Four Season Colors

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読書のよもやま(2023.05.01)

2023-05-01 | 雑文
「獣医師、アフリカの水をのむ」竹田津 実
(集英社文庫)

本を読む時間を限っている(限られている、
ではなくて)わりに、最近は時間のかかる本
が少ないせいか、ペースが早い。

本書も、著者のアフリカの旅を振り返ったエ
ッセイであり、読みやすい文体もあわせて、
サクサク読み終わる。

北海道で獣医師として働いていて、キタキツ
ネなどの研究家であり、アフリカにも魅了さ
れたという盛り沢山な属性の著者。

視聴率44.7%だったらしい「キタキツネ
物語」の企画・動物監督とのことであるが、
そこは、残念ながら世代ではなく。

本書は北海道での活動のことはなく、そのす
べてが過去数十年にわたるアフリカでの旅の
あれこれ。

内容は特にテーマなどはなく、本当に旅を、
取り留めもなく綴り始めて、綴り終えている。

1976年から2000年代までと幅広いア
フリカを描写しているのだが、その根本は変
わらないように読める。

現実には変わらないわけはなく、事実、動物
の頭数やヒトと動物の環境の変化はもちろん
言及もされている。

この本に書かれるアフリカは、環境が変わっ
ても、その地域における特性、性質、本質は
変わらない、もしくは変化が緩やかである。

そうしたものが容易く、そして躊躇いなく、
感染するように変化する地域に生きている者
として。

年を重ねて、最近とみについていけなくなっ
てきている自分にとっては、それがとても眩
しく、魅力に満ちて見えてしまう。

ついていけないことは、この地域で生きるの
であれば、決してよいことではないのだが、
抗うようなことでもなく。

こうした自然系の本を読むことの、今の自分
のメリットは、憧憬とともに、変わらない本
質の正義を確かめることができること。

自然や動物を守るべきだとか、変化させるべ
きではないだとか、そのような本ではない。

ただただ、アフリカの魅力に毒され、アフリ
カに赴き、著者から見たアフリカが、そこに
は書かれている。

写真エッセイであるからして、何を感じ、何
を受け取るかは、読み手の自由であり、この
本の自由の幅は、とても大きい。


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