12月28日(土)Vn:青木尚佳/Pf:中島由紀
サロンテッセラ(三軒茶屋)
【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 Op.12-1
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調 Op.30-2
3.ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
4.エルンスト/夏の名残の薔薇
5.シマノフスキ/夜想曲とタランテラ Op.28
【アンコール】
ブラームス/瞑想(5つの歌~第1曲)
ベートーヴェンならではの魅力の一つに、瞬間的に世界が入れ替わる変わり身の鮮やかさがあるが、青木さんと中島さんはまさにこの魅力を「飛ぶ鳥跡を濁さず」的な潔さで実現。青木さんの微妙な弓の返しで、瞬時にして空気が変わるたびに息を呑む思い。更に、直情的な訴えかけもベートーヴェンの魅力だが、中島さんのピアノを聴いていると「私の言葉を聞いて!」というアピールが伝わってくる。これを青木さんが真正面で受け取り、応答するやり取りは実に鮮やかで楽しげ。
第1番は、輝かしい光に満ち、楽しそうな世界に誘われている気分。堂々とした両端楽章に挟まれた第2楽章の変奏の、豊かな表情の変化も聴きものだった。変奏のクライマックスに当たる第3変奏の高揚感は圧倒的。第7番ではバイオリンとピアノががっちりとスクラムを組んで熱っぽい対話を繰り広げつつ、高いステージへと上って行くドラマが感じら、思わず身を乗り出した。
青木さんがベートーヴェンのソナタに取り組み始めたのは1年ほど前ということだが、ベートーヴェンの「言葉」を真剣に譜面から読み取り、小細工をせずにありのままの音楽の姿で勝負する路線をこのまま進めば、更に万人を唸らせる演奏に到達できるに違いない、と期待が膨らんだ。
リサイタル後半は中島さんと青木さんがそれぞれ単独でソロを演奏し、最後に再びデュオ。中島さんが演奏したラヴェルは文字通り高雅で闊達な踊りの雰囲気が伝わり、とりわけ後半の色彩感豊かな表情がとても洒落ていた。
青木さんが無伴奏で演奏した「夏の名残の薔薇」は「庭の千草」のメロディーの超絶技巧による変奏曲。技巧的に曲がどんな揺さぶりをかけてきても青木さんはそれに捕らわれることなく、しっかりとした芯のあるぶれない演奏で曲を自分のものにしていたのはさすが。華やかなローズガーデンの香りが漂ってくるようだった。
最後のシマノフスキ、夜想曲では、青木さんが濃厚な美音で、聴き手を妖しいヴェーヌスの園へ誘惑してくるような、魅惑的な香りがムンムンと漂ってきた。青木さんが以前から持っている魅力的な音と歌い回しが益々熟成されて陶酔。続くタランテラでは、曲目紹介で「息絶えるまで踊り狂う様子」と中島さんが言っていた通り、熱く激しい舞曲を二人が相乗効果的に盛り上げて行き、聴き手の心も燃え上がった。前回のリサイタルの「神曲」に続き、シマノフスキの名演を聴くことができた。このデュオでシマノフスキをもっと聴きたい。アンコールのブラームスが、タランテラの興奮を溢れる歌心で優しく鎮めてくれた。
青木&中島デュオを聴くのは今日で3回目だが、このデュオは1回目から隙がなくファンタジーにも溢れた生き生きした演奏を聴かせてくれ、今後がますます楽しみ。次も必ず聴きに行きたい!
