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なんつッ亭 弐

2005-05-13 03:25:34 | ラーメン店調査 (51~55点)
近年の、とりわけ、ここ数年間におけるラーメン業界は栄枯盛衰が著しい。2003年12月に一大人口集積地である渋谷の千歳会館に鳴り物入りでオープンしたフードテーマパーク「麺喰王国」の人気が蓋を開けてみれば芳しくなく、先日早々に閉鎖の憂き目に遭った一方で、新店やフードテーマパークが、東京都内はもちろんのこと、各地方においても続々と産声を上げている状況にある。

特に全国各地における有力ラーメン店を一堂に集めたラーメン・フードテーマパークは百花繚乱の状況を呈しており、もはやどこにどのようなテーマパークがあるのかを把握することすら、困難な状態となっている。率直に申し上げて、私などは、このようなテーマパークの濫立について、食傷気味の感すら抱いているところである。

そのような状況下において他の凡百のテーマパークとは一味違ったテーマパーク、「麺達七人衆 品達」が、品川に登場した。何が一味違うのかと言えば、まずは出店している店舗が個性派ぞろいであることが挙げられる。

通常この手のテーマパークには、いわゆる功を成し名を遂げた有名店の支店が誘致されるケースが多い。これはスポンサーとしてテーマパークに出資する企業の立場からすれば仕方ないことではある。しかしながら、そのような店はチェーン化が進んでいることがままあるため、別に、わざわざテーマパークに足を運んでまでその店を訪問しなければならない必然性がない。そのため、誠に遺憾ながら、フリークにとっては価値が低いものであることが多いのである。また同様の理由から、成長期を終えて安定期に入った店なども多く、そのような店のラーメンは、これもまた誠に遺憾ながら、あまり美味くない場合が多い。

ところが、「麺達七人衆 品達」は、そのような誘致方法を採っていない。たとえば、名店の誉れ高い店であるが、それまで支店も出したことがなく、しかも立地上極めて不便な場所にあったためにその店を訪問するだけで丸一日が潰れてしまうというような店や、有名店ではあるが、コンセプト・チェンジしており「麺達七人衆 品達」でなければ食することができないような店、を誘致しているのである。

またこのテーマパークのもうひとつの特色として、各店舗間のバランスにこだわらず、誘致したい店を誘致するという方式を採用しているところが挙げられよう。熊本ラーメンの店の隣に同じく熊本ラーメンの店をぶつけるなど、これまでのテーマパークの常識から言えば滅茶苦茶なことをしているのである。テーマパークを構成する数店舗のうち、2軒が熊本ラーメンなどということはこれまであり得ないことであった。

そのような他のテーマパークとは一味違った「麺達七人衆 品達」の店舗構成を具体的に紹介すると、2005年5月現在、「なんつッ亭 弐」「ひごもんず」「せたが屋雲」「きび」「旭川ラーメンSaijo」「麺屋蔵六」「くじら軒」の7軒。最近、数店舗をテーマパークに進出させている「くじら軒」を除けば、なかなかユニークな組合せである。

と、「麺達七人衆 品達」の紹介が長くなってしまった。そろそろ本論に入ろう。

その中でもダントツの集客力を誇るのが「なんつッ亭 弐」である。大袈裟ではなく、文字どおりのダントツの一番人気店であり、他店との集客力の差は、他の6店舗における行列を足し合わせても、まだ同店のそれには遠く及ばないといったところである。私が訪問した小雨がぱらつく昼下がりにおいても、40人以上の客が長蛇の列を成しており、待ち時間は軽く1時間を超えた。同時刻の他店の状況と言えば、「せたが屋雲」に2、3名の客が並んでいただけであったことからも、同店の人気の凄まじさが御理解いただけるだろうか。まさに独り勝ちの様相を呈している。

秦野の山奥の難食行列店「なんつッ亭」初の支店であり、「なんつッ亭」が既にカリスマ級の名店の域に到達していることを考慮しても、それほどまでに他店と人気に差があることについては、予想の範囲外であった。

