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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

レアアース戦争か !? (上)

2019-06-07 07:17:30 | 中国
◇ 中国がアメリカ向け禁輸の脅し = 中国共産党機関紙の人民日報は「アメリカが中国のレアアースで造った製品を用いて中国の発展を抑え込もうと考えているなら、中国人民は決して納得しない」という趣旨の論説を掲載した。これはアメリカ向けのレアアース輸出を規制する可能性を示唆したものと受け取られている。仮に禁輸が実行されれば、米中貿易戦争はさらに深刻化する。また日本に対する影響も、計り知れないほど大きい。

レアアースというのは、希土類と称される一群の元素。まことに不思議な力を持っており、たとえばセリウムは自動車用の排ガス触媒に混ぜると効果が格段にアップ。ランタンはレンズの透過率を高めるし、ネオジムは磁石の磁性を大幅に強める。要するにAIやハイテク製品には欠かせない原料だ。

ところがレアアースの生産量は、中国が圧倒的に多い。全世界の7割を占め、オーストラリアやアメリカの生産量を大きく引き離している。アメリカは自国の生産だけでは足りず、18年には中国から1万5000トンを輸入した。トランプ大統領の中国に対する制裁関税でも、レアアースについては関税引き上げを除外している。

したがって仮に中国がレアアースの禁輸を強行すれば、アメリカは報復する可能性が強い。ただレアアースの禁輸は、中国にとっても被害が出る。第三国経由でアメリカに流れるのを防ぐためには、全世界向けに禁輸しなければならない。そうなれば貴重な輸出資源を失うことになる。ただ中国がハラをくくって、禁輸を実行する可能性は否定できない。その場合、世界的にレアアースは不足する。いちばん打撃を受けるのは、日本かもしれない。

       ≪6日の日経平均 = 下げ -2.06円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

市場 vs FRB の駆け引きが始まる

2019-06-06 06:54:43 | アメリカ
◇ 早くも「7月0.5%下げ」の観測 = FRBのパウエル議長は4日、シカゴで講演し「貿易交渉がアメリカ経済の成長に及ぼす影響を注視し、強い雇用の維持と2%の物価上昇目的に向けて適切な行動をとる」と発言した。株式市場はこれを好感、4日のダウ平均は512ドルの大幅な上昇。これを受けて5日の日経平均も368円値上がりした。ただアメリカの長期金利が低下したため、円の対ドル相場は一時107円台にまで上昇している。

このパウエル発言は「アメリカ経済が実際に後退しなくても、その危険性があれば金融を緩和する」という“予防的な利下げ”を意味するものと解釈されている。そして市場では「年内に利下げ」「9月に利下げ」「7月に利下げ」などの観測が、あっという間に飛び交い始めた。利下げの幅については、0.5%の見方が多いようだ。

過去の経験からすると、FRBが予防的緩和の姿勢を見せると、市場では「それほど景気は危ないのか」という心配が強まり、株価は一時的に下げる。早期に大幅な利下げを求める“催促”が始まるわけだ。ところがFRBは、なるべき遅く、小幅な利下げで済ませたい。そこで市場とFRBの心理的な綱引きが始まる。

トランプ大統領は、どう出るのか。パウエル議長は貿易交渉を心配のタネに挙げたが、これはある意味ではトランプ政策に対する批判。トランプ氏が黙っていられるかどうか。1%の利下げを強く主張してきただけに、何かをつぶやきたくなるのでは。市場対FRBの駆け引きにトランプさんが参入してくると、情勢はもっと複雑になる。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +367.56円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


市場は 景気後退を織り込み中 (下)

2019-06-05 07:37:37 | 株価
◇ アメリカ経済が下向けば世界同時不況へ = IMF(国際通貨基金)は4月の報告書で「中国経済は19年後半に、成長の再加速が見込まれる」と、きわめて楽観的な見方を公表した。中国政府による大規模な景気対策が、効果を挙げると考えたからである。しかし米中貿易戦争が長引くにつれて、こうした楽観論は消滅した。事実、中国の生産や小売り高はなお縮小し続けている。4月の新車販売台数は、前年より15%も減った。

中国経済の不振で、日本の輸出が激減。製造業は売り上げや利益の縮小に悩み始めた。非製造業は頑張っているが、景気は全体として後退期に入ったという見方も強くなっている。このような傾向は、韓国や台湾、東南アジア諸国でも同様だ。また中国向けの輸出が多いEUの景気も下向きで、ドイツでさえもゼロ成長に陥っている。

