PRESSMAN GOGO

オートバイスポーツ、トライアルを中心にディレクター生野涼介が日々の気がついた事、取材した時の思いなど、日常のブログです。

2017年全日本トライアル第2戦 近畿大会

2017-04-20 08:48:24 | 日々の事
開幕戦に続き暖かな、ちょっと動けば暑いくらいの太陽に恵まれた第2戦、近畿大会。
スーパークラスの注目はやはり、関東大会で圧勝した黒山健一選手が第2戦をどう走るか、実は昨年終盤から3連敗中の小川友幸選手は、どこからどうやって巻き返すのか、ですね。


外見からはわからないものの、新型マシンをさらに熟成させたという、黒山選手。


プラクティスエリアではあまり長いライディングを見せなかった、小川友幸選手。
静かに燃えている感じです。


さらに前回惜しくも2位を獲り損ねた小川毅士選手は、今度こそ?


まさかの4位スタートとなった野崎選手、今回は?


なかなか5位の壁を突破できない柴田暁選手。


関東大会では田中善弘選手不在の穴を埋め6位に入った、斎藤晶夫選手。


逆に真壁では悲願の6位に届かなかった、野本佳章選手。


ほかにも昨年末からのウエイトトレーニングなどの成果がそろそろ出てくる?藤原慎也選手。
嬉しそうにユンケルを誇示するので新しいスポンサーをGet!かと思ったら、「営業に行けたらええなあ」でした。


スーパー2戦目ではどんなトライを?の久岡孝二選手。


同じくスーパー1年生の磯谷玲選手。
ニューフェイスらしい笑顔の磯谷選手ですが、開幕戦では転倒してもこの笑顔を絶やさなかったとこのと。
今回はアシスタントのお父さんから「真剣味が足りん!今度は転んだら笑うなよ」と注意をされていました。


これら選手たちの様々な「想い」を、試合はライディングとして形にしていきます。

試合開始直後の第1セクション。
黒山選手は入ってすぐのステアからテープを飛び出し、前輪で切ってしまいます。


今回の黒山選手、他にも超難度のポイントをクリアしてあと少しで出口、というところまで行っての失敗がいくつもあり、「うおー!クッソー!! 」との吠え声が響きます。






黒山選手が前回のような鬼乗れを維持できていないこともあり、1ラップ目のトップ争いは団子状態。その中で1位での折り返しに成功したのは、確実にマシンを進める小川友幸選手でした。


ところが前戦での怪我が完治していないせいでしょうか、友幸選手のトライはどこか確実性に欠け、2ラップ目に調子を上げてきたライバルに追い抜かれ、SS前にまさかの3位にまで落ちてしまったのです。






友幸選手を追い落としたのは、野崎選手。


1ラップ目が終わった時点は4位で、2ラップ目に向かう前パドックでカメラを向けても「今日は撮ってもらうほどの走りができていませんよ」と苦笑いしていたのですが、2ラップが終わった時点で2位に浮上。開幕戦4位の雪辱をすっぱり果たせる期待を持たせます。


第1戦では惜しくも2位を逃した小川毅士選手ですが、この日はウオーミングアップで足の爪を剥がしてしまっていたとのこと。
このため一時は柴田選手にも抜かれ5位。



1ラップ目の終わりには3位に戻すものの、その後は5点差で柴田選手をかわした4位でSSを迎えます。


というわけで毅士選手に勝つチャンスを得た柴田選手。


毅士選手とは5点差、5位で迎えた柴田選手のSSの第1。見事にクリーンで走ります。


次に入ったここまで4位の毅士選手ですが、なんと失敗。


この結果毅士選手と同点に追いついた柴田選手。
残るSSの第2を3点でも抜ければ、ついに4位獲得の可能性が大きく広がります。
ところが柴田選手はそのSS第2を攻めきれず、痛恨の失敗。

