坂内食堂

さて、今回のエントリが、ブログ化が決定して以降の最初のレポートになる。そこで今回あらためて我がラーメン店調査レポートを読み直してみた。が、当然掲載されていてしかるべき有名店を掲載していなかったり、逆に、相当マニアックな店を掲載していたりして、いたくバランスが悪い。そのバランスの悪さには我ながら大いに驚き、それと同時に猛省を促されているところである。

よってこれからは、たとえ直近に訪れた店でなくとも「これは、確実に紹介すべき有名店である」と思われる店については、可能な限り紹介していきたいと考えている。ということで、そのような自戒の意も込めて、ここで喜多方の「坂内食堂」を紹介しておきたい。

「喜多方ラーメン坂内」と言えば、その系列店である「」も含めれば、東京都内だけでも３０店舗弱の店舗数を誇る、チェーン店の代表格のようなイメージが強いし、実際そのとおりである。おそらくチェーン化の推進具合から言えば、比較的マトモな味がするラーメン屋の中では、「天下一品」と双璧をなす店ではなかろうか。博多系の「一風堂」や札幌の「すみれ」なども、最近になって、急速にチェーン化を推進しているように思われるが、それらの比ではない。多少なりともラーメンが好きな人間であれば、おそらく、どこかで「坂内」のラーメンを一度は口にしたことがあるのではないか。そして、食後のイメージは、おしなべて、チャーシューだけはそれなりに美味い店だったなぁといったところではないかと推測するが、いかがだろう。

今回紹介するのは、その「坂内」の本店である「坂内食堂」であるが、「坂内」ほど、本店である「坂内食堂」とそれ以外の支店、系列店等との味のレベルに差がある店も珍しく、まるで別のラーメンと言い切っても過言ではないほどである。もちろんこの私もすべての「坂内」の系列店を回ったわけではないので、もしかすると本店と同水準のラーメンを提供する系列店が存在する可能性はある。だが、少なくとも私が食べたいくつかの支店のラーメンについては、本店のそれとは似ても似つかぬ代物であった。

そろそろ本論に移ろう。端的に申し上げれば本店のラーメンはかなり美味い。まずスープであるが、醤油味を基本とする多くの喜多方ラーメンの中では異色とも言うべき塩と醤油の中間、どちらかと言えば塩味に近い風味であり、スープの色合いは無色透明に近い。恥ずかしながら、数多くのラーメンを食したこの私でさえ、結局、あのスープが塩味なのか醤油味なのかについて、最後まで判断することができなかったことをここに告白しておこう。それはさておき、本店のスープには、都内の幾つかの支店や系列店のような嫌な雑味は一切なく、飲み心地は峻烈清廉であり、食後感も極めて良好である。

また、平太の麺も、都内の喜多方ラーメン店にありがちな「茹で過ぎによる延びすぎ」や「かん水臭さ」などの失敗が一切ない優秀作。しかも、麺にウェーブがかかっているので、スープの持ち上げも絶妙であり、スープと麺とが渾然一体となった感覚をリアルに体験できる貴重な一杯だ。

具の肉（チャーシュー）については、そもそも、喜多方ラーメンは肉の美味さには定評があり、坂内食堂のそれも、その期待を裏切らない佳作。

評価は、麺：１１点、スープ：１６点、具：４点、バランス：９点、将来性：７点の合計４７点と、かなりの高得点を差し上げることができる。

地方の御当地ラーメンの中ではトップクラスの美味さ。なお「坂内食堂」のスープは、喜多方ラーメンの中でも相当にあっさり系の部類に属するため、ラーメンを食べ慣れていない者であっても、比較的容易に完食できるのではないかと思う。

喜多方に立ち寄った際には、必ず、押さえておきたい店である。喜多方来訪初回であり、ラーメンを連食したいと思っている人は、まずはじめに「坂内食堂」を訪れ、二軒目に、「まこと食堂」、「源来軒」、「大安食堂」のいずれかを訪れてみてはいかがだろうか。

なお、緑色で「ばんない」と大書された大きな看板と客の行列が目印となるので、遠くからでも店の在り処を見つけるのは、大まかな場所さえわかっていれば、そう難しくないであろう。


所在地：福島県喜多方市
最終実食日：０４年１０月