月31日までの3か月間,転職活動のための有給休暇を与える。この期間中,原告は被告の従業員としての地位を保持し続けるとともに,被告は原告が出社することなく転職活動に専念することを認める。
(エ)第3条:退職金
1 CSPにおいてオファーされているとおり,原告に対し,特別退職金として661万4144円が支払われるものとする。退職加算金は退職日から30日以内に一括して支払われるものとする。
2 賃金と適切な季節賞与は退職日まで支払われ続けるものとする。
3(略)
(オ)第6条:放棄及び誓約
1 原告は,本合意に基づく支払及び調整を約因として,(制定法,契約,コモンローその他に準拠しているものかどうかを問わず)雇用契約及び退職に関し,被告及びアルカテル・グループ並びにその従業員,取締役,役員,代理人,関連会社及び日本又は世界のいずれかに存する関係会社及び団体に対して有する又は有している可能性がある,過去,現在,又は未来の,全ての責任,義務,債務,支払われるべき金員(原告が支払われるべきだと主張している給与を含むが,これに限定されず,広く支払われるべきものを含む。),請求権,訴訟原因(法律上の根拠を有するものであると否とを問わず,かつ,不払いとなっている報酬,年次休暇,解雇予告手当,退職金その他あらゆる種類の手当の請求権を含むが,それらに限定されない。)及びこれらから派生する全てのクレーム,訴訟,請求原因,負債,損害賠償,費用を放棄し,取り止めることに同意する。
2~4(略)
(カ)第10条:アウトプレースメント・サービス
被告は,原告に対し,無償で,原告が転職先を確保するまで,少なくとも6か月間,被告の指定する業者のアウトプレースメント・サービスを提供することを合意する。
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