貫之集 570
しきしまの やまとにはあらぬ からころも ころもへずして あふよしもがなしきしまの 大和にはあらぬ 唐衣 ころもへずして あふよしもがな 日本ではなく唐の衣(ころも)ではないが、
貫之集 569
わがための あだにざりける としつきは おもひもなさで ゆきかへりつつわがための あだにざりける 年月は 思ひもなさで 行きかへりつつ...
貫之集 568
てもふれで つきひへにける しらまゆみ おきふしよるは いこそねられね手もふれで 月日へにける 白真弓 おきふし夜は いこそ寝られね...
貫之集 567
あきかぜの いなばもそよに ふくなへに ほにいでてひとぞ こひしかりける秋風の 稲葉もそよに 吹くなへに ほに出でて人ぞ 恋しかりける...
貫之集 566
あさなあさな けづればたまる わがかみの おもひみだれて はてぬべらなり朝な朝な けづればたまる わが髪の 思ひ乱れて はてぬべらなり...
貫之集 565
あふことを つきひにそへて まつときは けふゆくすゑに なりねとぞおもふ逢ふことを 月日にそへて 待つときは 今日行く末に なりねとぞ思ふ...
貫之集 564
きみこふる なみだしなくば からころも むねのあたりは いろもえなまし君恋ふる 涙しなくば 唐衣 胸のあたりは 色燃えなまし...
貫之集 563
わがこひは しらぬやまぢに あらねども まどふこころぞ わびしかりけるわが恋は 知らぬ山路に あらねども まどふこころぞ わびしかりける...
貫之集 562
よそにみて かへるゆめだに あるものを うつつにひとに わかれぬるかなよそに見て 帰る夢だに あるものを うつつに人に 別れぬるかな...
貫之集 561
まこもかる よどのさはみづ あめふれば つねよりことに まさるわがこひ真菰刈る 淀の沢水 雨降れば 常よりことに まさるわが恋...
貫之集 560
たなばたの としにひとたび あふことは ひとめぞのちの そらにはありけるたなばたの 年に一度 あふことは 人めぞのちの 空にはありける...