前編はこちら→
2012年10月第2週のレポート、後編です。位ヶ原のきれいな紅葉を見下ろしながら、剣ヶ峰登頂を目指しています。
肩の小屋の山荘が見えて来ました。
おお、思っていたより大きくて立派な小屋なんだ。
乗鞍岳は楽に登頂できてしまうピークがたくさんあるイメージなので、山小屋を使う人もあまりいないだろうと、あってもそんなに大きくないかと思い込んでました。
あとで調べたら収容人数200名だそうで、なかなかの規模です。
さすが北アルプスって感じです。
ああ、いつか泊まってみたい。
何度も来ている乗鞍岳だけど、いつも畳平周辺しかうろついてなかったから今日はいろんなことが新鮮です。
もっといっぱい知ったらもっと好きになりそう。
ここからの剣ヶ峰が一番かっこよく見えました。山頂はどこかな。
もしかして…あの左端のとんがった所では…(ピンポン正解)
ま…まぁいいや。山はいつだって見た時に「ゲーあんなに登るんかい」って思わされるものだし。
上を気にせず黙々とゆっくり登ればきっと着ける。 何しろ高低差もそんなにないし。
[畳平から2.4km 標高差+400mほど]
痛い足をかばってゆっくり登ってるせいか山頂になかなか近づかない。しまいにはもう登頂なんかしないで下りちゃおうかなー…なんていつものめんどくさい思想まで出て来ました。
でも前編にも書いた通り、珍しくピークハントソウルに燃えていたプカプカは、つらくても苦しくても剣ヶ峰を目指すのでした
(大げさなんだよいちいち表現が)
高低差が400mだからってなめてたわけではありませんが、もう少し楽に済むかと多少甘く考えていたことは事実で…
それなりにタフな登山道であることに、ねんざして登ろうとしている自分の気持ちの根っこの浅さを反省しました。
もっと誠実に登ろう。 剣ヶ峰はそういう山です。
山は、自らの誠実や不誠実をそのまま身に返してくれます。
何も言わずに。時に命を奪うほどの厳しさで、わたしたち人間に教えてくれるんですね。
ゆっくり登ってる間に雲がどんどん上に昇ってきます。槍穂の眺めも南アも中アも、みるみる隠してしまいました
位ヶ原の紅葉もここまで来ると遠くなり、鮮やかさも薄く感じます。
あそこの建物が見える所が山頂だ。 うう、あとちょっと。このちょっとがしんどい。
いつか遠くから乗鞍岳を見た時に、このとんがった姿を思い出すでしょうか。
嘆きの声が出てきた時に、頂上小屋(売店のみ)が目の前に建ってて一瞬びっくりしました。
小屋前のベンチには山おやじ風の管理者のおじさんが渋い顔で座っていました。
ここに登りつく直前までさっきのゴロ岩で小屋が見えてなかったので、
顔をあげた瞬間小屋があっておじさんがいて、目があったものの一瞬お互い無言で、
会釈だけするという変な空気が生まれました。
今わたしちょっと、ひとりごとをつぶやいてたのよね…
普通に聞かれてたのかも。はずかちい*´д`*
おじさんがいなくなってから撮影→
剣ヶ峰山頂から見える高天ヶ原。
やっと山頂につきました。プカプカ的には人混みレベルでした。(写真は人が減った瞬間を撮影)
写真だけ見ると空は晴れてますが、絶妙なタイミングで山々の展望はすっかり雲に埋もれて何も見えなくなりました。
あるね。 あるよねー。 こういう展開。
槍も穂高も八ヶ岳も、さっき見えてた山はみんな姿を隠してしまいました。
朝早い内に富士見岳に登って眺めておいてよかったです。
今日の山行はねんざで始まり、その他もろもろ何気に裏目裏目が恨めしいパターンが続いてます。
けどそんなこと関係ないさ。楽しければそれでいいのさ。強制ポジティブ。
権現池(火口湖)がきれいな色です。大昔にここが噴火口になって山が崩れたんですね。
乗鞍岳って噴火する前は富士山みたいに立派なひとつの山体だったのかもなぁ。妄想が楽しい。
ほんのちょっとの太陽の光も奪われ、辺りは薄暗くなりました。吹く風も強くなり、
体感温度は真っ逆さまに低下。
風がとんでもなく冷たいです。寒くて寒くてたまりません。ふおおおおお
いかん!こりゃあいかん!
