クリスマスイヴが命日の大切な人がいて、
世の中が華やかな楽しい雰囲気に包まれていても、
クリスマスイヴにはしんみりした気分で
彼女のためにお花を買い、
ご家族に届けることにしている。
今年も複数のお花屋さんを巡って、
すでに花束になっているものを
見つけて買い求めた。
プリクラで細工したかのようなキラキラの瞳の
若い店員さんに「ご自宅用ですか?」と訊かれ
「いえ、贈答用です」と答えると、
彼女はピンクの不織布っぽいふんわりした
ラッピングで更に素敵な花束にしてくれた。
ただ、茎の根元の部分は湿したティッシュが
巻かれているだけで、手渡されて、
「あれ、いつもこんなだったかな?」と感じたが、
まあ、すぐに届けるのだし「いっか~」
という気持ちで受け取った。
お金を払ってお店を出ようとしたら、
別の店員さんが焦った様子で追いかけてきた。
「すみません、それではいけませんので、
もう一度店内へどうぞ」と言われる。
先ほどの若い店員さんとは別のベテラン風の
店員さんが謝りながら、あっという間に
無造作にピンクのラッピングを剥がして、
根元の部分から処理を始めた。
そしてまた別のラッピングを施された花束を
渡された私は、ピンクのラッピングが無駄になったな、
と思い、かえってこちらが申し訳なくなる。
元々のラッピングをしてくれた店員さんの気持ちを考えたら、
複雑な気分になる。
あとであの若い店員さんは、ベテラン風の店員さんに
何か小言を言われるのかもしれない。
イライラしたようなベテラン風の店員さんの表情を気にしながら、
すっきりしない気持ちでお店をあとにした。
ネットのニュースで某百貨店のクリスマスケーキが
顧客に届けられた時には崩れていて、
百貨店側が謝罪したとか、
また別の百貨店がフランスから輸入したケーキに
幼虫が混入していたとかいう話を聞くと、
その製品を購入した側にとっては
気持ちの良いものではないだろうし、
多分十人中十人が「こんなケーキ食べられるか!」と
憤慨するだろうけど、長年生きてくると
「そういうこともあら~な」と思ってしまう。
気忙しい年の瀬に、ささくれだってしまいがちな心だけど、
そんな時だからこそ寛容でありたい。
(12月28日 紫乃 記)