経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

今週のポイント

2018-03-26 07:22:55 | 株価
◇ 貿易戦争の拡大に怯える市場 = 世界の株式市場は、時ならぬ春の嵐に見舞われた。トランプ大統領が中国からの輸入品に高関税を課す制裁措置を決定。また鉄鋼・アルミについての輸入制限も発動した。これに対して中国側も、アメリカからの輸入品に報復関税をかけると発表。貿易戦争が一気に燃え上がる危険性が高まってきた。このため世界の株式市場は、軒並み大幅に値を下げている。

中国に対する制裁措置が発表された22日、ニューヨーク市場ではダウ平均が724ドルの大幅な下げを演じた。終り値では1か月半ぶりに2万4000ドルを割り込んでいる。あくる23日も425ドルの続落だった。この警戒感はヨーロッパ、アジアにも飛び火し、23日の日経平均は974円の大幅安に。5か月ぶりに2万1000円を下回った。円相場も1年4か月ぶりに104円台まで上昇している。

結局、ダウ平均は先週1413ドルの大幅下落。あのリーマン・ショック直後以来の週間下げ幅を記録した。日経平均も1059円の値下がりだった。アメリカ政府は中国に対する商品別の関税率などを近く発表する。中国も報復関税の拡大を検討中と伝えられる。したがって、貿易戦争がすぐに鎮静するような状況にはない。当面は米中両国の出方と、それが企業の収益にどんな影響を与えるか。そこに注目して行くしかないだろう。

今週は27日に、2月の企業向けサービス価格。29日に、2月の商業動態統計。30日に、2月の労働力調査、鉱工業生産、消費者物価。アメリカでは27日に、3月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、10-12月期のGDP確定値。また中国が30日に、3月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-03-25 07:38:16 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪25≫ マネー全盛期  = 再び動く歩道に乗って、いちばん奥の部屋に戻る。そこでラフマが天井の一角を指さすと、部屋の雰囲気ががらりと変わった。展示されていたコン棒や弓矢が美しい色の貝殻や石に変わり、壁の大きな絵も古代人がウサギと貝殻を交換する図柄に一変した。

「こんどは通貨の歴史です。貝殻や石などの自然物から、人間が鋳造した金属のコイン。さらに近世に入ると、中央銀行が発行する紙幣が使われるようになります。地球では、どうだったのでしょうね」

ショッピー館長の言葉に、うなずくばかり。そう、中学や高校で習った通りだ。地球の人間もこの国の人たちも、全く同じ道を歩んで進歩してきたんだ。不思議だなあ。

そんなことを考えているうちに、ショッピー館長は急ぎ足で行ってしまう。まるで「この辺の歴史はよくご存じでしょうから」と言っているようだ。この人はぼくの知識を、どのくらい知っているのだろう。頭のなかをすっかり見透かされているようで、ちょっと気持ちが悪い。

「この辺りからは、400年ほど前の展示が始まります。機械経済時代が成熟期に入り、社会や経済や政治までがものすごい勢いで変わり出しました。私たちはここからチャイコ星が放射能で汚染されるまでの約80年間を『滝つぼ前時代』と名付けました。つまり河の流れが滝つぼに近づいて異常に速くなり、最後にはこのダーストン星への脱出となるわけです。
そのころの政治体制は、選挙による議会制民主主義でした。政府は景気を悪くすると、選挙で負けてしまう。ですから財政・金融面からの景気刺激策をとり続け、中央銀行には超金融緩和策を継続するよう要求したのです」

この話も、ぼくが飛び出す前の地球の状況によく似ているなあ。日本でも、ぼくが生まれたころ『異次元緩和』とか『ゼロ金利』なんていう言葉が流行っていたらしい。この国では300年以上も前に、そんな経験をしたんだ。

「景気対策が長いこと続き、財政・金融の両面から大量のおカネが世の中に供給されました。その結果、おカネを中心とする新しい経済領域が誕生したのです。私たちはこれを“マネー経済領域”と名付けました。経済の歴史は3000年以上も前にさかのぼりますが、ずっとモノを作ったり運んだりすることが中心の“古典的経済領域”にとどまっていたのです。
そこにマネー経済領域が加わり、猛烈な勢いで膨張しました。株価や貴金属の値段が高騰し、景気の好調が持続したようにみえました。ところが結局は、これが社会や政治に大変動を惹き起こすことになります」

                              (続きは来週日曜日)


黒田日銀総裁の 光と闇 (下)

2018-03-24 07:43:56 | 日銀
◇ 安倍首相と心中する形に = 黒田総裁は“異次元緩和”の余韻が残るなかで、任期を全うしたかったのかもしれない。世界を見渡せばアメリカは着々と金融引き締めを進め、EUも緩和政策から離脱しようとしている。ところが日銀は身動きがとれない。緩和策の強化はムリだし、といって緩和策からの脱出もできない。ただ副作用が累積して行くのを眺めるばかり。そんなときに再任が決まってしまった。

