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Four Season Colors

現代詩と映画、読書、ゲーム、スポーツなど雑文を掲載
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ツキイチ映画館(2023年12月)

2023-12-11 | 雑文
月に一度は、映画館で新作を。2023年の
12月は、「ナポレオン」(アメリカ/イギ
リス)。

予告編が面白そうだったことと、映画「ジョ
ーカー」の主演のホアキン・フェニックスに
引きずられてチョイス。

フランス皇帝ナポレオンの台頭から、(命と
いう意味の)最後までを完全にナポレオンを
軸に追うというストーリー。

さて、まず最初にお断りすると、素人の自分
には本作で良かったという点が見当たらなか
ったため、以下、偉そうに不満を述べる。

とりあえず、主役のナポレオン(とついでに
脇役たちももれなく)に致命的に魅力がない。

おそらく、近年というか、現代流行の人間ら
しさ、人間クサさのようなものを狙ったのだ
ろうけれど、結果、単に魅力がない。

ジョーカーの時は、真逆に魅力しかなかった
のだから、やはり作品が俳優さんを生かしも
殺しもするということを、あらめて。

そして、予告編で前面に出していた戦場のシ
ーンが、これまた全然、まったく、びっくり
するくらいに、とっても退屈。

中世ヨーロッパの、大人数の部隊が地上で入
り乱れて戦う、この手の映画では見慣れた、
テンプレートのシーンではある。

しかし、だからこそ、最低限の見ごたえとい
うか、熱というか、冷たさというかがあるは
ずなのに。

最近に観た同系統として、「シラノ」の戦い
のシーンを想起したが、まあ、シラノの方が
断然に、圧倒的によかった。

メインの売りじゃない(というと失礼か)映
画のそれ以下なのは、指揮官のみにフォーカ
スをし過ぎているそれかもしれない。

名前はなくとも、数人の一般の兵士にフォー
カスする、台詞を与えることは、大事な点な
のかも。

そもそも、よくある予告編サギで、戦争のシ
ーンはおまけで、ヒューマンドラマ系なのだ
けれど、メインにも心は動かず。

ナポレオンという人物の深掘りにも明らかに
失敗しているし、お金がかかっているのだろ
うな、ということくらいの感想に。

中世ヨーロッパの歴史系がなにより好きで、
それであればいい!という方以外には、おス
スメはしない。

なみだのはじまり

2023-12-07 | 
なみだのはじまりが

なまみのからだへの

いたみにあるのなら

さよならのなみだは

あしたのかなしみを

こころがしったとき

はじめてこぼれおち

はじまりはおそらく

しではなくたびだち

いきるためのなみだ

読書のよもやま(2023.12.04)

2023-12-04 | 雑文
「トヨタ物語」野地秩嘉(新潮文庫)

この齢(中年)になると、青年期のように読
んでいない著書を見つけ、そこまでわくわく
するというような著者は少ない。

そんな中で、本書の著者である野地さんにつ
いては、本屋で未読のものを見つけると、お
っ、となる著者の一人である。

ノンフィクションであることに間違いはない
が、著者の作品のジャンルは、とても良質な
ルポルタージュだと思っている。

ストーリーのある物語というよりは、事象に
対する人物を書いており、とても魅力的にそ
れぞれの人物を描写する。

本書は、トヨタ生産方式という、言葉は多く
の人が聞いたことがあるだろうが、その実は
なんぞやということに軸を置いている。

そして、その実態を説明しつつ、トヨタとい
う会社が、トヨタ生産方式とともにどう成長
したかを、人物から追う。

誰が、どうしたかを単に記すのではなく、丹
念な取材から、その思想や過去をしっかりと
整理し、事象を一つ一つ明らかにする。

対象とする題材に要因もあろうが、少なくと
も自分が読んでいる著者の作品では、人物を
悪く書いているものを読んだ記憶がない。

とはいえ、必要以上に人物を褒めたたえ、本
書でいえば「豊田家」だけを、それも教祖の
ように持ち上げることもない。

著者の書く豊田家と周辺主要人物の人物像が
完全に正しく、マイナスなどなかったなどと
言うつもりはない。

事象に対する取材で分かった事実を、要因だ
けを、恣意なくナチュラルに、しかし好意的
に書く。

人物そのものをテーマとしたノンフィクショ
ンでは、そうはいかない。

著者の対象は、あくまでも事象であり、事象
に対する人物を、事象についてのみ追うが、
決してただの記録には終わらない。

トヨタという大企業の、世界に誇る生産方式
を、言葉上で機械的に(しかも間違って)理
解するのではなく、正しく理解する。

それも人物を絡めて、しかも魅力的に面白く
読めるのだから、これはおススメ。