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あ~る亭の日々をなでる!!

世の中のすべてを斬る!いや「なでる!!」

京極夏彦『邪魅の雫』

2007-03-20 | 
去年から読んでいた京極の新作。
ようやく読み終えた。
800ページ超。
さすがに長かったよ。。

はっきりしない事件に翻弄される益田、青木。
読者も同じように翻弄されるが、これは事件の真相自体が
はっきりしない構図で展開されていたんだね。
こういうこともある。
この不幸な出来事の積み重ねもやっぱり「不思議なこと」では
ないのだなぁ。

「塗仏の宴」「陰摩羅鬼の瑕」と、ちょっと不作が続いていたが、
本作はなかなか読ませる作品だった。
正直、「絡新婦の理」以前の作品に比べると、勢いや衝撃は少ない。
京極、榎木津、木場といったキャラの登場が少ないのもちょっと不満ではある。
が、人間・榎木津探偵に迫るラスト数ページは秀逸であった。
そして何より、読むこと自体が楽しい。
読書の楽しさを認識できる、数少ない作家だと改めて思った。
次回作、いつになるかわからないが、期待して待とう。

あ~る亭のなで心地:★★★★★★★☆☆☆

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京極 夏彦

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2006年をなでる!!~本編

2006-12-31 | 
2006年も年末がやって参りました。
今年もまた、1年を振り返ってみたいと思います。
まずは本編。

今年はまた、去年にも増して読んだ数が少なかった。。

森博嗣『赤緑黒白』
 Vシリーズ遂に完結!
 シリーズを通じた壮大なトリックと次作へ繋がる美しい
 エンディングに感動!!

山崎豊子『沈まぬ太陽』(一~五)
 日航機墜落事故を描いた、壮絶なある会社員の人生。
 サラリーマンというものを考えさせられる重い作品。

東野圭吾『白夜行』
 限りなく不幸な800ページ。
 悲しすぎる人生の悲しすぎる最後がずっしりと重い読後感を。。

東野圭吾『容疑者Xの献身』
 純粋すぎる天才の愛情。
 やはり悲しすぎるエンディングが、やはりずっしりと重く。。

の4作品(8冊)のみ。
もうちょっとがんばりたかったかなぁ。
読む時間が主に通勤時間なので、一昨年引っ越して近くなったのが
主な原因ではないかと思われる。

でも、今さらながら山崎豊子作品に触れたし、東野圭吾の作品に
出会ったりと、新しい1年だったかな。
どれもこれも重いストーリーでありながら、読ませる筆力があり、
「読んだ!」っていう満足感が得られる作品だった。
来年も時間を見つけて、いろんな作品に出会いたいものだ。

東野圭吾『白夜行』

2006-08-28 | 
悲しすぎる二人の悲しすぎる運命。

20年もの長い時間の中で、寄り添い生きていく二人は、
ただひたすら悲しい。
二人の人生に関わった人たちの不幸、絡み合う人間関係の
中に見え隠れする二人の姿。
その二人の姿を、様々な角度から描いていく手法が読んで
いて飽きないし、一気に読ませるだけの筆力がある。
目を離せないまま一気に読み進んだ800ページの中で
積み重ねられたものが、最後の展開で昇華されず、
胸の中にずっしりと残る。

ああ。。
なんて悲しい。。。
しかしこの後味の悪さ、すっきりしなさも含めて、本作の魅力である。

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東野 圭吾

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山崎豊子『沈まぬ太陽』

2006-07-13 | 
随分長い期間をかけましたが、ようやく読み終えた。
誰もが知っているあの航空会社を、半ノンフィクションで綴っ
た問題作として話題になり、前から気になっていた作品だった。

会社側の一方的なエゴで僻地をたらい回しにされる社員の
姿が描かれる「アフリカ篇」。
今も記憶に残る、520名もの被害を出した事故を描いた
「御巣鷹山篇」。
そして、崩壊寸前の会社を立て直すために派遣された
会長の奮闘を描く「会長室篇」。
その三篇どれもが、“国民航空”という会社の救い難い実情を綴っていた。