実は黒田総裁の再任は、安倍首相の強い意向によるものだ。まず「ここで日銀総裁を交代させれば、アベノミックスは失敗した」と受け取られる可能性がある。さらに9月の自民党総裁選と来年の消費税再引き上げを控えて、景気の失速は許されない。したがって黒田流の緩和政策は持続されなければならない。安倍首相の心情は、こうだったのだろう。

その線に沿って、安倍首相は副総裁に若田部早大教授と雨宮日銀理事を任命した。この2人は名だたるリフレ派。つまり現行の緩和政策の推進論者である。こうして黒田総裁は、緩和政策からの脱出も封じられてしまった。日銀の金融政策はいっそう硬直的になり、その副作用が累増して行く公算が大きい。

副作用のなかで意外に大きいのは、預金金利がゼロになったこと。たとえば定期預金に2%の利子が付けば、預金者は年間17兆円の収入を得ることができる。それがなくなったから、家計は節約に走り消費が伸びない。黒田総裁の再任に反対した野党は「物価2%の達成に失敗したこと」を理由に挙げたが、これはお角違い。突っ込むべきことは、ゼロ預金金利の弊害だったろう。

      ≪23日の日経平均 = 下げ -974.13円≫

      【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】   


黒田日銀総裁の 光と闇 (上)

2018-03-23 05:40:06 | 日銀
◇ 異次元緩和の輝きは消滅 = 黒田日銀総裁の再任が決まった。任期は23年4月までの5年間。日銀総裁の再任は、山際総裁以来57年ぶりのことである。ゼロ金利と国債の大量買い入れという大胆な金融緩和政策を引っ提げて5年前に登場した黒田総裁は、世界中を驚かせたと言ってもいい。アベノミックスの一翼を担って、株価の上昇や雇用の増大に大きく貢献したことも事実である。

たとえば5年前と現在を比べると、日経平均株価はほぼⅠ万円の値上がり。名目GDPは約1割の増大。失業率は25年ぶりの低さに。企業の利益は過去最高の水準に達している。世界同時好況の影響にも恵まれたが、”黒田バズーカ”と呼ばれた超金融緩和政策がそれなりの効果を発揮したことは確かだろう。

だが、この異次元緩和も時の経過とともに、すっかり色あせてしまった。日銀がいくら現金を供給しても、企業や個人の借り入れは一向に増えない。かつての栄光は遠くにかすみ、その明るさは刻々と薄れて行く。しかし日銀はこれ以上に金利を下げられないし、国債の購入を増額することもできない。

その一方で超緩和政策の副作用は、時とともに累積する。財政はますます規律を失い、銀行は本業では儲けられなくなった。債券市場は日銀に乗っ取られ、株式市場も日銀への依存度を強めている。このように日銀が現在の政策を続けていると、その政策の効果はどんどん薄まり、副作用はどんどん強まる。これが、いま日銀が陥っている重大なジレンマだろう。

                           (続きは明日)

      ≪22日の日経平均 = 上げ +211.02円≫

      ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ


アメ車の輸入は1万8500台 : 昨年

2018-03-22 08:15:46 | 日米関係
◇ トランプ大統領をどう説得する? = 鉄鋼とアルミに輸入関税をかける大統領令は、あす23日に発効する。アメリカ政府はカナダ、メキシコ、オーストラリアの3か国については適用を免除。その他の国についても「交渉の余地がある」と表明したが、いまのところ何の動きもない。4月に訪米する安倍首相に、交渉条件を突きつける公算も大きくなってきた。

アメリカの日本に対する要求は、おそらく軍用装備品の購入増、農畜産物と自動車の輸入増加だろう。そこで自動車と食料品について、日米間の貿易がどうなっているかを調べてみた。財務省が発表した17年の貿易統計によると、アメリカ向けの輸出は15兆1000億円。アメリカからの輸入は8兆1000億円だった。収支尻は7兆円と、日本側の大幅な黒字となっている。

自動車だけを取り出してみると、日本車の対米輸出は174万7000台。金額にして4兆6000億円に達している。その半面、アメ車の輸入はわずか1万8500台。金額も5300億円に過ぎない。全体の黒字額の6割が、自動車によるものだ。日本はアメ車の輸入に関税をかけていない。しかしアメリカは燃費や排ガス規制が、非関税障壁になっていると批判する。だが燃費や排ガス規制は世界の流れでもある。日本も譲歩は難しい。

食料品はアメリカ側の大幅な黒字。日本の輸出が900億円しかないのに、輸入は1兆4000億円もある。ただ自動車の赤字に比べると、食料品の黒字は少ない。アメリカはそこに不満を持っているが、日本としても国内事情からそう大きく輸入を増やせない。結局は武器など軍用品の購入増がカギ。その金額をめぐっての駆け引きになりそうだ。

      ≪20日の日経平均 = 下げ -99.93円≫

      ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ


Zenback

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