Bell Époque France Vn:青木尚佳/Pf:中島由紀 2013.8.25 アトリエ・ムジカ(代々木)
サロンテッセラ(三軒茶屋)
【曲目】
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 Op.12-1
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調 Op.30-2
3.ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
4.エルンスト/夏の名残の薔薇
5.シマノフスキ/夜想曲とタランテラ Op.28
【アンコール】
ブラームス/瞑想(5つの歌~第1曲)
バイオリンの青木尚佳さんとピアノの中島由紀さんのデュオリサイタルが、青木さんが冬休みの一時帰国で4か月ぶりに実現した。会場のサロンテッセラは、三軒茶屋駅前にあるこじんまりとした響きも雰囲気もよく、カフェテリアの付いた素敵な空間。こんな場所で世界に羽ばたく演奏家のコンサートを聴けるのは嬉しい。 プログラム前半にベートーヴェンのソナタを2曲置いて勝負に挑み、後半は親しみやすい曲目ながら、超絶技巧の曲を持ってくるという選曲。 ベートーヴェンのソナタは8月に8番を聴いて、躍動感溢れ、かつ貫禄ある演奏に魅せられたが、今回の1番と7番も素晴らしかった。二人は私情を加えることなく、真正面からベートーヴェンが曲に託した意思を単刀直入に聴き手に届けるアプローチで、作曲家の息づかいを伝えた。 |
ベートーヴェンならではの魅力の一つに、瞬間的に世界が入れ替わる変わり身の鮮やかさがあるが、青木さんと中島さんはまさにこの魅力を「飛ぶ鳥跡を濁さず」的な潔さで実現。青木さんの微妙な弓の返しで、瞬時にして空気が変わるたびに息を呑む思い。更に、直情的な訴えかけもベートーヴェンの魅力だが、中島さんのピアノを聴いていると「私の言葉を聞いて!」というアピールが伝わってくる。これを青木さんが真正面で受け取り、応答するやり取りは実に鮮やかで楽しげ。
第1番は、輝かしい光に満ち、楽しそうな世界に誘われている気分。堂々とした両端楽章に挟まれた第2楽章の変奏の、豊かな表情の変化も聴きものだった。変奏のクライマックスに当たる第3変奏の高揚感は圧倒的。第7番ではバイオリンとピアノががっちりとスクラムを組んで熱っぽい対話を繰り広げつつ、高いステージへと上って行くドラマが感じら、思わず身を乗り出した。
青木さんがベートーヴェンのソナタに取り組み始めたのは1年ほど前ということだが、ベートーヴェンの「言葉」を真剣に譜面から読み取り、小細工をせずにありのままの音楽の姿で勝負する路線をこのまま進めば、更に万人を唸らせる演奏に到達できるに違いない、と期待が膨らんだ。
リサイタル後半は中島さんと青木さんがそれぞれ単独でソロを演奏し、最後に再びデュオ。中島さんが演奏したラヴェルは文字通り高雅で闊達な踊りの雰囲気が伝わり、とりわけ後半の色彩感豊かな表情がとても洒落ていた。
青木さんが無伴奏で演奏した「夏の名残の薔薇」は「庭の千草」のメロディーの超絶技巧による変奏曲。技巧的に曲がどんな揺さぶりをかけてきても青木さんはそれに捕らわれることなく、しっかりとした芯のあるぶれない演奏で曲を自分のものにしていたのはさすが。華やかなローズガーデンの香りが漂ってくるようだった。
最後のシマノフスキ、夜想曲では、青木さんが濃厚な美音で、聴き手を妖しいヴェーヌスの園へ誘惑してくるような、魅惑的な香りがムンムンと漂ってきた。青木さんが以前から持っている魅力的な音と歌い回しが益々熟成されて陶酔。続くタランテラでは、曲目紹介で「息絶えるまで踊り狂う様子」と中島さんが言っていた通り、熱く激しい舞曲を二人が相乗効果的に盛り上げて行き、聴き手の心も燃え上がった。前回のリサイタルの「神曲」に続き、シマノフスキの名演を聴くことができた。このデュオでシマノフスキをもっと聴きたい。アンコールのブラームスが、タランテラの興奮を溢れる歌心で優しく鎮めてくれた。
青木&中島デュオを聴くのは今日で3回目だが、このデュオは1回目から隙がなくファンタジーにも溢れた生き生きした演奏を聴かせてくれ、今後がますます楽しみ。次も必ず聴きに行きたい!
Bell Époque France Vn:青木尚佳/Pf:中島由紀 2013.8.25 アトリエ・ムジカ(代々木)