「アフリカ篇」では、その余りの仕打ちに怒りを覚え、
「御巣鷹山篇」では、事故の凄惨さの克明な描写に涙した。
最後の「会長室篇」で、再建に取り組む国見会長の登場に、
ようやく正しい道を辿るのかと安堵の思いで読んでいたが、
結局あの結末。。。

この小説は、半ノンフィクションといいながらも、半分は
フィクションである。
いろいろと調べてみると、作者の偏った取材が真実のように
語られているとか、そういう批判もあったりする。
そうなんだろう。
あくまで小説として書かれたものに、真実を求めるべきではない。
それを真実のように書いてしまった本作はやっぱり問題作なのかも知れない。
これを鵜呑みにしてはいけない。

しかし。
ここ数ヶ月で起こった日本航空のトラブルの数々を見ると、
やはりこの会社の持つ問題は大きいと思わざるをえない。

それはそれとして、単純に小説として面白い作品であった
し、御巣鷹山の事故の凄惨さを残すものとして、価値の
あるものだとも思う。

とりあえず、しばらくJALの飛行機には乗りたくないよ。。

あ~る亭のなで心地:★★★★★★★★☆☆

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)
山崎 豊子

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『赤緑黒白―Red Green Black and White』

2006-02-03 | 
森博嗣の「Vシリーズ」最終作。
10作目でついに終わってしまった。

基本的な事件自体は、これまでとなんら変わりなく、
特に最終作だからっていう感じではない。
トリックも、やはり「理系的」なものが使われている点で、
ちょっと不満が残る。
真犯人の存在も、それほど目新しくはなかったし、なんとかく
そうなんじゃないかって気はしてしまっていた。

しかし、全体的にはとても面白かった。
登場人物の心情がこれまで以上に克明に描かれていて、
それぞれの物語に一応の決着をつけようという感じはがひしひしと伝わる。
紅子、保呂草、練無、紫子、七夏、林。
愛すべきキャラクターたちともこれでお別れか。
そう思うとちょっと寂しくもあり。

あとは、一作目『黒猫の三角』の殺人犯、秋野と紅子の邂逅は素晴らしかった。
二人の天才の会話は美しく、そして危うい。
そして、本作に登場するもうひとりの天才。
彼女を登場させることが、この作品の目的だったとも思えるラスト。
「赤緑黒白」に隠された意味が明らかになったとき、S&Mシリーズと
Vシリーズの関係に隠された壮大なトリックが明かされ、次のシリーズ
「四季」へと繋がっていく。
なんて美しい。
最後の数ページは毛が逆立つ思いで読んでいた。

ああ、次のシリーズが本当に楽しみだ。

あ~る亭のなで心地:★★★★★★★☆☆☆

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2005年をなでる!!~本編

2005-12-31 | 
2005年という一年を振り返る恒例の企画。
まずは本。

特にオススメは以下な感じ。

『燃えよ剣』
 去年読み始め、今年頭に読みきった本。
 土方歳三という男の魅力前回、全日本男児必読の一冊。
『終戦のローレライ』
 終戦の時代に生きた男達の友情が泣かす。
 映画版とは別物の傑作。
『スターウォーズ エピソード3 シスの復讐』
 映画を観てから読むと、感慨ひとしお。
 スターウォーズ伝説の完結を知る上で外せない一冊

6作品、12冊。
去年の半分のペースだ。
内容的には、司馬遼太郎と福井晴敏と森博嗣が多いな。
もうちょっと来年はバリエーションを持たせたいところだ。
家も近くなり、本を読む時間が減ってしまったので、
がんばって読まなきゃならんね。

森博嗣『朽ちる散る落ちる―Rot off and Drop away』

2005-12-26 | 
本作は、『六人の超音波科学者』の続編に当たる作品。
Vシリーズもいよいよ佳境だ。

しかし、前作『六人~』との間にいろいろ読んでしまった
こともあり、不安が残る。
で、読んでみたわけだけど。
やはり、直後に読むのが正しいんだろうな。
というのが感想。
なんかよくわからないところが多かった。
それなりに一本の話として完結してはいるんだけど、
やっぱり細かいところでね。

