おめでとうございます。

2006-04-26 01:29:21 | Weblog
 自分は中学生時にサッカーのクラブチームに所属していたのですが、その頃のチームメイトが、今度めでたく結婚するらしいです。しかも、嫁さんは妊娠中らしくダブルおめでた。話を聞いた時は本当にびっくりしました。
 ちなみに彼は、ガチャピンに似ていると昔は評判だったのですが、嫁さんのDNA次第では“リアルポンキッキーズ”が可能となるはずです。しかし、もし仮に二人のガチャピンがこの世に存在するのならば、もはやリアルではなく、ある意味“メタポンキッキーズ”って事にもなるのでしょうか。(←全然なりませんね。ごめんなさい。言葉の響きが気に入ってしまっただけです。)是非そちらの方も検討していただきたいところです。
 というのは悪い冗談で、本当におめでとうございます。心より今後の御幸せをお祈りしております。また二人の間に生まれてくる新しい命にも沢山の幸が訪れますように。

《今日のお薦め》
ベンヤミンの生涯  近年社会学の分野でも再評価が高まりつつあるベンヤミンですが、これまた例の平凡社ライブラリーから。絶版になってますが、言ってもらえば貸します。

ヴィム・ヴェンダース来日真近

2006-04-24 23:52:40 | Weblog
 もう少しで来日しますねヴィム・ヴェンダース。5月2日に池袋の新文芸座で行われるヴェンダース特集のオールナイトチケットを何とか今日入手しました。残りのチケット数は10枚以下だとか・・。行きたい人はお早めに。彼には中々会えないと思います。当日は大好きな『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を始めとする、『パリ、テキサス』、そしてまだ見たことがない『ランド・オブ・プレンティ』も上映されます。もちろん監督自身のトークショーもあるようなので、今から凄い楽しみです。ヴェンダース監督の日本好き、というか小津安二郎好きはかなり有名で、笠智衆や小津に縁のあるスタッフにインタビューしたり、煩雑な現代の都市としての東京を、過去の長閑な東京と比べるという、いかにも外国人的でノスタルジックな見方で撮った映像を『東京画』という作品で展開していますが、海外での小津評価を高めたのは彼の功績もかなり大きかったと言えるのではないでしょうか。墓の中の小津安二郎も感謝の念を伝えるためにさぞこのチケットが欲しいに違いないでしょう。でも小津に頼まれても絶対あげません。なぜなら自分は小津作品に勝るとも劣らず、大ヴィムヴェンダース作品ファンでもあるからです。
 何はさておき小津作品を外国人映画監督にあそこまで大事にされると、小津安二郎の単なる一ファンである自分さえも何だか無性に嬉しくなってしまう。小津が今生きていたらどんな作品を作るんでしょうかねぇ。ちなみに明日の新文芸座の上映スケジュールは小津の『お茶漬けの味』と『麦秋』だそうですよ。

《今日のお薦め》
ウィトゲンシュタイン 天才哲学者の思い出  ノーマン・マルコム(著)

 ちくま学芸文庫についで、良書が多いのがこの平凡社ライブラリー。平凡とか言っておきながらラインナップが全然平凡じゃない。むしろハードコア。岩波も古典は充実してますが、この類の本を出版できないのが岩波の弱点。これはウィトゲンシュタインの弟子であるノーマン・マルコムによって書かれたウィトゲンシュタインの伝記みたいなものです。文体もやわらかくスラスラ読めるので、あまり馴染みのない人に是非ともお薦めしたい一冊です。

映画人気質

2006-04-22 19:05:22 | Weblog
 今年も大学の映画の授業に山田洋次が来た。相変わらず五月蝿いおっさんである。寅さんの台詞みたいな事はさすがに言わないが、やっぱり渥美清演じる寅次郎はこの人の頭の中から出てきたキャラクターなんだなぁと実感。その何ともいえない古風なユーモアを交えた話し方に寅次郎の姿が見えたような気がした。まだ山田洋次本人とは直に会った事は二回しかないのに、昔からの知り合いであるかのような錯覚を覚えたのは、幼い頃から山田映画に幾度となく触れてきた事とおそらく無縁ではない。
 そんな彼がこの日使った教材は『ローマの休日』。映画を解釈する時の主観的な強引さにやや抵抗を覚えたものの、ワンカットずつ丹念に解説していく姿に職人気質が色濃く出ていて感心させられた。彼曰く『フェリー二のような天才的な映画監督が作る芸術作品を製作する才能は僕にはない。』との事。確かにヒッチコックやフェリー二のような繊細なカットで魅せる技術や発想は彼の話を聞く分にも出てこないような気がした(ヒッチコックの『ロープ』は1カットが長いので10ミニッツムービーと呼ばれるが)。では、戦後日本の映画界を支えてきた彼の作品の何が多くの日本人の心を捉えたのだろう。それは大衆性に裏打ちされた“平均的な感動”を呼び起こすことができるという才能を彼が豊かに備えていたからであると思う。要するに良い意味で平凡なのだ。平凡というと聞こえが悪いかもしれない。しかし自分が言いたいのはそのような悪い意味での平凡ではない。
 自分が大好きな小津安二郎も小栗康平もある観点から言えば極めて“平凡”な作品を作る映画監督だ。では彼らの平凡と悪しき平凡を隔てる境界は何であるのか。それは平凡の“仮面”をしているか否かにあるのではないだろうか。小津映画なんかを見てみればわかる。ストーリーは単調で何か大きな事件があるわけでもない。しかし、動かないカメラ、その構図、カットのタイミング等、それら全てが実は恐ろしく周到に用意されたものであると分かった瞬間にその平凡な仮面のうちにある小津安二郎の微笑が浮かんでくるのだ。
 彼らは表面的に“奇を衒う”のではなく、見るものを意図的に平均的な方向に誘導する技術に長けている。その表面的な平凡さのなかに、あたかも罠を設置するかのように製作者の本意を忍ばせるのだ。それらは見るものにこう小さな声で語りかけてくる。『わかってくれなくてもいいんだぜ。あひゃひゃ。君の最初に感じた通りに解釈すればいいじゃないか』。
 山田洋次の作品は小津や小栗に比べると確かにややストレートな感がある。だが、この日会って感じたのは、ほっとするような人情映画を作る温厚な人柄というより、言葉には出さずとも自分の限定的な才能を極めて熟知した上で計算的に、確信犯的に平凡なプロットを採用しようとしてきた山田洋次のもうひとつの顔だ。 
 やはり一流の映画監督は観客をうまく誘導する才能を持っている。それは“仮面”という名の映画人気質であり、また、それをカッコつきの“ユーモア”と呼ばずして何と呼ぼう。