ここは毅士選手も失敗して2人は同点同クリーンという結果になったのですが、1点の数の差で柴田選手はまたしても5位に終わってしまいました。


2ラップが終わり、トップは黒山選手。タイムペナルティーを含み減点47です。


2位は野崎選手で、減点51。2位獲得はもちろん、トップと4点差はまだまだ逆転優勝のチャンスもあります。


3位の友幸選手は野崎選手に1点遅れる減点52。
開幕戦はあやうく3位を免れた友幸選手ですが、今度も最低2位に挽回出来なければタイトル防衛が早くも危うくなって来ます。


SS第1。野崎選手と友幸選手はお互いクリーンして、2人の勝負はSSの第2へ。


ところが野崎選手はここで3点を着いてしまいます。


次に走った友幸選手は、さすがチャンピオンという精神的強さを見せてクリーン。

土壇場で最低限の2位に上がってタイトル防衛に望みをつなぎました。

ここまでの走りで「獲るべきところをいくつか落としてしまって」と唇を噛んでいた黒山選手ですが、SS第1を1点、第2を2点。ここまで4点のリードを最大限に活かした、あえての足着きです。

最終セクションを抜け優勝を決めた直後は、この表情。

黒山選手は今季2勝目を手に入れました。


他、野本選手はついに悲願の6位を獲得。


開幕戦で出られなかったSS出場を果たした、藤原選手。


スーパー1年生にして2連続SS出場となった、久岡選手。


残念ながら目標に達しなかった選手も含め、それぞれ全力を尽くした試合となりました。




優勝 黒山健一 減点50c8
2位 小川友幸 52c7
3位 野崎史高 54c7
4位 小川毅士 78c4 1点2
5位 柴田 暁 78c4 1点1
6位 野本佳章 93c2
7位 斎藤晶夫 97c1
8位 藤原慎也 106c0
9位 成田 亮 108c0
10位 久岡孝二 108 c0
<以下SS不出走>
11位 磯谷 玲 98c0
12位 砂田真彦 100c0
13位 岡村将敏 100c0

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以下は試合展開以外についての批評です。
不愉快な内容もありますので、お読みいただける方はそれなりのお気持ちでお付き合い下さいませ。


全日本トライアルは初めての開催となる、和歌山県にある湯浅トライアルパーク。
2年前、2015年に出来たところのようです。
行ってみると、入ってすぐ広大で平坦な駐車場があります。トライアル場の駐車場はジープでしか入れないような所も多いので、これは助かります。


パークは広くて、ダイナミックなセクションがいくつも。
おやここはSSDT並みの沢登り。こちらはアンドラのような風化したガラガラ斜面とステアの連続。

ところがそのセクション内には細かくゲートマーカーが設置され、せっかくのワイルドさがスポイルされています。
選手からは「アシスタントは秒読みや後輪の位置よりもセクション内の道案内をしなければ、ライダーが迷っちゃう?」という笑い話や、「あれもやらせたい、これもやらせたい、という設計者の気持ちはわかりますけど、ちょっとねえ」との感想を聞きました。
結果を見てもスーパークラスをもってして8位以下はほとんど全部5点。12位、13位はオール5点でタイム差で最下位が決まるという、これならオレが出てもスーパー13位になれるじゃん、という設定です。
これでは選手も観客もつまらない・・・

さらに問題を感じたのは、エンクロージャーエリア。黄色いテープで観客の立ち入りを制限する部分ですが、ここは別にプレスの立ち位置という訳ではなく、観客の安全を確保するためのスペースです。
このエリア設定には多くの大会で不十分さを感じますが、特に近畿大会は以前から甘いところがありました。
そして今回はさらにひどい事に。

たとえば沢のセクションでは、お客さんの観戦スペースが非常に狭い。
セクション横の狭い林道に入り込んで行くのですが、この通路は次につながっていません。
このため登ってくる観客、下って行く観客、さらにトライが終わって降りてくるバイクまで混在してぐちゃぐちゃになっています。
さらにセクションテープと一緒に黄色テープが張られているので、プレスはもちろん、アシスタントにすら立ち位置がない状態になるのです。
この黄色テープ、張ったというアリバイだけで何の意味もありません。


