はい。こちら農水省製麺局ラーメン課

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揚子江本店

2005-07-30 23:09:32 | ラーメン店調査 (31~35点)
大阪のラーメンシーンを代表するラーメン店。JR大阪駅又は阪急、阪神梅田駅からのアクセスは良いのだが、いかんせん、わかりにくい路地裏に店舗を構えており土地勘がない者にとってはおそらくかなり辛い立地条件であろう。神戸で生まれ育ち大阪を遊び場とする青年期を過ごした私であっても全く迷うことなく店にまで辿り着くことは難しい。

店の外観は、お世辞にも最近主流となっている子洒落たものであるとは言えず、どちらかと言えば数十年前の大衆食堂を彷彿とさせるような店構え。とは言っても、最近の流行のひとつである敢えてレトロな装飾を施したものとも全く異なる。ちょっと言葉では表現しにくいのであるが、ラーメンが大
衆に普及し始めた当時に出来たラーメン屋の外観がそのまま何の変更も加えられることなく残っているという感じか。個人的な感想になってしまうので恐縮なのであるが、いかにも大衆の街、食の街大阪に相応しい店構えだと思う。ただし首都圏の最近のラーメン屋に慣れ親しんだ者にとっては入店するだけでもなかなかの勇気が必要とされるような店構えである。

かく言う私もその例には漏れず、店の前で「入ろうかどうしようか」と相当迷ったことをここで告白しておこう。都合の良いことにちょうど揚子江本店の斜め前の店が大行列を作っていたので、そちらに入ろうかとも思ったくらいである。しかし、間もなくその大行列の主が「一風堂」であることが判明し、「選択の余地なく」揚子江本店の暖簾を潜った次第なのであった。まさか、わざわざ関西にまで来ているのに「一風堂」でお茶を濁すわけにもいかないだろう。

暖簾を潜って初めて見た店内の光景は、これまでに訪問したいかなるラーメン屋とも異なるこれまた「大衆食堂然」としたもの。予想よりも遙かに広い店内スペースは不思議とラーメンを作っている店のような雰囲気がいささかも感じられず、あたかも異空間に迷い込んでしまったかの如き錯覚に陥ってしまう。

とりあえず、いかにも長年この店に心骨を捧げてきましたよといった感じの人の良さそうなスタッフのお祖母さんに「ワンタンメン」をオーダーしたが、そのメニューが出てきた瞬間に私が入店した時から感じていた違和感の理由のひとつが判ったような気がしたのであった。すなわち、ラーメンがあまりにもアッサリしすぎているがために丼から全くラーメンの匂いが漂ってこないのだ。もちろん、厨房からもラーメンの匂いは立ち上らない。店内全体が完全に無臭なのだ。

もちろんそのような感じであるから、スープもよくよく吟味すれば塩らーめんなのかなといった感じはするが、慎重に吟味しなければそれすらも判らないような「風が吹けば倒れてしまい」そうな繊細な味付け。

そのスープに合わせられる麺はビジュアル、テイストともにまるで素麺のような代物であり、もはやこれはラーメンというよりも新手の素麺とでも言った方が適切なのではないかと声を大にして主張したいような状況なのであった。

が、これが結構美味い。旨いとはいってもそれ程メチャクチャ旨いわけではないが、「リピートなどは有り得ない」と断言できるような悲惨な代物では決してない。欲を言えば、麺がもう少し硬く、芯をしっかり残して茹で上げられていればベターなのに、といったところ。

ちなみに、この店には無料のトッピングとして卓上に「揚げネギ」が据え置かれているのであるが、スープにこの揚げネギを投入すれば間違いなくスープのレベルが飛躍的にアップする。御丁寧にも「スプーン一杯以上の揚げネギを加えるのは健康に良くないので止めましょう」という注意書きが書かれてあるのだが、個人的な感想を申し上げれば、加えれば加えるほどスープの旨さはアップすると思った。ひょっとして私は味音痴なのか。いやいや。ラーメン課長としての自分の首を絞めるような発言は慎んでおこう。

具は問題なく凡庸であると言い切ってしまっても差し支えない。

好みによって評価がまっぷたつに分かれそうな揚子江本店のラーメンであるが、私は麺:8点、スープ:12点、具:2点、バランス:7点、将来性:6点の合計35点と程々の評価を与えておきたい。

ただし、上記の評価が「揚子江」の実力をそのまま端的に表現できているとも思えないのは、おそらくこの店のラーメンには上記の要素では表現することができない「独特の旨さ」があるからなのかも知れない。麺、スープ、具、バランスともに決してレベルが高いわけではないのにもかかわらずなぜか旨いのだ。評価は35点になったが、旨さはこの得点エリアにある他のラーメン屋よりは間違いなく上であろう。とにかく不思議なラーメン屋である。