10月の標高3000mの山です。いつもの自分なら夏でも防寒具をしっかり持ってくるんですけど
乗鞍岳を甘く見ていた冴えないプカプカは、今日の荷物を少しでも軽くしたくて、いつも必ず持ってくるはずの山用ダウンジャケットを置いて来ました。
山に不誠実な人の身に返ってくる無言の厳しさとは、こういうことです。
(しっぺ返し、その1)
こういうこと時々やってるよね。いつかの白馬岳初テント泊とかね。まったくトホホだね。
かろうじてネックゲーターと毛糸の手袋は持って来たので、レインウェアの上着と合わせてごはんを食べる時間だけはなんとか持ちこたえました。
インスタントのきつねうどんでホーっとするのもつかの間、汁の冷め方も尋常ではない。…
ねんざした足首はさっきからずーっとズキズキしているので、下山する前にせめて様子だけはみておいた方がいいかと、渋々靴下を脱いでみました。 (くわしくはこちらをお読みください→「山で足をねんざ」)
ひー!風がつめたい!岩がつめたい!
痛みの割にはこの時はまだ腫れてなかったので(夜から腫れました)冷たい風にかじかんだ手でフェルビナク製剤の湿布を貼って、あわてて靴下を履き直しました。
そんなことも含めて休憩は一時間ちょっと。天気はこれ以上よくなりそうもないので、鼻水をすすりながら半ば退散気味に出立しました。
(不誠実のしっぺ返し、その2)
足首のねんざは思っていたより深刻で、下山が過酷なものになりました。
剣ヶ峰の登山道は岩や石がゴロゴロに転がって平らな足場があまりないので、
ちょっとした角度でも足首が曲がると激痛が走り、しばらく固まって身動きが取れなくなります。
ステッキは一本しか持ってこなかったので片手だけでは痛い足を上手にカバーできず、何度も痛みにフリーズしながらかろうじて肩の小屋までたどり着きました。
肩の小屋裏にバス停[肩の小屋口]に下りる道があります。
位ヶ原に行く場合もこのルートを下ります。
位ヶ原まで下りて歩く計画は、この状態ではさすがに無理とわかりました。
このまま畳平まで平坦な道を歩いて戻り、バスに乗ってすごすご帰るしかないか…。
…でもそんなのいやだ。
ピークハントソウルの次は、紅葉ハントソウルが燃えてきました。
あのきれいな紅葉に近付きもしないでこのまま帰るなんて、いーやーだ~
道標には肩の小屋口まで15分と書いてあるし(※健脚タイム。一般的に下り20分~25分)
ちょっと道の様子を見てみよう。
この足場ならいけるかな?
石も小粒だし傾斜もきつくないし、
平らな所を選んで足を置いていけそう…
もちろん20分なんてコースタイム通りに着けるはずはないけど、肩の小屋口まで下りた時刻によってバスに乗るなり、先へ進むなりしてみようと思い下り始めてみました。
剣ヶ峰山頂付近から見た
肩の小屋口バス停の望遠→
歩き疲れたらコース途中でバスに乗る、というヘタレプランの“保険”が、こんな場面で役に立つとは…
肩の小屋裏ルートの道の紅葉はあまり色っぽい感じがありません。
夏は高山植物のお花がたくさん咲きそうです。
高度が下がるにしたがって、少しずつチングルマやミヤマダイコンソウなどの赤い草紅葉が増えます。
チングルマの花でいっぱいになった夏を見てみたいな~
バス停に近づくと、ナナカマドなどの低木がきれいに紅葉しているのがところどころに目立ってきました。
とても慎重に歩いてきたので40分位かかってしまったけど、ようやく[肩の小屋口]バス停に着きました。
あと10分ほどで下りのバス便が到着する頃です。一時間1本しかないシャトルバス。
ここから先が紅葉のきれいどころです。 ああ、歩きたい。 先へ進みたい。
だけど今の足で次のバス停[宝徳霊神]に一時間以内にたどり着ける自信がありません。
次の便に乗り損なったらその次は16時台になる。その展開はいざって時に危険だから、もうここを引き際にしよう。
きれいな紅葉エリアに入る直前でリタイアとなってしまったけど、自分のせいだから仕方ありません
今日は、どこから紅葉がきれいなのか知ることができた。 ネットで手に入らない情報を知り得た。
またここにおいでって乗鞍くんが言ってるんだよね。
この写真はさっき、富士見岳辺りから望遠レンズで撮影した、肩の小屋口バス停近くの紅葉です。
せめてこれを間近に見たくてバス停から少し左へ歩いてみたんですが、
上からはすぐ近くに見えたけど実際はかなり距離があったようで、なかなかたどり着きません。
痛い足でひこひこ歩いてる内にバスの時間が迫ってきたので、あきらめてバス停に戻りました。
バスは2台やってきて、2台目はまだ誰も乗ってなかったので好きな席に座れました。
朝は窓際に座れなかったので、今度は窓にべったり。↓多分、宝徳霊神の辺りです。
バスを下りてこれをゆっくり眺めたかった。 また次こそは!
