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天下一品

2005-05-07 10:32:36 | ラーメン店調査 (31~35点)
14~5年前、「天下一品」が現在のような状況になることを一体誰が予想し得たであろうか。当時私が高校生だった頃は、京都においても北白川の本店の他には数店舗しか存在しておらず、首都圏に進出している店舗もわずか3軒程度(池尻大橋、江古田、高田馬場)のものであった。

ところが、それから数年の間に急速にチェーン店舗を増やし、2004年1月現在、一体何店舗あるのだ。「天下一品」の公式サイトの情報によれば、首都圏を含む関東地方だけでも38軒あるらしい。これを多いと見るか、案外思っていたよりも少ないと見るかは人によるとは思うが、とにかくもはや「天下一品」はロイヤルホストやデニーズのようなファミレスに近いラーメン屋と位置付けて差し支えないと思う。

東京在住で、ラーメンを殆ど食べない女のコでも、「天下一品」のラーメンを1度や2度は食べたことがあるだろう。ラーメン・フリークなどの中にはもはや「天下一品」を「まともなラーメン屋」として認知していない人もいるかも知れない。ただ、我がラーメン課ではこのような店のラーメンをも真剣に評価することを旨としている。さっそく評価に移ろう。

「天下一品」の大抵の店においてはスープは工場から運ばれてきたものをただ温めるだけといった仕組みをとっている。つまり「天下一品」のラーメンは、店舗で販売されている「おみやげ」を持ち帰りさえすれば家庭でも、極端な話、火の使い方さえ知っていれば幼稚園児であっても店で食べるのとほぼ同様のラーメンを食べることができるのだ。アウストラロピテクスならば作ることができないが、北京原人であれば作ることができるというわけだ。

このような姿勢がそもそもラーメン屋としては笑止千万だというコメントは勿論あるだろう。ところがスープの味そのものは、この怠慢な姿勢に対するラーメン・フリークからの批判を嘲笑うかのように良いのである。特に「こってり」は、その持ち味である野菜と鶏を煮込んだ濃厚かつ粘性の高いスープが好評を博し、熱烈なファンも全国各地にたくさん存在している。

「こってり」については、それにまつわる論争も多い。例えば京都の北白川本店が最も粘性が高くドロドロしており、もはや液体というよりはゲル状に近いという見解があり、この見解は未だに一部の人間からは熱烈な支持を受けている。北白川本店に次いで銀閣寺店、次いで四条店などの京都市内の「天下一品」のスープが濃厚で、関東など首都圏のそれは水に近いなどという京都人の関東人に対するプライドが介在しているとしか思われないような見解もある。

私は北白川の本店にも行ったことがあるし、銀閣寺店などでは数え切れないほどの「こってり」を食べた。東京でも、特に江古田店などには非常に頻繁にお世話になったものである。それを踏まえた上で個人的な見解を言わせてもらえれば、どの店もスープの濃度に有意差があるとまでは考えられない。そして、そのことがとりわけ「天下一品」にとって重要な事項であるとも思われない。もちろん食べる側にとっても。

より問題なのは、麺の質が悪いのではないかということである。スープも工場で造られるのであれば、麺も工場で造られるはずである。「天下一品」についてはたまたまそのようなシステムにおいてもスープ造りはそこそこの成功を収めたが、麺を「作り置きを前提としてつくる」ことは、ある一点において致命的な欠陥を招来することになる。すなわち、長時間の保存に耐えられるよう、かん水を大量に使うがために麺がかん水臭くなってしまうのだ。この麺のかん水臭さは、一度意識してしまうと非常に鼻につくものである。「天下一品」の場合、スープの旨味や独特の風味に意識が逸らされがちであるが、実は麺をそのままスープを絡めずに食べると相当に不味いはずだ。

「天下一品」を頻繁に用いる人間は、2004年現在においては、ラーメン・フリークではない普通のラーメン好きである場合が多い。初めてインスタント以外のラーメンを食べる女のコが最初に食べた本格(?)ラーメン屋のラーメン、それが「天下一品」だったという場合も多いだろう。あえて誤解を恐れずに言えば、そのような人たちが「天下一品」を支えているからこそ、麺のかん水臭さがそれ程取り沙汰されずに済んでいるわけだ。

具についても、「少なくともFC以外の店舗ではそれぞれ独自の具材を用意している」という説や「すべて同一である」という説などの諸説が入り乱れているが、いずれにせよチャーシューは不味く、メンマなどそれ以外の具についてもとりたてて見るべきものは全くないことだけはほぼ間違いない。

平均的な店の平均的な出来の「コッテリ」で評価すれば、麺:7点、スープ:13点、具:2点、バランス:8点、将来性:3点の計33点程度か。

「天下一品」のラーメンが今後、何らかの劇的な変化を遂げることは考えがたいため、将来性は特に低めにした。麺は15点満点の半分は与えられない。スープは20点満点の6割5分は与えてもよいだろう。具は不味いので2点でよい。チャーシューメンを頼む必要はないということだ。麺そのものは決して旨くないが、スープとの絡みが結構良好であり、より良い麺の投入は考えられるものの「中細縮れ麺」という「使う麺の形態」そのものについての判断は間違えていないと思う。よってバランスについてはかなり高めの得点である8点を与えた。将来性については、とりあえず今現在のラーメンの味に影響を与える要素ではないため、将来性を除外して考えれば、「天下一品」のレベルは首都圏の2線級よりは下だが、例えば京阪神においてであれば、意外にも結構善戦するということになる。少なくとも「神座」よりは旨いのだから。


所在地:京都市左京区
全国各地に支店あり
実食日:04年1月

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