他店もそれなりに名の通った又は美味そうなラーメン屋だったこともあり、「なんつッ亭 弐」の長蛇の列に飛び込むことを躊躇する局面もあったが、そのような逆境を避けて通っていては、到底ラーメン課長などを名乗る資格はなかろう。「同じ熊本ラーメンなのであれば、隣の『ひごもんず』であれば待ち時間ゼロで食することができる。だったら「ひごもんず」で良いではないか」と私の中の弱い人格のほうが私に囁く。が、違うのだ。そのような問題ではない。「ひごもんず」は既に4、5回は食しており、しかも、西荻窪駅前で食することができるではないか。我に返った私は、和気藹々と歓談しつつ待ち時間を過ごす行列中のカップル客を尻目に、ストイックな面持ちで列に加わったのであった。

待つこと1時間強。もちろん、1時間前後の待ち時間など、私にとっては日常茶飯事なのでさほどの苦痛を伴うものではないものの、ようやく店内に到達したと思ったら、まだ10名程度の客が列を成していることにはさすがに閉口してしまった。席数はカウンター席が18、テーブル席が4の合計22席と結構多めなのであるが。
 
ここまで待たされると、連食を考えていながらも、ついボリュームの多いメニューをオーダーしてしまうのが人間の常であろう。私も例に漏れず、「ちゃーしゅーめん」の大盛りと温玉(温泉卵)に加え、半めしまでオーダーしてしまった次第である。 

麺は硬めのストレートであり、味も名店の名に恥じない優良品。スープは表層に黒いマー油が膜を張っており、濃厚な豚骨スープとのハーモニーが素晴らしい。豚骨スープとマー油を組み合わせることは、典型的な熊本ラーメンの手法を踏襲したものであるが、豚骨スープ、マー油ともに、他店のそれとは一線を画したハイ・クオリティーを維持している。豚頭を中心に丹念に煮込んだ豚骨スープは濃厚で深いコクがある。しかしながら、いわゆる豚臭さは皆無であり、ほんのりと甘みがかっていて飲みやすい。口に含むと、上品で甘美なクリームスープを味わっているかのごとき錯覚を受ける美味い豚骨スープのお手本のような名作であり、マー油のクオリティが高いことも相俟って、熊本ラーメンの極みのような境地を現出させている。とりわけ、マー油と豚骨スープが渾然一体となって混ざり合う後半における美味さは、熊本ラーメンでは他に比肩するものがないレベルにまで到達している。一言で言えば極めて丁寧に作られたスープ。野趣味溢れるコクの中に凛とした気品があり、コッテリしているように見えるのに食べるとなぜかあっさりしているように感じる人が多いのではないか。

具は、のり、ネギ、モヤシ、チャーシュー、そして温泉卵であるが、モヤシはしっかりと水切りが施されており、スープの味を邪魔していない。私は、ラーメンにモヤシは要らないのではないかと常々思っているが、こちらのモヤシについては、不要であるとまでは感じなかった。チャーシューは、熊本系にしてはかなり、ラーメン全般の中でみてもそれなりに美味い。温泉卵は半熟トロトロ系。相当上手に食べなければ黄身がスープに混ざってしまうため、純粋にスープの旨味を味わいたいと考える向きにとっては不満が残るところかもしれないが、温泉卵そのものは「さすが!」と頭を垂れるほかないクオリティーの高さを誇っている。

評価としては、麺:11点、スープ:18点、具:4点、バランス:10点、将来性:10点の合計53点。

オープンして日が浅いためか、厳しい見方をすれば、まだ超絶的に美味いという領域にまでは到達していないと思うが、見方を変えれば、オープンして日が浅いにもかかわらず、この実力の高さは相当なものだということにもなる。2時間以上並んでまで食する価値があるとは言えないが、1時間程度の待ち時間で済むのであれば、この一杯で十分おつりがくるだろう。


所在地:品川
神奈川県秦野に本店あり
実食日:05年2月

採点方法について
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