↓これは宝徳霊神から位ヶ原山荘に向かう途中からの眺めです。左にその山荘が写ってます。
前編でも書いたけど、下り線では[位ヶ原山荘]からバスに乗る人の数が結構多かったので、
秋は上から歩いて下りてくる行程が定番みたいです。
またいつか、秋の乗鞍岳にあそびに行きたいな。
余談ですが昔、乗鞍(のりくら)岳は『位(くらい)山』と呼ばれてたことがあるそうです。
位ヶ原(くらいがはら)って地名はそこから来てるんですかね~
★
帰りは乗鞍高原の温泉か白骨温泉に立ち寄るつもりだったけど、なんか混んでそうな気がしたのと
ねんざした足をあたためるのはよくないと思って、すぐ帰路につきました。
ところがなんだか日が暮れると寒くなってきて、山梨の温泉に入りたくなったので、
結局ほったらかし温泉に立ち寄り湯してきました
ここは大好きな温泉で、山登りをはじめる前からよく行ってたんです。
当時はまだ露天風呂もひとつで内湯もなくて、洗い場は屋外。
まだ知名度も低かったからいつもガラガラに空いてました。日の出から営業開始なのは変わってません。
今は風呂数も増えて料金も値上がりし、評判よく人気も高まったようで
平日でも常に混雑して公共浴場っぽくなって来ました。
以前のように静かに景色を楽しめるお風呂ではなくなったけど、やっぱり好きです。ここの露天風呂。
ほったらかし温泉につづくフルーツラインの、真っ暗で街灯のない場所で車を停めて、
見下ろす山梨の盆地の夜景にしばしうるうるしてました
この景色にはいろんな思い出があります。
わたしをノスタルジックにさせる、大好きでせつない景色。
高速代節約のため山梨から八王子まで久しぶりに下道を走りました。
温泉に入ったからとはいえ、仮眠もせず夕食も食べずに走ったのに、千葉の家に帰り着いたのは深夜2時近くでした。
こればっかり言ってるけど…。やっぱりまた言う。
もーやだ。長距離の運転はもういやだー
(剣ヶ峰レポート おしまい)
前編はこちら→
このブログがつづけられるのは、いつもみなさまが応援してくれるからなんです。
本当に、見てくれてる人がいると思えるだけで、全然気持ちってちがうんですね…
気持ちよさそう~。
乗鞍は毎年、マラソン大会に行くので好きなところです。
今度は登山に行きたくなりました☆
あんなきれいな景色の場所でいろんな趣味が楽しめるなんてすばらしいですね。
yamanoboriさんが登る時はお天気よくなりますように。
読んでてこちらも痛いやら景色綺麗やら(笑)
自分は乗鞍小さい頃行ったらしいのですが、覚えてないんですよね~^^;紅葉も結構綺麗なんですね!
来年考えてみようかな・・・
あと、ほったらかし温泉からの夜景綺麗ですよね^^
しかし千葉に着いたの2時て^^;
そりゃ~長距離嫌だ~なりますよ^^;
自分ならお金と時間を天秤にかけて、そこに疲労が重なれば高速選択して千葉まで帰りますよ~(笑)
しかしこれまた都内がね~・・・
八王子あたりに家があったら~って思うことありません?(笑)
やっと全部読み終えました。
そして最新号にたどり着きました。
すっご~く楽しかったです。
写真を見ながら文章を読んでいると自分で登っているように感じます。
2回目に登る山のレポートは、私は行ったことがないにもかかわらず、
知っているような錯覚におちいっています。
あとステッキの使い方とても丁寧に教えてくださって、ありがとうございました。なんだかとても嬉しい反面 、申し訳なくも思って、お礼が遅れてしまいましたが、やはり嬉しかったです。
私は、やはり山には当分行けそうにありませんが、こんな世界があるなんて、プカプカ姉さん(勝手に呼んでしまっていますm(__)m)、すてきです。このレポートで教えていただきました。
私も体力つけて、いつかは、「かっちょい~〇〇山」と叫びたいです。
足の怪我は、いかがですか?