それは置いておいても、やはりあのトリックは。。
森小説の売りである「理系トリック」なんだけど、
やっぱり無理やりな感じがする。
「そうだったのか!」っていうのが感じられないんだよな。
好みは分かれるのかも知れないが、やっぱり正統派の
トリックがいいよ。

とはいえ、全体的な空気感はさすが森作品。
Vシリーズの登場人物が見せる円熟したやり取りはたまりません。
Vシリーズが始まる直前に出た短編集からの流れがここに来て
出てきたりとかはやっぱうれしい。
長く続くシリーズ物ならではの喜びだな。

さあ、次はいよいよラスト。
Vシリーズにはどんな結末を見せてくれるのか、楽しみだ。

あ~る亭のなで心地:★★★★★★☆☆☆☆

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福井晴敏『終戦のローレライ』

2005-11-14 | 
いや~、素晴らしかった。
やっぱすげーよ、福井さん。
映画『ローレライ』でがっかりした勢いで、読むのを止めないで良かった。
もうあの映画とは完全に別物!!
映画でがっかりした人も、映画を楽しんじゃった人も、絶対読まないと!!

「伊507」と呼ばれる潜水艦と、特殊兵器「ローレライ」を中心に
話が進んでいくんだけど、とにかく人物描写が絶品!
そして、第二次世界大戦における沢山の人の死と生が、飾らずに
きっちり書ききっている。
自分の居場所が分からず、ただ時代に流される征人。
戦争という時代に発現した自分の能力に翻弄され、自分を失っていたパウラ。
そんな二人が、「伊507」での出会いと別れの中で、自分の場所を
見出し、成長していく。
それを時に優しく、時に厳しく接する乗員たちも、二人に影響されていく。
その描写がとにかく上手いんだ!!
最後に乗員達が選んだ行動は、もう涙なしには読み進められないよ。

現代。
しつこいほど書き込まれた終戦から現代までの時代の流れの中で、
第二次大戦の終わりに浅倉が予言した、悪しき日本の姿が描かれる。
それでも未来への希望がある。
そう思わせてくれるラストは、思いがけず爽やかな読後感が得られた。

『亡国のイージス』に続いてこのクオリティ。
福井晴敏、いよいよ本物だ。

あ~る亭のなで心地:★★★★★★★★★☆

4062750031終戦のローレライ〈4〉
福井 晴敏

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森博嗣『捩れ屋敷の利鈍』

2005-06-26 | 
Vシリーズもいよいよ佳境か。
本作は、ちょっとした外伝的な作り。
まず、メインキャラである紅子が出てこない。
そして、S&Mシリーズでお馴染み、西野園萌絵が大活躍!!

これは贅沢なつくりだ。
あとがきにもあったけど、「マジンガーZ対デビルマン」的。
最近だと、「エイリアンVSプレデター」?
とにかく、あのキャラがこのキャラと夢の競演っていうのはそれだけで熱い。
電話登場のみの犀川先生も、あいかわらずいい味出していた。

話自体が短めなのも良い。
あっさりした作りの中で、両者のキャラを思う存分活躍してくれている。
エンジェルマヌーヴァもついにその姿を現すし。
メビウスの輪の形をした密室の中での殺人っていうのも、ちょっといいね。

さて、この物語のキーであろう、最後の記述。
これがよくわからなかった。
なんなんだ!!
今後、その辺は明らかになってくるんだろうか。
最近、ちょっと歴史小説とか読んでたから、頭が固くなっているのかな。
リハビリには丁度いい、軽く読める一冊でした。

あ~る亭のなで心地:★★★★☆

4062750333捩れ屋敷の利鈍
森 博嗣

講談社 2005-03
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司馬遼太郎『城塞』

2005-06-13 | 
1月に『燃えよ剣』を読み終わってから友人に借りて読み始め、5ヶ月近くかかってしまった。
途中でスターウォーズの原作とか読んだりしたのもあるが、それにしても時間をかけ過ぎたな。

