ギターとビートルズと友人のお父さんと涙

aikoのライブ記事もありったけのキャパで、どうにかこうにか一段落させてみせたのですが、今回も音楽記事を…ビートルズと自分の思い出話。

ビートルズに関しては説明不要でしょう。もちろん自分が産まれた時にビートルズはすでに存在していなくて、まさに”伝説”と化していた。自分は子供の頃から親の影響で少しだけ、クラシックや洋楽、演歌を聴いたり…「マセている」といわれていたけど、初めてビートルズという存在に接したのは幼稚園の時…やっぱりマセていたのか(笑)。

よく遊んでいた近所（といっても隣町）の友達に、いつも優しくニコニコしてて、よく自分たちと遊んでくれるその子のお父さんがいたんだけど、ギターがとっても上手く、ギターを何本もコレクションしていた。自分がそれに興味を示したせいか、何度か「これが○○だよ」とかいってギターを触らせてもらったり…まぁ当時は意味が全然分からなかったんだけど。とにかく優しい人だった。自分のギター好きの原点はエリック・クラプトンにあると思っていたんだけど、よくよく考えたら、その時の経験が今の自分に作用しているのかも知れない。そしてそのお父さんの部屋の壁一面にはビートルズのポスターが何枚も貼られていた。写真の一枚も何となく「あった」と記憶している。

冬のある日、いつものようにその子の家に遊びに行って、いつものように「こんにちは」ってあいさつをしたんだけど、お父さんは少しだけ暗い笑顔で自分を迎えてくれた。そしてその日だけは自分たちと遊んでくれず、部屋で籠っていた。「どうしたんだろう？こないだ勝手にギターに触ったことに怒ってるんだろうか？」と子供ながらに不安になっていた。
トイレへ行く際だったか、そのお父さんの部屋の前を通りかかったんだけど、扉が少しだけ開いていた。そっと中を見ると…そのお父さんは片隅でギターを前に正座して、静かに泣いていた。もちろん自分はそっとその場を離れたんだけど、今まで見たことがなかったその姿に小さなショックを受けたのを覚えている。

その日の夜だったのか？記憶があいまいなんだけど、親が切り替えるテレビのチャンネルを何気に見ていて、一瞬出てきた「ビートルズのメンバー、ジョン・レノン死亡」というテロップを見て…そのお父さんが流した涙の理由が何となく…本当に何となく理解できた。思えばあれが２９年前の１２月。

その瞬間…自分も泣いた。ジョンの死が悲しかったのか怖かったのか、そのお父さんの泣いてる後ろ姿を思い出したのか…よく覚えていないんだけど、おそらくわけの分からないまま。その後からどういうわけか…友人の家に行ってお父さんと顔を合わせるのが、ほんの少しだけ嫌になった。

中学生になるまでその子とはよく遊んだけど、隣町ということもあっていつの頃からか疎遠になり、今となってはもう交流がない。あの子のお父さんは今もあのギターを持ち、そしてビートルズの曲を弾いているんだろうか？友人の家の前は今でも車でタマに通るんだけど、なぜか友人のことよりも、そのお父さんのことを思い浮かべてしまう。

そんなこともあって…この時期になるとどういうわけか、のべつまくなしにビートルズが聴きたくなってしまう。