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セバスティアン・ヴァイグレ指揮 読売日本交響楽団(Pf:ダン・タイソン)

2024年06月17日 | pocknのコンサート感想録2024
6月14日(金)セバスティアン・ヴァイグレ指揮 読売日本交響楽団
~第639回 定期演奏会~
サントリーホール


【曲目】
1.ウェーベルン/夏風の中で
2.モーツァルト/ピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414
(アンコール)
♪ ショパン/ワルツ イ短調(遺作)
Pf:ダン・タイソン
3.シェーンベルク/交響詩「ペレアスとメリザンド」 Op.5


ヴァイグレ指揮の読響で、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクの曲に、ダン・タイソンのソロでモーツァルトの協奏曲という惹かれるプログラム。新ウィーン楽派の2作品は、後期ロマン派スタイルで書かれた初期のものだが。

ウェーベルンの「夏風の中で」は、大編成のオケがステージに乗りながらトゥッティによる大音響を聴かせる場面は少なく、小編成の様々な室内楽から成り立っているような曲。精緻な演奏というよりは、暖かく柔らかな空気感を大切にした演奏で、淡い光や色彩が醸し出された。その中でコンマスの林悠介氏の繊細で澄んだヴァイオリンソロの音色が美しく色を添えていた。

続いてのモーツァルトのコンチェルトは、ウェーベルンでの演奏を自然に引き継ぐような穏やかで柔らかなオーケストラの前奏に始まり、そこに入ってきたダン・タイソンのピアノがなんと優美で香り高いことか!人の心に無理に入り込んでくることなく、こんなにも惹き付けてくる魔力は女神かお釈迦様みたい。優しく包み込む至福感溢れる演奏のなかに、さっと差す影や微妙に移ろう淡い色合いが心の小さな揺らぎや震えも繊細に伝える。

オケの息遣いや歌いまわしもデリケートの極みで、ピアノとオケが穏やかな笑みを浮かべながら対話しているよう。モーツァルトのウィーン時代初期のコンチェルトが、まるで最晩年の27番のような深みや翳りさえ湛えて伝わってきたのは演奏によるところが大きい。ダン・タイソンの演奏は12年前に聴いたきりだったが、彼岸的とも云える深淵の境地へと入って来た。アンコールも沁みた。

プログラム後半はシェーンベルク。この曲は馴染みがないが、ヴァイグレと読響なら殆ど初体験の曲の魅力を伝えてくれると期待していた。けれど、音楽の掴みどころがわからないことが多かった。これは、様々な方向へ行きつ戻りつする音楽に戸惑ってしまったこともあるが、いつも聴かせてくれる強力なイニシアチブで、「これだ!」と思う骨太でエネルギー溢れるフレーズが聴かれても、それが立ち消えになってしまうことが多く、柔らかで美しい響きではあったが、オケの精緻さと集中力が十分ではない気がした。

それでも会場はオケが退場を始めて収まった拍手のなか、熱心に拍手を続ける聴衆がヴァイグレを再びステージに呼び戻した。もっと曲を知っていれば印象も異なったかも知れない。次にこの曲を聴くときはちゃんと予習しておこう。

ダン・タイソン:ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全曲演奏会1 2012.11.7 すみだトリフォニー
東京・春・音楽祭2024:ヴァイグレ/ 読響「エレクトラ」 2024.4.18 東京文化会館
ヴァイグレ/読響名曲シリーズ(Vn:金川真弓) 2023.2.17 サントリーホール
ヴァイグレ/読響の「ドイツレクイエム」 2022.9.20 サントリーホール
ヴァイグレ指揮 読響(ブルックナー/交響曲第7番他) 2022.6.21 サントリーホール
ヴァイグレ指揮 読響(チャイコフスキー/交響曲第4番他) 2021.1.14 サントリーホール

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