経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

‟官僚離れ”は 是正できるのか (下)

2023-08-25 07:17:55 | なし
◇ ‟国家用務員”に成り下がった官僚たち = 午前2時。東京・霞が関を通ると、各官庁ビルが煌々と輝いている。そして裏玄関には、タクシーが長蛇の列。国会開会中にだけ見られる光景だ。ビルのなかではたくさんの官僚が、与野党議員がその日に国会で行う予定の質問に対する政府側の答弁を作成中。あるいは質問内容が届くのを待っている。これが、いわゆる‟国会待機”と呼ばれる現象だ。こんなに不経済な慣行は、あまり例をみない。

与野党側もその不合理さに気付き、ことし6月「速やかな通告に努める」ことで合意した。その結果、先の通常国会では官僚がすべての答弁案を作成し終えた時刻は、昨年の臨時国会より1時間14分早まっている。だが、それでも終了時刻は平均で午前1時42分という状態。働き方改革と言うには、ほど遠い。いま‟官僚離れ”の一因だと指摘されている。

しかし‟国会待機”は、1950年代から始まった現象。それでも‟官僚離れ”は起きなかった。当時の若い官僚はこの待機時間を利用して、政策論議を戦わせていたように思う。そこで新しい政策ビジョンがまとまると、幹部を経て大臣へ。重大な政策や法律改正が実現することも多かった。大臣に国会で読ませる答弁書に、こんな新政策論を織り込ませる技術も横行したようだ。

当時の若手官僚は、自分たちが日本を動かし、日本の将来を決めるのだという気概を持っていた。だが、いまはそれがない。大きな原因は首相官邸が大きな権限を持ち、重要な政策を決定するようになったからだ。そこで決まった政策が各官庁へ降ろされ、細かい肉付けがされる。つまり各官庁の官僚は、官邸の下請けになってしまった。このことが、いいか悪いかは判定が難しい。しかし、いま若者が官僚を敬遠する大きな原因となっていることは否めない。ある若手官僚は「われわれは国家用務員に成り下がった」と嘆いていた。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +276.95円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

‟官僚離れ”は 是正できるのか (上)

2023-08-24 07:06:20 | なし
◇ 給与の引き上げだけでは難しい = 人事院は国会と内閣に対して「国家公務員の給与を大幅に引き上げるよう」勧告した。月給やボーナスのほか初任給も引き上げ、今年度の平均所得を3.3%増額するよう求めている。また選択的週休3日制の導入など、働き方改革の推進についても要請した。実現すれば年間給与は平均10万5000円増え、過去5年の平均に比べて約10倍のベースアップになるという。

基本的には、民間の賃上げが大幅だったことに対応した措置。だが根底には、若者の‟官僚離れ”をなんとか是正したいという危機感が流れているようだ。たとえば、ことしの総合職試験。申込者は1万4372人で過去2番目に少なかった。この結果、合格率は7.1倍で過去最低。さらに総合職の入省5年未満の退職率は、16年度の採用者で10%に達している。

政府も早期退職者を減らすため、いろいろ対策は講じてきた。その1つが、選択的週休3日制の拡大。育児や介護のほか、フレックスタイムを利用する職員が総勤務時間は減らさずに月-金のうちの1日を休めるようにすることを検討中だ。しかし‟官僚離れ”の傾向はなかなか止まりそうにない。東大卒の若手官僚も、めっきり減った。

そうしたなかで最近、大きな話題となっているのが世に言う「国会待機」の問題。与野党議員が国会で質問する内容を受け取り、その答弁作りを深夜まで行う作業だ。働き方改革を妨げるばかりか、きわめて不経済な結果を生んでいる。これも若者が官僚を敬遠する原因だと指摘されているのだが、因果関係はそんなに単純なものではない。問題の本質は、もっと深いところにあるのではないか。

                    (続きは明日)

        ≪23日の日経平均 = 上げ +153.55円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

企業の業績は 絶好調 : 4-6月期

2023-08-23 07:27:52 | 利益
◇ それでも株価が軟調な理由 = 上場企業の決算発表がほぼ出揃った。日経新聞が発表を終えた1167社の決算を集計したところによると、4-6月期の純利益は前年比50.4%の増加だった。このうち製造業は12.0%の増益。半導体の供給回復、値上げ、円安が利益を押し上げた。また非製造業は2.2倍の増益。コロナ規制の解除による経済の正常化と値上げが大きく貢献している。利益の金額は過去最大を更新。全体として、企業の業績は絶好調だ。