所在地:大阪市北区梅田
実食日:2004年2月

採点方法について
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麺屋桜蘭

2005-07-30 23:08:36 | ラーメン店調査 (46~50点)
大阪駅前第2ビルの地下というお世辞にも旨いラーメン屋などなさそうな場所にこれほどクオリティの高いラーメンを作る店があるとは誰が想像できるだろうか。

私もとある京阪神関係のラーメン本を見てこの店を訪れたのであるが、実際にこの店の中に入るまでは、半信半疑なところもあった。だってそうだろう。単なる駅ビルのラーメン屋が関西屈指、いや、首都圏に出店したとしてもそこそこの店とは互角以上に渡り合える名店であるとは俄には考えがたいところがある。

しかし、この店に一歩足を踏み入れた瞬間、ああ、この店はただ者ではないなと直感したのだった。店内一面には魚貝類の芳香が漂っており、一瞬「私は首都圏にいるのだろうか」という錯覚すら抱かされる。関西のラーメン屋ではまだまだ滅多にお目にかかれない香りだ。

この店は醤油、塩、つけの3種類のラーメンを作る。中でも醤油は「あっさり」と「濃いくち」の2種類を用意しており客を迎え撃つ態勢も万全だ。休日の16時前の来訪でカウンター12席に先客が6名。彼らがどこから情報を仕入れているのかはわからないが、こんな的外れな時間にここまで多くの客が来ていることにも驚いた。もしかするとランチタイム時やディナータイム時に当たれば行列は必至なのかも知れない。

私は醤油の濃いくちにしようかとも迷ったが、「柚子塩ラー麺」を味玉入りでオーダーした。周囲の客の注文状況を見れば、つけ麺2人、醤油濃いくち3人、醤油あっさりが1人といったところ。塩らーめんをオーダーしているのは私だけであったが、まぁいい。ラーメンのスープの水準が一番よく判るのは塩らーめんなのだから。

店内に掲げられている蘊蓄書きによれば「鹿児島産茶美豚、名古屋コーチン、羅臼産昆布、山口産煮干、高知産鰹節、鯖、ムロブシ等を別々に取りブレンド」したスープを用いているようだ。いわゆる「Wスープ」である。首都圏では当たり前の手法となっている「Wスープ」も、まだまだ関西では珍しい。これに加えて、塩らーめんには更なるこだわりを持っており、「沖縄とブルターニュと広州」の3種類の塩をブレンドした塩ダレを用いているようだ。それぞれの塩にどのような特徴や違いがあるのかはよく判らないが、とにかく尋常ならざる味へのこだわりを持っていることだけは確かだ。

一口スープを啜ってみる。うん、旨い。首都圏の塩らーめんの味だ。無理にスープを啜るのではなく食べ進めていく内に自然とスープの量が減っていき、最後には丼が空になっているという感じ。ジャンルとしては「塩魚介」に属するものであるとは思うが、関西人の味覚に合わせたのかそれ程魚貝類の癖も強くは押し出しておらず、ほのかな甘みを含んだ塩ダレの豊潤な風味が口内を優しく軽やかに刺激する。アクセントとして「隠しアイテム」的に用いられている柚子との相性も頗る良い。

スープに合わせている麺も芯がしっかり通った細めのストレート麺であり水準が高い。このようなスープには通常、スープとの絡みを考えて縮れ麺を合わせるのがセオリーであるが、敢えてストレート麺を用いているところも面白い。確信犯なのだろうか。

具として大ぶりの肩ロースチャーシューが載るが、これも口の中でトロリととろける秀逸さであり、味付玉子ももちろん主流の半熟温泉玉子。

麺:11点、スープ:15点、具:4点、バランス:8点、将来性:8点の合計46点は関西のラーメンのスタンダードを大きく凌駕している。

唯一、難があるとすれば、スープの味わいがやや大造りであり繊細さに欠けるような気がする点だが、これは首都圏のトップクラスと比較した場合にそのように感じる程度のものであり、京阪神のラーメンシーンの現状にかんがみれば、現状維持のままでも全く問題ないものと思われる。

なお、この店は関西ではまだ珍しい「つけ麺」も提供しており、しかも、スープ割りまでできることに大きな特徴がある。私の隣の若い女性はおそらく初めて体験したであろう「スープ割り」に目を丸くしつつも「美味しい、美味しい」と連呼していた。このような新鮮なシーンにお目にかかることができるのも関西ならではである。これらの店が新しいラーメンの食べ方を関西のラーメン・ファンに伝道し、関西ラーメン・シーンの向上に一役買ってくれることを願って止まない。


