7月14日(土)新作歌曲の会 第9回演奏会
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.高島 豊/歌曲集「命のうた」~金子みすヾの童謡による~
木、仔牛、雀のかあさん、鯨法会
2. 野澤啓子/猫ばっか Forever(詩:佐野洋子)
3.篠原 真/愛三章(詩:大倉マヤ)
4.森 潤子/テノールのための組曲
不思議(詩:八木重吉)ゴムマリの歌(詩:中原中也)てのひらのほたる(詩:関根榮一)季節(詩:立原道造)子守唄(詩:立原道造)
5. 西田直嗣/男について、秋の接吻(詩:滝口雅子)
6.矢内和三/男声の為の三人オペラ「カイロ団長」(原作:宮澤賢治)
7.鈴木静哉/夜 泉のほとりに(詩:立原道造)
8.金田潮兒/「寺山修司少女詩集」より四つの歌 ~男声とピアノの為の~
贈り物、消す、肩、ダイヤモンド
【演 奏】
S:寺島夕紗子(7)/MS:紙谷弘子(3,5)/T:小林大作(2,6)、横山和彦(1,6)、大野徹也(4)/Bar: 鎌田直純(3,6)、黒田 博(8)/
Pf:亀澤奈央(5,8)、篠原 真(3)、藤原亜美(4,7)、堀越夕子(1,6)、野澤啓子(2)
作曲家と歌手が共同して演奏会を企画して作り上げる「新作歌曲の会」の年1度の演奏会は今回で9回目を迎える。8人の作曲家によるいろいろなタイプの作品が、7人の歌手と5人のピアニスト(うち2人は作曲を兼ねる)によって演奏される。作曲家と演奏家のコラボレーション的色合いを持つこの演奏会は、単なる作品発表というより両者により詩を選んだり、歌手の声質や個性を尊重して曲が書かれたりすることで演奏にも曲にもある種の親密感が生まれ、また聴く側にとってもより共感を得る新作の演奏会となる。
猫と人のやり取りの様子が目に見えるようなリアルさに作曲者の猫への「愛」が吹き込まれる野澤さんの「猫ばっか」、大倉マヤさんの書き下ろしの詩でコミカルであると同時に人の心の真髄を突いた表現に聞き入ってしまう篠原さんの「愛三章」、森さんの「テノールのための歌曲」は個性的で印象的な6つの詩の味を歌とピアノの味付けで更にキラリと光らせる。
西田さんの歌から聴こえる妖艶な世界、矢内さんのオペラ「カイロ団長」は軽快でコミカルでシリアスな賢治の物語の中に入り込んでしまうよう。いろいろなドタバタの末に迎えるハッピーエンドではモーツァルトのオペラでの大団円の気分を味わう。立原道造のソネットの各部分が印象的なピアノでつなげられ、格調高く情熱的に歌い上げられる鈴木先生の「夜 泉のほとりに」、そして豊かなハーモニーに支えられ、詩の内側の世界がじわりとじわりと、しかし確かに伝わってくる金田さんの作品。
こうした個性豊かな作品達が優れた演奏家達によってとても理想的な姿で聴き手に伝わる。どの曲を演奏する歌手もピアニストもその歌にぴったりの演奏者と思えるのは、この演奏会のコンセプトがあってのことだと思う。
東京文化会館という素晴らしいホールでのこんな素敵な演奏会に拙作を発表する機会を昨年に続き与えてもらえるのは本当にありがたいこと。横山さんと堀越さんという素晴らしい演奏者に真摯に取り組んで頂けたことで、歌曲集「命のうた」に命を吹き込んでもらった気がする。
例えば3曲目の「雀のかあさん」のようなテンポや間の取り方の多くが演奏者に任されているような音楽では譜面上にある「曲」は全くの未完成品で、演奏者の力があって初めてそれが「音楽」となることを実感した。そこから4曲目「鯨法会」へ移って行くときの演奏者の目に映る情景は、その演奏から確かに遠い光を追い求めているように感じた。みすヾの世界の奥深さを表現してくださった横山さんと堀越さんに感謝するのみ。
そして、雨の中演奏会にいらしてくださった皆様、本当にありがとうございました。
東京文化会館小ホール
【曲目】
1.高島 豊/歌曲集「命のうた」~金子みすヾの童謡による~
木、仔牛、雀のかあさん、鯨法会
