2月9日(土)チョン・ミョンフン指揮 NHK交響楽団
《2月Aプロ》 NHKホール
【曲目】
1.メシアン/キリストの昇天
2. ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
ミョンフンが10年ぶりにN響の定期を振るというのにB定期には出ないのでNHKホールへ出かけた。あの衝撃的なチャイコの4番を聴いたのはもう10年も前なのか… その後、2000年にN響に客演して「巨人」をやったがその時のインパクトは弱かった。けれど、東フィルとやった「運命」もそうだったが、ミョンフンと聞くとスゴイ演奏をやってくれそうな予感がする。
まずは生誕100周年を記念してのメシアン。N響がメシアンや武満をやると、研ぎ澄まされた音色で精緻なアンサンブルを聴かせてくれることが多いが、今夜のメシアンは少々難あり。 特に冒頭の曲は楽器も気分も温まっていないなか、トランペットにソフトな高音を終始求めてくるが、これはちょっと演奏者には酷かも。一番印象に残ったのは4曲目の弦のアンサンブル。「世の終わりの四重奏曲」のような静かな静かな深い祈りの音楽が一種の陶酔感をもたらした。
このメシアンの終曲の気分がブルックナーの冒頭へとつながる。静かなトレモロに乗ってチェロとホルンがユニゾンで息の長いメロディーを歌い始めるシーンから、温かな大きな存在に抱かれる。
ミョンフンの棒から紡ぎだされるフレーズは、ほどよい粘り気を持ち小さな隙間にも沁み込みながら空間を豊潤な響きで満たして行く。音の立ち上がりの滑らかさ、そしてその音が命を吹き込まれたように熱く歌い、次のフレーズへと受け渡して行く妙。フレーズで自然な呼吸をしつつ一本の線が先へ先へと伸びて行く様子は、枝葉を伸ばしながら成長して行く大木を思わせる。
それに音色がねっとりとブレンドされて出来た深く美く輝く響き!どんなに盛り上がった場面でも決してケバい音や派手な音は出さず、また、どんなに弱音になっても痩せることのない豊かな響きを持ち続ける。NHKホールという多目的ホールの3階席にいることを忘れ、ブルックナーゆかりのザンクト・フロリアン教会にいるような錯覚…
オーケストラの呼吸が、自然と聴き手にも音楽と一緒に呼吸を促し酸素を吸収する。その酸素が血液に溶け込んで体中の血管を巡り、聴くほどに体がじわじわと熱くなってくる。それはカーっとのぼせた熱さではなく、じわりじわりと酵母が発酵して熱を発して全体に行き渡って行く熱さだ。そんな熱に浮かれ、何度となく陶酔感に浸る。今夜のブルックナーを聴いて、エモーショナルで生々しく燃え盛る演奏をするというこれまでミョンフンに抱いていたイメージに、深い包容力を持った指揮者のイメージが加わった。
今夜のミョンフン/N響は完成度といいテンションの高さといい申し分なし。これは来週のマーラーを聴かない手はない。終演後に買い求めたマーラーのチケットをにぎりしめてホールを出たら一面の雪化粧。火照った体と心をゆっくりと鎮めるのにうってつけの雪の中の帰路と思いきや、ドラリオンの終演とかち合ってごった返す雑踏に揉まれてますます熱くなってしまった…
《2月Aプロ》 NHKホール
【曲目】
1.メシアン/キリストの昇天
2. ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
ミョンフンが10年ぶりにN響の定期を振るというのにB定期には出ないのでNHKホールへ出かけた。あの衝撃的なチャイコの4番を聴いたのはもう10年も前なのか… その後、2000年にN響に客演して「巨人」をやったがその時のインパクトは弱かった。けれど、東フィルとやった「運命」もそうだったが、ミョンフンと聞くとスゴイ演奏をやってくれそうな予感がする。
まずは生誕100周年を記念してのメシアン。N響がメシアンや武満をやると、研ぎ澄まされた音色で精緻なアンサンブルを聴かせてくれることが多いが、今夜のメシアンは少々難あり。 特に冒頭の曲は楽器も気分も温まっていないなか、トランペットにソフトな高音を終始求めてくるが、これはちょっと演奏者には酷かも。一番印象に残ったのは4曲目の弦のアンサンブル。「世の終わりの四重奏曲」のような静かな静かな深い祈りの音楽が一種の陶酔感をもたらした。
このメシアンの終曲の気分がブルックナーの冒頭へとつながる。静かなトレモロに乗ってチェロとホルンがユニゾンで息の長いメロディーを歌い始めるシーンから、温かな大きな存在に抱かれる。
ミョンフンの棒から紡ぎだされるフレーズは、ほどよい粘り気を持ち小さな隙間にも沁み込みながら空間を豊潤な響きで満たして行く。音の立ち上がりの滑らかさ、そしてその音が命を吹き込まれたように熱く歌い、次のフレーズへと受け渡して行く妙。フレーズで自然な呼吸をしつつ一本の線が先へ先へと伸びて行く様子は、枝葉を伸ばしながら成長して行く大木を思わせる。
それに音色がねっとりとブレンドされて出来た深く美く輝く響き!どんなに盛り上がった場面でも決してケバい音や派手な音は出さず、また、どんなに弱音になっても痩せることのない豊かな響きを持ち続ける。NHKホールという多目的ホールの3階席にいることを忘れ、ブルックナーゆかりのザンクト・フロリアン教会にいるような錯覚…
オーケストラの呼吸が、自然と聴き手にも音楽と一緒に呼吸を促し酸素を吸収する。その酸素が血液に溶け込んで体中の血管を巡り、聴くほどに体がじわじわと熱くなってくる。それはカーっとのぼせた熱さではなく、じわりじわりと酵母が発酵して熱を発して全体に行き渡って行く熱さだ。そんな熱に浮かれ、何度となく陶酔感に浸る。今夜のブルックナーを聴いて、エモーショナルで生々しく燃え盛る演奏をするというこれまでミョンフンに抱いていたイメージに、深い包容力を持った指揮者のイメージが加わった。
今夜のミョンフン/N響は完成度といいテンションの高さといい申し分なし。これは来週のマーラーを聴かない手はない。終演後に買い求めたマーラーのチケットをにぎりしめてホールを出たら一面の雪化粧。火照った体と心をゆっくりと鎮めるのにうってつけの雪の中の帰路と思いきや、ドラリオンの終演とかち合ってごった返す雑踏に揉まれてますます熱くなってしまった…