こうしたなかで、アメリカだけは好況を維持している。しかしトランプ減税の効果は、そろそろ消失する。関税引き上げ競争の悪影響は、アメリカ自身にも及んできた。小売り売上高は伸び悩み、最近の調査だと製造業の景況感指数も10年ぶりの低さに落ちてきた。トランプ大統領がFRBに利下げの圧力を加えているのも、不況の到来を心配しているからに他ならない。

現在の行き詰まった局面を打開するには、なんと言っても米中貿易戦争の終結が必要だ。しかし中国側は保有するアメリカ国債を大量に売ったり、レアメタルの禁輸をほのめかすなど、徹底抗戦の構え。市場はこうした状況を織り込み始め、安全資産の国債や日本円に資金を移しつつある。5月だけではなく、「6月も売り」になるかもしれない。

       ≪4日の日経平均 = 下げ -2.34円 ≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

市場は 景気後退を織り込み中 (上)

2019-06-04 07:49:16 | 景気
◇ 中国経済の下期回復は期待薄 = 株式市場では、ことしも「5月は売り」の格言が通用した。ダウ平均も日経平均も、5週連続で下落。月間の下げ幅はダウが1778ドル、日経平均が1658円となった。この格言はヘッジファンドの多くが5月決算で、利益確定の売りを出すためと言われる。だが、ことしは少し様子が違う。投資家は明らかに世界的な景気後退を意識し、リスクから遠ざかろうとし始めたように思われる。

株価の下げ材料となったのは、まず米中貿易戦争の見通し。アメリカが中国向けの制裁関税を強化したのに対して、中国も直ちに報復関税で応酬した。今月下旬のG20大阪会議でトランプ大統領と習主席が面談しても、いまの情勢では前向きな結果は望めないという見方が圧倒的に強まっている。さらにトランプ大統領は、メキシコに対しても関税攻勢を開始した。

関税の引き上げ競争は、言うまでもなく貿易を阻害する。周辺国を含めて輸出が減少すれば、各国の景気には下向きの圧力が加わる。そのうえ多くの企業が高関税を逃れようと、生産拠点の移動を開始する。これによって従来の供給ルートが維持できなくなるが、これが関係国に与える影響も意外に大きい。

こうした混乱のなかでも、特に焦点となるのは中国だ。その中国経済は昨年後半から不調に陥り、GDP成長率が鈍化している。ただ中国政府による巨額の財政支出によって、ことし後半からは回復に向かうという見方も強まっていた。しかし米中貿易戦争が長引けば、その期待も吹き飛ぶだろう。最近の株式市場はその可能性を認識し、中国を中心とする世界的な景気後退に備える準備をしているように思われる。

                               (続きは明日)

       ≪3日の日経平均 = 下げ -190.31円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-06-03 07:49:36 | 株価
◇ 日米ともに5月は全週下げ = ダウ平均は先週675ドルの下げ。日経平均も516円の下落だった。これで5月の5週間は、日米の株価がすべて値下がりしたことになる。月間でみると、ダウは1778ドル、日経平均は1658円の下落。全週下げた割には、小幅な下げだったと言えるかもしれない。それでもダウは2万5000ドルを割り込み、日経平均は2万円の大台割れが心配される水準にまで低下した。やっぱり、ことしも「5月は売り」だった。

米中貿易戦争に決着のメドが立たないこと、欧州議会選挙でポピュリズム政党が伸長したこと、さらにトランプ大統領がメキシコに対して制裁関税を課したこと。これらの国際情勢が、すべて売り材料になってしまった。加えて東京市場の場合は、日米貿易交渉に対する警戒感、それにアメリカの長期金利が下がったことによる円高の進行も作用した。

1か月間も株価が下落したことで、ニューヨーク市場ではFRBの金利引き下げを期待する声が強まっている。今週あたりから、FRBがどう反応するのかに関心が高まるだろう。東京市場ではいっそう明確になった割安感に、内外の投資家がどう動くのか。日経平均は2万円が抵抗線になるのか。6月も、株価の予測はむずかしい。

今週は3日に、1-3月期の法人企業統計と5月の新車販売台数。7日に、4月の毎月勤労統計、家計調査、景気動向指数。アメリカでは3日に、5月のISM製造業景況指数。5日に、5月のISM非製造業景況指数。6日に、4月の貿易統計。7日に、5月の雇用統計が発表される。

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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