福島第1原発の原子炉建屋内で、放射性物質防止のため同時に開けてはいけない「二重扉」が2枚とも開いていたことが分かった。現在も大量の放水が続けられており、汚染された水や放射性物質は、ここからも漏出していたことになる。こうなると、建屋の内側に存在する「絶対に開けてはいけない」はずの原子炉格納容器への扉の状況すら怪しくなってくる。
東京電力は19日、激しい水素爆発で全体が大きく損傷した同原発3号機の原子炉建屋内を遠隔操作のロボットで調べた結果、大型機器を出し入れする二重扉が2枚とも開いていると明らかにした。
建屋全体が吹っ飛んだのに比べると扉の1枚や2枚-と思いがちだが、この事実は見逃せない。
東電は「放射性物質の放出防止のため、2枚の扉は同時に開けてはいけないものだ」とし、「原因は不明」などと詳細な説明を避けている。
現場関係者によれば、原子力発電所には、原子炉格納容器(D/W)、原子炉建屋(R/B)、タービン建屋(T/B)の3カ所に扉が存在。R/Bの扉は、事故発生時に放射性物質を閉じ込めるため、建屋内を常時負圧に維持する必要性があることから二重の自動扉を設置。当然、2つの扉が同時に開くことは「あり得ない」設計という。
しかし、実際には2つとも全開どころか、反対側の青空まで見通せてしまったのだから、どうにもならない。
地震発生時には、数人の作業員が内部にいたとみられるが、この作業員たちが脱出した際に開け放した可能性について東電では「電源の完全喪失は津波の後で、地震直後から開放されていたとは考えにくい」と否定。水素爆発の威力で吹き飛んでしまったというシナリオについても「可能性の一つ」と述べるにとどまっている。
さらに内側のD/WハッチやT/Bハッチについては、「線量が高く、状況を確認できない」というから、格納容器から建屋外に放射性物質が“ダダ漏れ”の恐れもある。
同原発をめぐっては、2号機で、無人ロボットがマジックハンドで建屋入り口の扉を開けて進入。放射線量の表示部をカメラで撮影しようとしたが、建屋内の湿度が99%と高く、入り口近くで毎時4・1ミリシーベルトを観測した後はレンズがくもり、データが読み取れなくなった。
「トレンチ」と呼ばれる作業用トンネルにたまった汚染水1万トンを、800メートル離れた集中廃棄物処理施設までホースを移送する作業では、20日午前7時現在、水位が1センチメートル低下したという。
フランスの核燃料会社アレバのアンヌ・ロベルジョン最高経営責任者(CEO)は19日、東京都内のホテルで記者会見し、福島第1原発で問題となっている大量の汚染水について「5月末までに処理施設を稼働させたい」と述べた。
同社の提案は「共沈法」と呼ばれる手法で、汚染水に特定の化学物質を入れて放射性物質を沈殿させた後、沈殿物だけ除去する方法。
1時間で50トンの汚染水を浄化する能力がある設備を取り付け、浄化後の水は汚染の程度が千〜1万分の1になるという。