アルゼンチンから砂漠の国へ

2005年~2009年のオリジナル記事に、シンガポール時代の記事と、2009年以降のアメブロの旅行記を転記しました。

初めての中東訪問

2006年08月26日 | 旅行
8月19日(土) 38℃(Jeddah)

昨夜羽田を出発して、24時間かけて、ようやくジェッダに到着した。ブエノスアイレスの片道30時間と比べると少しはましだが、4便乗り継ぎで24時間は効率が悪い。聞けば、シンガポール経由なら2便乗り継ぎでもっと早く来ることが出来るらしいが、運賃が高いので、我が社では許可されないとの事。我々と仕事で同行するH社のメンバーはカタール航空を使いドーハ経由でやってきた。我々より、一便少ないが、ドーハで7時間待ちだったとの事で、あまり差は無い。

羽田から関空まで行き、初めてエミレーツ航空に乗ったが、このエアバスの設備は今まで乗ったどの便よりも充実している。映画も最新のものから、古いが人気のあったものまで、選ぶのが面倒なほどそろっている。ただ、座席がフルフラットでないのは、BS、JALと比べて劣る。長距離便はゆったり寝ることが出来るかどうかが重要なポイントだ。朝の4時ごろドバイ(Dubai)に到着した。まだ真っ暗な空の下、広い街全体が光で覆われている。安い石油と安い電気は使い放題なのだろう。別世界に来た感がある。

ドバイ空港のエミレーツのラウンジは、ヨーロッパ、日本で経験したラウンジとは一味違う。広いラウンジの一角が、まるでビュッフェ方式のレストランのようになっている。現に、夜が明けてくると用意された食事は、ホテルのレストランのようで、多くの人が朝食をとっている。睡眠不足と、酔い覚めの頭痛で、食欲がなく、ジュースを飲む程度しか出来なかったのは残念だ。乗り継ぎ便で朝食が出たが、ラウンジで十分食べた人たちは、機内食を断る人が多い。賢い選択だ。

ドバイから一時間でバーレーン。バーレーンでは、ガルフ・エアーのラウンジを利用した。ここは、インターネットが無料で使えたが、接続状態が良くなく、メールを一回読み取った後切断してしまい、ついに回復しなかった。ここでの飛行機搭乗は、バスを使ったため、初めて生の空気に触れた。まるで、ドライヤーの熱風の感じだが、空気が乾燥しており、べとつかない。

東海岸ペルシャ湾のバーレーンからサウジアラビアの中央部を横断して西海岸の紅海沿いにあるジェッダ(Jeddah)まで約2時間の旅。ジェッダの空港に着陸する時、周りは土色一色の世界。ついにやってきたという感じだ。

しかし、翌朝、日の出前に海沿いを散歩すると、海の水が澄んでおり、遠浅のサンゴ礁の外側に白波が立っている。陸から100m程度だろうか、潜るならその外側でないと面白くない。陸からそのまま海に入るのは難しそうに思える。

朝食をとり、手配してあったマイクロバスにのり、一路ラビ(Rabigh)へ出発。ジェッダの街を抜けるのに30分あまりかかったが、その後は一面の砂漠(土漠)の世界が続く。土色一色の世界に、アスファルトの道が延々と続く。しかし、両側と中央にはフェンスが同じく延々と続き、Free Wayといった感じがしない。ホテルを出発して、ちょうど2時間で工場に到着。ゲートパスを入手するのに要領がわからず、旧友のB氏に協力してもらってやっとクリア。予定時間を一時間もオーバーしてしまった。



ラビ・コミュニティー

8月20日(日) 砂嵐

仕事を早めに切り上げ、今夜の宿、ラビ・コミュニティーにあるホテルへ。かなり早い機会に日本からアレンジを頼んでいたのに、担当者が忘れてしまい、一時はジェッダのホテルに帰ることも考えたが、コミュニティーのアパートの空き部屋を利用することでなんとか調整がついた。

会社から約20Km、20分程度のドライブ後、またゲートでパスポートとIDカードを交換し、コミュニティーに到着。食事が出来る場所は、ホテルの食堂だけで、それがいやな人は自炊するとのこと。スーパー(というより、雑貨屋に近い)にはかなりの生活用品が取り揃えてあり、生活には困らない。

せっかくの機会なので、プライベートビーチを散歩した。遠浅の海岸は、200m程度沖合いで白波が立っている。50m程度沖合いまで歩いてみたが、くるぶしあたりの深さのまま。小さなスティングレイ(エイ)を見つけて、しばらく追い掛け回した。久しぶりの夏休みの気分だ。その後、紅海に沈む夕日は絶品で、むしろジェッダの海岸よりきれいだ。

(プライベートビーチの夕日)


ビーチには、休憩所が一定間隔で並んでおり、遠浅の海に突き出した突堤がある。先端まで歩いていくと、結構深い海になっており、子供達の海水浴場となっている。ベンチに女性が数人座って世間話をしているようだが、もちろん全員黒装束で、目の部分だけしか開いていない。

ホテルの部屋数が不足したので、家族アパートに宿泊させてもらった。ベッドだけの殺風景の部屋は、ホテルと比べると格段に落ちるが、将来単身赴任する時の心の準備が出来る。風呂場のシャワーの水圧が低い、タオルが一枚しかない、トイレットペーパーがなく、自分でスーパーで買出し等々、文句を言ったらきりが無いが、とりあえず、清潔なベッドだけは確保できた。