《今日のお薦め》
定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー 山田宏一・蓮實重彦(訳)

 値段は多少高めですので、図書館等にあったら是非手にとってみてください。ここまで詳細にヒッチコックの技法について学べる本は稀有です。そしてヒッチコックにインタビューするのはゴダールと共にヌーヴェル・ヴァーグの旗手であるトリュフォー!しかも訳者が『友よ・映画よ』という名著で知られる山田宏一、そして東大元総長の蓮實重彦という何とも豪華な顔ぶれ。もちろん中身も超一級品。映画製作に興味がある方は必読です。

天魔、外道それによりて障碍を“なさず”

2006-04-07 15:29:05 | Weblog
  皆様いかがお過ごしでしょうか。ご無沙汰しております。というか相当更新をサボってました。 三月は正に悠々自適の生活を満喫していたわけですが、気がつけばもう四月で桜も散りかけてますね。この時期は花粉症の症状が酷いため、例年はインドアでの自堕落生活に拍車が掛かるのですが、幸い今年は殆ど症状が出ていません。以前春が嫌いだった理由というのは、テニスに勤しむ爽やか青年の笑顔からキラリと見える白い歯のような、ともすれば不快に見えるほどの爽快さが好きになれなかったというのもあるのですが、その大部分の要因を占めていたのはおそらく“花粉が多い”という事だったと思います。と言うより間違いなくそれに尽きるのでしょう。そんな自分だったためか、花粉の少ない今年は都合良く春の心地良い陽光の下で快哉を叫んでいるわけです。
 ところで沖縄へ行った時に思った事ですが、やはり温暖な気候というのは人に対して明朗な要素を与えるように思いました。それは民謡に色濃く出ていて、『これは北海道みたいな雪国では絶対生まれない音楽だなぁ』と沖縄民謡を聴いた時、そう率直に感じました。もちろん一概に温暖な気候=明るい音楽だとは全く思いませんが、音から伝わってくるものが以前、北海道に住んでる時に聴いたアイヌ民謡のコンサートで耳にしたものとは全く異質のモノであったのです。個人的な印象からするとアイヌの民謡に“強さ”と“哀愁”が聞き取れるのに対して、沖縄の民謡には先程述べた“明朗さ”、そしてアイヌのそれとはニュアンスの異なる“暖かい哀愁”とでも言うべきような、ある種矛盾した要素を感じました。どちらの民族も“本土”から一線を画され、さらには淘汰されてきた民族なだけに哀切きわまる歴史が深い“染み”として民族の文化に影を落としているという共通点があるのは確かですが、やはり沖縄の音には、そういった“染み”を融解させてしまうほどの明朗さを聞き取れました。それが単に気候の温暖さに起因するものかどうかは自分には分かりかねますが、沖縄の朗らかな陽気に触れて、その一因に成っていると直感的に感じたのです。
 文化と同じように風土もまた人格形成に影響力を持つのだから、その人格の創作物である音楽にもまた影響が及ぶのは当たり前であるはずなのに、そういう認識が何故か最近は鈍っていたように思います。それは、この“東京”という街からあまり外に出なかったせいなのかもしれません。今回の旅行では、旅という非日常的な経験は、異なる文化や伝統を持つ地域の人々や自然と文字通り触れ合う事で、普段忘れていた当たり前の事が現前する一種のショック療法であるという事を教えられたような気がしました。

《今日のお薦め》
エレンディラ  ガルシア=マルケス(著) ノーベル賞作家による大人のための残酷な童話。名状し難い気分に襲われます 笑 お薦めと言っておきながらなんですが、明快なプロットが好きな方にはとてもお薦めできません。