早くよくなるといいです。
過去の記録も含め とても楽しく読ませて頂いています
私は 山登りは始めたばかりですが プカプカさんのおかげですっかり山の魅力にハマってしまいました
プカプカさんの 山登りを始めたばかりの頃の記録に勇気をもらいながら 来年は北アルプスをテン泊縦走って夢が暴走してます。 冬の間は 近場の低山に通って体力つけなきゃですね
これからも ブログ楽しみにしてますょ
捻挫、大変でしたね。
もうすっかり良くなられたのでしょうか?
単独行で体調がちょっとでも悪くなると、急に心細くなりますよね。
でも、無事に下りなければならないし、家まで辿り着かなければならないし、そんな状態でも山を楽しみたいし・・・。
それにしても乗鞍の紅葉って、こんなにも綺麗なんですね。
いつもながら写真に見入ってしまいました。
私は今年の秋山も、紅葉のピークを外しまくっています。これからは、富士山が綺麗に見える季節ですが、
夜中や早朝に起きるのが益々辛くなる季節でもありますよね~。
八方尾根の続きも楽しみにしています(のんびり作って下さいね)。
わたしも高速代が常時半額だったらぱぱっと乗って帰るんですけどねぇ。
お金を節約するための結果が1時~3時の帰宅なんです;;
八王子に家ですか。確かに千葉よりはずっと山に近いですね。しかしどうせならわたしは長野県に住みたいです(涙)
姉さんって言われてもいい歳ではありますが、キャラ的には違和感ありまくりです~
ステッキの使い方の話は、ただコメントへ返信しただけなのでそれについて更にお礼とか、全然いりませんからお気になさらず。
オリオンさんも買って来てもらった登山靴で土や岩や木の根の道を歩けるようになったらいいですね。
登山靴で舗装された道を歩いてもかえって疲れるだけですから…
さっちんさんのように最近山登りをはじめました、という方が本当にたくさんお見えになるんです。
わたしの初期レポで勇気を得ただなんて…とてもうれしいお言葉です。
みっともなくても恥ずかしくても、正直にヘタレっぷりを書いた甲斐があるってもんです^^
きっとさっちんさんが北アルプステン泊縦走するのも、もうすぐですね。
わたしゃーもうテント背負って縦走なんて、絶対無理です(TT)さっちんさんに望みを託します。
わたしまでうるうるしちゃったじゃないですか。二人して何してんでしょうね^^
ナンさんの正直な文章にはわたしもいつも勇気づけられてます。自分だけじゃないんだなって思えるから。
失敗とか恥ずかしい話とか、乗り越えた時の感動とか、そういうものを素直に書いてる山登りの女性のブログってあまり知らないので、
ナンさんにはとても共通点を感じるんです。なんかいっつもそんなことばっかり言ってますねぇわたし(´`)
話変わって。
単独行では体調不良や天候変化や、ルート状況が読めない時なども普段の数倍、不安感が増しますよね。特に前後に歩く人が誰もいない時なんか。
いざとなったらビバークですよ。怖い。怖すぎる。できますか?ビバーク。ぶるぶる((゜д゜))
ナンさんは今年も紅葉をはずしてしまいましたか…
まだ関東の低山ならどこかあるかしら。あとはカラマツの黄葉とか。
わたしも結局、運転拒否症状とかゆううつに負けて、思った通りに行動できませんでした。
富士山はもう冠雪して今年もきれいになってきましたね。
これから空気も澄んでいい季節になりますね。寒さと暗さに負けずに起きられるかなぁ(/_;)
ねんざ、結構しつこいんです。もう一ヶ月を過ぎたのに痛みがなかなか取れなくて、
更に先日、公園をお散歩中にふかふかした草地でちょっとひねっただけで、痛みがぶり返してしまいました。