売り上げをみると、製造業は8.7%の増加。非製造業も6.6%の増加だった。家計調査によると、4-6月期は全世帯の名目消費支出は1.0%減少している。したがって売り上げ増加分は、ほとんどが値上げによるものだったと考えられる。その一方で原材料やエネルギーの値上がりが落ち着いたため、利益が大幅に増大した。

ところが株価は、このところ下がり気味。日経平均は先週1000円を超す大幅な値下がりだった。これは市場が、その先の見通しについて警戒感を持ち始めたためだろう。たとえば中国経済の不調。その兆候は4-6月期の決算にも表れてきている。製造業のなかで中国への依存度が高い化学は27.5%の減益、非鉄金属も58.1%の減益だった。

さらに値上げは企業の利益を増加させたが、消費者の節約志向を強める結果ももたらした。賃金上昇が物価高に追い付かないため、消費者の実質所得は減少しつつある。この傾向が続けば、企業は値引き競争に追い込まれるかもしれない。いまは絶好調だが、この明るさはどこまで続くのか。株式市場は、それを心配しているようだ。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +291.07円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

円安の副作用が 深刻に

2023-08-22 07:34:58 | 円相場
◇ 物価上昇が消費を抑制 = 外国為替市場では先週17日、円の対ドル相場が一時146.5円まで下落した。この水準は昨年9月、政府が介入したときの145.9円を下回っている。このため投機筋も介入を警戒して、やや円売りをためらっているのが現状だ。しかし最近の円相場の水準は、コロナ前に比べると45円も安い。しかも米ドル以外の通貨に対しても値を下げており、日本の輸入物価を高騰させている。

円安が進行した原因は明らか。アメリカでは消費者物価が13か月ぶりに反騰、小売り売上高も予想以上に堅調だった。このためFRBによる利上げが長引くと予想され、長期金利が4.3%程度にまで上昇。これに対して日銀は長期金利の上限を1%まで許容することに姿勢を修正したが、実際には0.65%程度に抑え込んでいる。その結果、日米間の金利差はむしろ拡大、これが円安を進行させることになった。

円安は輸入物価の上昇を招き、物価高の大きな原因となる。たとえば7月の消費者物価は、食料品とエネルギーを除いても前年比4.3%の上昇だった。これが平均的な賃上げ率を上回ったため、実質所得は減少。家計の消費支出を減退させる結果となっている。そして1つの重大な変化が現われた。これまでは円安が株高をもたらしてきたが、最近は円安は株安に。企業が物価高による消費の減退を心配するようになったからである。

要するに、円安の副作用が許容できる範囲を超えてきたと言えるだろう。にもかかわらず、日銀は相変わらず超金融緩和に固執し続ける。いったい何のためのゼロ金利政策なのか。日銀は弁明すべきだろう。日銀が円安の進行を助長する政策を続けながら、政府は「介入も辞さない」と言う。こんな変てこな政策を見て、世界中が笑っている。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +114.88円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2023-08-21 07:26:21 | 株価
◇ 中国経済の不調が最大の不安材料 = ダウ平均は先週781ドルの値下がり。終り値は3万4501ドルで、ちょうど1か月前の水準に逆戻りした。格付け会社フィッチが70行以上の銀行を格下げすると発表して、金融株が軒並み安。また7月の小売り売上高が予想より伸びて、FRBによる金融引き締めが長引くという予測が強まった。市場ではまだ‟軟着陸”への期待が大勢を占めているが、その勢いはやや弱まってきている。

日経平均は先週1023円の大幅な値下がり。終り値は3万1451円で、6月1日の水準に逆戻りした。3月期決算の見通しが6%の増益となるなど好材料も発表されたが、株価は反応せず。というのも、その先の展望がにわかに暗くなってきたからだ。具体的には、FRBによる利上げがまだ続きそうなこと。さらに大きいのは、中国経済の不調が予想以上に厳しいこと。市場には弱気ムードが急速に広がっている。

ニューヨーク市場の場合は、FRBによる利上げ継続見通しが最大の不安要因。それに中国経済が加わった感じ。これに対して東京市場の場合は、中国が最大の不安要因。これにFRBの利上げが加わった感じ。したがって、日経平均は今後も中国経済の動向に影響される度合いが大きい。もう1つ、円安が進んだが株価は上がらなくなった。その原因を究明することも重要だろう。

今週は25日に、8月の東京都区部・消費者物価、7月の企業向けサービス価格。アメリカでは22日に、7月の中古住宅販売。23日に、7月の新築住宅販売が発表される。

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>