所在地:大阪市北区梅田
実食日:2004年3月

採点方法について
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芦屋ぎんなん本店

2005-07-03 22:38:42 | ラーメン店調査 (41~45点)
芦屋に居を構えるコッテリギタギタ系のラーメンが好きな親友N。彼の新しいラーメン・ローテーションに加わりうるか否かを確かめるために食べに行った店。

場所はJR芦屋駅の南口を出てすぐのところにある道を左折。そのまま1分ほど歩いていけば辿り着くことができる。駅からのアクセスは極めて良く距離的には国道2号線沿いにある「芦屋ラーメン庵」「ふうりん」「日の丸軒」「もっこす」「山頭火」などよりも近い。

私はこの店の存在を兵庫県のラーメン屋が50店舗ほど紹介されているラーメン本を読んで初めて知ったのであるが、その本によれば「場所柄、近くのホテル(竹園ホテルのことであろう)に宿泊するプロ野球選手なども頻繁に来訪する」などと書かれていた。どうやら元々は餃子専門店として芦屋界隈では有名な店だったらしく、今でも餃子をメインとして売り出しているらしいのだが、牛のテールを使って作った「テールラーメン」が評判となったためラーメンも食べさせてくれるようだ。

では「看板として掲げている『餃子専門店』とは一体どういうことなのだ。矛盾ではないか」と言いたくなってくるが、それは大目に見るとしよう。

私は休日の開店時間早々にこの店を訪問したが、開店10分後の11時40分現在においても先客はなし。店主らしき人物とスタッフらしき人物が和やかに世間話に花を咲かせており至極和やかな雰囲気であった。その後私は食事を食べ終わるまで20分間くらい店に滞在していたが、その間も来客は女性1名とテイクアウトの餃子を買い求めに来た女性1名の合計2名のみ。前日に訪れた「洛二神」(開店10分前で既に30人待ち)とは打って変わってのんびりとした状況であった。店内には阪神タイガースの藤本選手のサイン色紙などが飾られてあり、なるほど、噂どおりスポーツ選手も大勢食べに来ているようだ。

名物であるテールラーメンと焼き餃子(7個入り)をオーダーする。ちなみに餃子のバリエーションは極めて豊富で、基本である焼き餃子のほか、エビ餃子、水餃子、しそ餃子、チーズ餃子、焼豚入り餃子などもあり毎日食べたとしても品目さえ工夫すれば飽きることはなさそうなほどだ。

ラーメンのスープにも「しょうゆ」「白湯」の2種類のバリエーションが存在するが、醤油の方がデフォルトっぽかった(「ぽかった」ってそんなことでいいのか、ラーメン課長よ!)ので醤油スープでオーダーした。ちなみに麺も細麺と平麺の2種類からチョイスすることが可能であるが、デフォルトは細麺。というわけで麺は細麺をオーダーする。

しばらく経って出てきたラーメンは、想像よりも小振りな器にニンジンや大根椎茸などの具が入ったけんちん汁のような趣のスープが湛えられ、そのスープの中を中細縮れ麺が泳いでいるという今まであまり見たことがない珍しいもの。

この未知のスタイル、そして餃子専門店であるという事情から考えれば「これはかなりのトンでもラーメンなのではないか」と私は怖れをなしたのであるが、まぁ恐れてばかりいても仕方がない。「えい、ままよ」とばかりにレンゲにスープを掬い、舌の感覚器官を総動員しつつ丹念にスープの味を分析した。

「ん?旨いではないか」。牛テールと野菜と鶏ガラから滲み出た成分がスープに甘みを与えているが、この甘みがしみじみと素朴であり、確かに首都圏で主流となっているような複雑な味わいこそないが、これはこれで旨い。何だか昔に戻ったような懐かしい気持ちになってしまった。悪い言葉で言うならば、焼肉屋でサイドメニューとして出てくるラーメンのような感じもするが、そのようなことを気にしなければかなり美味いスープと判断しても差し支えないと思う。

中細縮れ麺の方も、終始他愛のない世間話に花を咲かせていたスタッフが作ったとも思われないような、なかなか見事な出来映え。柔らかくふやけてブヨブヨになっているわけでも硬すぎてゴワゴワになっているわけでもなく、やや硬めのちょうど良い案配でありスープの持ち上げも良い。スルスルと胃の中に収まってゆく。具のトロトロになるまで煮込まれた牛テールの出来映えも上々である。

評価としては麺:10点、スープ:14点、具:4点、バランス:7点、将来性:6点の合計41点と事前の予想を大幅に超える出来映え。

ガツンとしたコッテリ味のスープでもないので親友Nの好みではないかも知れないが、牛という素材の妙味を十分に堪能することができる良店だ。なお、餃子は味噌ダレを浸けて食べるという変わったスタイルであるが、そちらは少々どころか非常に旨いのでお勧めである。


所在地:兵庫県芦屋市
大阪府高槻市に支店あり
実食日:2004年2月

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