(アパートの風景)


7時ごろ、ホテルの食堂に行くと、今回の出張メンバー、既に赴任しているメンバーが一堂に集まって夕食を食べている。酒は無いが、ビールもどきで乾杯。数種類を飲み比べたが、サツマイモのにおいが一番少ない「ムッシ」の味がなかなかいい。当分アルコール抜きで体調は良くなりそう。

900戸余りあるコミュニティーにしては、人影が非常に少ない。空いているアパートが多いようだ。道端には規則正しく緑の木が並んでおり、とても砂漠地帯とは思えない。しかし、木々の根元を見ると、配水管が埋められており、緑を維持するために涙ぐましい努力があることがわかる。

アルコール、女性なし。紅海の美しい風景と、殺風景な街並み。単調な食事、ハンカチが乾かない湿気。こんな世界で2年間も生活できるのだろうか。現在駐在しているメンバーは、3週間に一度順番にドバイなど国外脱出している。6ヶ月のマルチビザで、連続滞在期間1ヶ月のため、必要に迫られて国外に一度出るというが、お金は会社持ちなので、むしろイカマ(滞在許可証)を入手して長期滞在するよりいいかもしれない。


工場のSecurity

8月21日(月)

工場に入るには、ID(身分証明書)がいる。臨時のビジターカードでも良いが、毎日混雑した申請所に並び、パスポートと交換して入手する必要がある。面倒なので、3週間のIDを申請することにした。

30分程度でできるというので、朝7時20分頃から並んだが、一向に作業が進まない。18人で一度に申請したせいもあるが、指紋読み取り機の操作不慣れ等で、IDが発行されたのが午後3時ごろ。しかし、18人中ふたりは、コンピューターのシステムトラブルでID発行が翌日になった。
運転者は3時10分のバスで帰るとかで、現場に入る許可がもらえない。結局、初日の現場調査は計画変更で、一時間程度の工事予定地調査だけで、翌日からの計画を全て見直し。全く計画どおりに事が進まない。

翌日は全員IDカードがそろったので、パスポートを預ける必要も無く、工場、コミュニティー共、バスの中からIDカードを見せるだけで通過。しかし、工場の中には、既存の運転しているエリアがあり、そこに入るには、またフェンスのゲートを通る必要がある。動物園の出口にあるような回転式のターンスタイルを通過するには、IDカードをコンピューターに読み取らせて、暗証番号を打ち込む必要がある。慣れないので、最初はうまくいかない。しかし、ガードの兄ちゃんは、カードを見て横の車のゲートをくぐらせるなんて融通は全くきかない。何が何でもターンスタイル通過を強要する。手続きの厳重さにはうんざりする。

工事がピークになっても、ゲートでいくら行列をつくっても彼らには関係ないだろう。


帰国

8月24日

やっと帰国。工場を歩き回って、靴を一足だめにしてしまった。それにしても暑い。23日一日で、工事の作業員が5人倒れたとのこと。湿気が高く、ハンカチを一晩熱風のベランダに干したが、乾かなかった。熱中症には要注意だ。

前の晩、二日たっても預けたクリーニングが返ってこないので、ホテルのカウンターに文句を言うと、現金と交換だという。実は、隣りのスーパーの洗濯屋に頼んであり、直ぐに取りに行ってくれた。受け取った請求書を見ると、お金が一ケタ少ないのではないかと思った。下着一枚1SR(サウジリアル=約30円)、シャツ2SR、ズボン3SR。アパートの隣人と二人で計4日分の洗濯物が総額19SR(約530円)。先月ヘルシンキのホテルで二日分のクリーニングを頼んで約1万円だったのを考えると、物価の安さは近代化に反比例するようだ。

ついでにコミュニティーのアパートをチェックアウトすると、サインだけで宿代無料とのこと。さすがに、石油成金A社のコミュニティー、太っ腹だ。もちろん、ホテル宿泊組も同様に無料。ホテルと、アパートの待遇のあまりの格差に、金額が同じなら文句を言ってやろうと思っていたが、無料じゃ文句の言いようもない。

帰国もエミレーツを利用し、ドバイでエミレーツのラウンジを利用したが、ここはインターネットの接続ができないのでせっかくのレポートは、帰国してから事務所に行くまで発信できない。サウジアラビア国内に入ったとたん、このブログにも接続不能となってしまった。やたらセキュリティが厳しい。

エミレーツのラウンジで、奇妙な風景を目撃した。日本人の3名が、レストラン風の休憩所のテーブルを陣取って深刻な話をしている。近づいてみると、上司と思われるひとりが、他の二人に説教している。ふたりはうつむいたまま。こんなところに来てまで、深刻な話をするなよと言いたくなる。現在、夜の2時。説教している人から「上司」肩書きをとっても、こんなに自信満々に他人を説教できるものだろうか。
偶然にも、この「上司」が飛行機で隣の席になった。通路側で、テーブルを広げたまま眠り込んでいる。こちらは窓側で、トイレに行くのも一苦労だ。案の定、他人に対する心配りが乏しいひとほど、人前で部下を説教できるのだろう。

ところで、最終日泊まったジェッダのホテルでは、黒装束の女性で、顔を出している人を何人か見かけた。どの人も彫りが深くて美人だ。アラビアの美人を黒い覆面で、夫だけにしか顔を見せないのはもったいない。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