話は、関ヶ原の戦い後、秀吉亡き後の乱世。
天下を手にした家康が、その天下を祖先まで残すため、豊臣の家を潰しにかかる。
その謀略の狡猾なことと言ったらもう。。
まんまと嵌められて、冬の陣、夏の陣とつぶされていく豊臣家。
最終的には家康の思惑通りに進むわけだが、豊臣方の方がむしろ英雄的に書かれているのが面白い。
ちょっとした齟齬の積み重ねでつぶれてしまったんだなぁ。
淀殿がいなかったら、どういう世の中になっていたんだか。

話としては、『竜馬』や『燃えよ』に比べると、ちょっと物足りない。
竜馬、土方という、魅力的な英雄がいないからだろうな。
延々と続く謀略の数々は、ちょっと読んでいて疲れてしまった。
勘兵衛がもうちょっと活躍してくれれば。。
しかし、さすがの筆力と情報量であった。

あ~る亭のなで心地:★★★☆☆

4101152209城塞 (上巻)
司馬 遼太郎

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司馬遼太郎『燃えよ剣』

2005-01-24 | 
去年から読み続け、ようやく読み終わった。

大河ドラマ『新選組!』とは異なり、副長土方歳三を描いた作品。
いや~漢(おとこ)だ。
近藤勇という男を信じ、新選組を大きくすることだけを考えて生き抜いた人生。
沖田総司、お雪という人物と、歴史そのものが彼の人生を彩っていた。
人斬り集団の中でも最も恐れられた男。
それがなんと魅力的に描かれていることか。

特に後半、近藤との別れ、孤高の戦いを続ける姿は、ただただ美しい純粋な男の姿だ。
最後の函館での戦いの描写は、小説史に残る名作。
近藤、沖田のためにも降伏して生き残ることを良しとせず、ただひとり特攻する姿。
味方すら置き去りにしてただ疾走する。
そして官軍のど真ん中、名を問われた彼の答えは、現在の役職ではなく、「新選組副長土方歳三」。
新選組とは、彼の人生そのものだったんだな。

とにかく圧倒的な彼の人生の全ては、
「鬼としかいいようがない。」
の文章で全てが表されている。
それも純粋な鬼だ。
迷いのない、純粋な鬼は美しいんだと思った。
感動した。
泣きそうだった。
電車の中じゃなかったら泣いていたかもしれない。
今度函館に行ったときは、これまでとは違う感慨が得られるに違いない。

『竜馬がゆく』の坂本竜馬とはまた違った、魅力的な男の姿。
幕末ってすごい時代だったんだな。

あ~る亭のなで心地:★★★★☆

燃えよ剣 (上巻)
司馬 遼太郎

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燃えよ剣 (下巻)
司馬 遼太郎

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2004年をなでる!!~本編

2004-12-30 | 
続いて本。
今年もいろんな本を呼んだもんだ。

『亡国のイージス』
 グングン引き込んでいく筆力が最高。
 久しぶりに小説でこれほどのドキドキ感を感じた。
『竜馬がゆく』
 竜馬の魅力を最大限に引き出した司馬遼太郎はやっぱり偉人だ。
 大河『新選組!』と並んで、あ~る亭の2004年を幕末に染めた一作。
『恋恋蓮歩の演習』
 森博嗣のVシリーズ(現在)最高傑作。
 最後のとんでもないオチに体中が震えた。

全部で13作品、22冊。
中でも上記3作は、それぞれ全然違うジャンルだけど、どれも素晴らしかった。
映画、ドラマといろいろ映像作品もあるけど、活字の良さは色あせない。

GANTZ

2004-09-29 | 
後輩Uから借りていたものを読んだ。
マンガ「GANTZ(ガンツ)」。

いや~、はまった。
一気に最新刊まで読みほしてしまった。
あの何の説明もないっぷりがまずすごい。
謎は徐々に明かされながらも、更に深みへと入り込む。
全く先の読めない展開。
続々と登場する謎の"敵"。
とにかく燃える燃える。
久しぶりに傑作マンガに出合った。
新刊が待ち遠しい。