PRESSMAN GOGO

オートバイスポーツ、トライアルを中心にディレクター生野涼介が日々の気がついた事、取材した時の思いなど、日常のブログです。

中国映画「冬休みの情景」

2011-10-24 11:25:06 | 映像 DVD
DVDレコーダーのHDDに溜め込んだ映像から、アジアの映画を見ました。
中国が制作となっていますが、クレジットには成吉思汗電影公社なんて名前もあって、舞台は内モンゴルです。
いやあ、ハリウッド系の映画しかなかなか見られない昨今、久しぶりに独自の価値観の映像を体験できました。



全体のイメージは、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のカラー版という感じ。
絵画のような完璧な構図の連続ながら、とにかく画像が動かない!しかもカットが長く寄ったり引いたりしないので、出演者の表情もわからない。
でもそれがものすごい緊張感を画面に与えるのです。
見る人は、「ここはどこ?」「あの人は誰?」「何をしているの?」と考え続けるのでどんどん映画に引き込まれて行きます。
この謎かけのような緊張感は、ハリウッドのアクションやサスペンスをはるかに超えるもののように、僕には感じられました。

映画の予告編はこちら。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=t3_vbTC7HjY
中国語にフランス語の字幕ですが、
「僕はもうおじいちゃんの孫を辞めたい」「じゃあ何になる。わしがお前の孫になるか」「10分だけ遊ばせて」「昨日遊んだじゃないかい」
と言っているところ。これでもおそらくこの映画で、カメラが一番出演者に寄って表情を捉えているシーンです。
二人の座り位置の画面的な間と、会話の時間的な間が完璧です。
そしてその意味のない会話から二人の関係を推察することが、見る側の楽しみです。

当然のようにストーリー自体は無いに等しく、何も起こらず何も解決せずパタッと終わりますが、それでも1時間30分もの間、画面から離れることが出来ない緊張感の連続でした。

僕は、テレビは説明、映画は謎かけのメディアだと思っています。万人が見るテレビはいかに誰でもわかるように説明をするかで視聴者を獲得し、映画はその映像が何かを説明しないことによって観客を映像に引きずり込むものだと。
なので映画は基本的にテロップもナレーションも使わないのでしょう。
最近のテレビがおしなべてつまらないのは、説明したいがあまりに段取りだらけになってしまい、それが画面の緊張感を欠く原因になっているからではないでしょうか。「これは面白いものですよ~」「ここが笑いどころですよ~」と手取り足取り説明されてもねえ…

しかしそんなコマーシャリズム一辺倒の現在の世の中にまだ、ここまで謎をかける映像を作る作家が存在して賞をとるような活動をしている事に感激でした。
…でもこの監督、映像作家として生きていくのはさぞや大変だろうなあ。末席を汚す同志として、ご同情申し上げます。
わたくしも次にどうなるかわからない緊張感のあるトライの映像を、模索してまいる所存でございます。

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