「序の舞」

2024年08月22日 | 本・よもやま話
先ごろ読んだ「二人の美術記者」には、
井上靖と司馬遼太郎がともに惹かれた「上村松園」についても書かれていました。

そう言えば、上村松園の生涯を描いた宮尾登美子著「序の舞」を、
数十年前に読んだ記憶がありますが、内容は忘れたので改めて読んでみました。

昭和57年発行の、もう借りる人もいないような古い本です。



明治から昭和初期にかけて美人画で一世を風靡し、
女性初の文化勲章を受章した画家・上村松園の波乱に満ちた生涯が描かれています。



古い慣習を尊ぶ古都・京都が舞台。
この本の中では、松園の本名・常をもじって、主人公は津也、画号は松翠とされています。


津也の父親が津也の出生前に急死し、
母・勢以が女手一つで二人の娘を育てていく苦労はまだ序の口。

物心つく頃から絵が好きで好きでたまらず、絵の道に入る津也。
若いうちから頭角を現すが世間知らずで、父親とも慕う師匠と深い中になり、
人知れず産んだ子を里子に出すという辛い経験をするが、
無鉄砲で一途な津也は再び師匠の子を産み、
世間の冷たい視線に耐えながら、未婚の母として育てる決心をする。


上村松園は優雅で気品ある女性像を数多く描いていますが、
その絵からは想像もできない生き様の中に引きずり込まれて行く読者は、
もう、心がえぐられそうです。


コメント
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