通路とセクションが隣接しているために、実際に事故も起きています。
トライが終わったライダーがセクション横を戻る時に転倒。ふっ飛んだバイクがトライ中の選手に激突したのです。







バイクの下敷きになった選手はしばらく動けなくなりますが、大事には至らず試合に復帰出来たのは本当にラッキーな事でした。

被害を受けた選手には申し訳ない言い方ですが、彼はまだヘルメットやブーツなどの防護があったから良かったと思います。
もしこれがまったく無防備な観客だったら、当然救急車もの。 ニュースにも載って、湯浅という素晴らしい会場が以後使用禁止に追い込まれる事態も考えられます。

前日のミーティングで主催者は「次のために待っているアシスタントはしゃがんで下さい。お客さんから「見えない」とクレームが来ますので」と言っていましたが、いやいや、主人公である選手側に大会側の都合を押し付けるのは違うでしょう。
選手側には余計なことを考えさせず勝負に専念できる環境を作らなくては。
そしてもうひとつの主人公であるお客さんには、選手の全力のトライを安全に見やすく設定するのが、大会側の仕事だと思います。

他にも黄色テープが部分的にしか張られていなくて、お客さんが危険なところに入り込む例が多数見られました。

ここではセクションを横断しないと行けない場所に子供が入り込んで、バイクが吹っ飛んで来るかもしれないのに写真を撮っています。

足場の悪いところから滑落したのでしょう、Tシャツが裂け、背中が血だらけになっているお客さんもいました。
役員に「危険だからお客さんをテープの外に誘導したほうがいいんじゃないですか」と忠告もしたのですが、「そうですねえ。危ないですねえ」と言うだけ。
進行さんは観客となってトライを楽しんで見ています。

特にとんでもなかったのが、第9セクション。
ここは小山の上にセクションがあり、観客からは全く見えません。
黄色テープは小山の下に張ってあるのですが、お客さんは当然のようにテープを越えて侵入。
役員は問題意識を持っていないのでしょう、何も言いません。


湯浅は比較的新しい会場であるため岩がまだ安定していません。
このため失敗して吹っ飛んだバイクはもちろん、成功しても選手が崩した人の頭よりも大きな岩が、ゴロゴロどっかんどっかんと落下するのです。

岩は、下見だけでも落下することもある状態なのです。

たくさんのお客さんが集中するSSの第1も黄色テープが不十分で、セクションぎりぎり。
吹っ飛んだバイクや落石落下ポイントにまでお客さんが迫っている設定でした。


また上の移動コースを時間に追われて飛ばす選手が跳ね飛ばした石も、文字通りぶっ飛んできます。セクション間際でひしめき合っている客は身動きもできない状態で、もはや何人か死人が出ても当然という状態でした。
普段いろいろな分野で「安全」を人質に、あえて悪い表現を使えば「言いがかり」とも言える制限を強いているようなMFJですが、もっと明白で基本的な部分でのこの安全無視はあり得ません。

遠くに離れているため移動にとんでもない時間と体力を使うセクション配置も含め、ほとんどどこも観客の見やすさと安全を全く考えていない設定です。

今回は大阪モーターサイクルショーでのトライアルデモを見て「初めて大会に来ました」というお客さんも多かったとのこと。
せっかく選手が頑張って広げた裾野、これからファンになってくれるかもしれない人が、もう二度と来なくなってしまうでしょう。
以前からの観客も含め、これで入場料をとろう、トライアルを盛んに、なんてのは勘違いも甚だしいと思います。
近畿大会は大会終了後にリザルトも配りません。
役員の皆様は、わざわざ山奥まで足を運び、お金を払い、トライアルを支えてくれている観客を何だと思っているのでしょう。

最近サーキットの片隅を借りての箱庭的トライアルが多くなっているJTR。
そんな中で久しぶりにトライアルの魅力を発揮できそうな新しい会場であった分、大変に残念な運営の大会でした。


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