2. 野澤啓子/猫ばっか Forever(詩:佐野洋子)
3.篠原 真/愛三章(詩:大倉マヤ)
4.森 潤子/テノールのための組曲
不思議(詩:八木重吉)ゴムマリの歌(詩:中原中也)てのひらのほたる(詩:関根榮一)季節(詩:立原道造)子守唄(詩:立原道造)
5. 西田直嗣/男について、秋の接吻(詩:滝口雅子)
6.矢内和三/男声の為の三人オペラ「カイロ団長」(原作:宮澤賢治)
7.鈴木静哉/夜 泉のほとりに(詩:立原道造)
8.金田潮兒/「寺山修司少女詩集」より四つの歌 ~男声とピアノの為の~
贈り物、消す、肩、ダイヤモンド
【演 奏】
S:寺島夕紗子(7)/MS:紙谷弘子(3,5)/T:小林大作(2,6)、横山和彦(1,6)、大野徹也(4)/Bar: 鎌田直純(3,6)、黒田 博(8)/
Pf:亀澤奈央(5,8)、篠原 真(3)、藤原亜美(4,7)、堀越夕子(1,6)、野澤啓子(2)
作曲家と歌手が共同して演奏会を企画して作り上げる「新作歌曲の会」の年1度の演奏会は今回で9回目を迎える。8人の作曲家によるいろいろなタイプの作品が、7人の歌手と5人のピアニスト(うち2人は作曲を兼ねる)によって演奏される。作曲家と演奏家のコラボレーション的色合いを持つこの演奏会は、単なる作品発表というより両者により詩を選んだり、歌手の声質や個性を尊重して曲が書かれたりすることで演奏にも曲にもある種の親密感が生まれ、また聴く側にとってもより共感を得る新作の演奏会となる。
猫と人のやり取りの様子が目に見えるようなリアルさに作曲者の猫への「愛」が吹き込まれる野澤さんの「猫ばっか」、大倉マヤさんの書き下ろしの詩でコミカルであると同時に人の心の真髄を突いた表現に聞き入ってしまう篠原さんの「愛三章」、森さんの「テノールのための歌曲」は個性的で印象的な6つの詩の味を歌とピアノの味付けで更にキラリと光らせる。
西田さんの歌から聴こえる妖艶な世界、矢内さんのオペラ「カイロ団長」は軽快でコミカルでシリアスな賢治の物語の中に入り込んでしまうよう。いろいろなドタバタの末に迎えるハッピーエンドではモーツァルトのオペラでの大団円の気分を味わう。立原道造のソネットの各部分が印象的なピアノでつなげられ、格調高く情熱的に歌い上げられる鈴木先生の「夜 泉のほとりに」、そして豊かなハーモニーに支えられ、詩の内側の世界がじわりとじわりと、しかし確かに伝わってくる金田さんの作品。
こうした個性豊かな作品達が優れた演奏家達によってとても理想的な姿で聴き手に伝わる。どの曲を演奏する歌手もピアニストもその歌にぴったりの演奏者と思えるのは、この演奏会のコンセプトがあってのことだと思う。
東京文化会館という素晴らしいホールでのこんな素敵な演奏会に拙作を発表する機会を昨年に続き与えてもらえるのは本当にありがたいこと。横山さんと堀越さんという素晴らしい演奏者に真摯に取り組んで頂けたことで、歌曲集「命のうた」に命を吹き込んでもらった気がする。
例えば3曲目の「雀のかあさん」のようなテンポや間の取り方の多くが演奏者に任されているような音楽では譜面上にある「曲」は全くの未完成品で、演奏者の力があって初めてそれが「音楽」となることを実感した。そこから4曲目「鯨法会」へ移って行くときの演奏者の目に映る情景は、その演奏から確かに遠い光を追い求めているように感じた。みすヾの世界の奥深さを表現してくださった横山さんと堀越さんに感謝するのみ。
そして、雨の中演奏会にいらしてくださった皆様、本当にありがとうございました。
特に、御作曲の「雀のかあさん」は、曲が詩の内容を深く表現しているように感じ、感動致しました
貴殿の詩に素直で流れるようなメロディ、歌唱とピアノが分離することなく自然に一体となって作り上げる世界に引き込まれました。
「雀のかあさん」のようなコンテンポラリー風の曲がオーソドックスな曲集に1曲だけ入っていることがどのように受け止められるか、また、コンテンポラリーな音楽というのはとかく独りよがりになったり、常套手段に陥る危険性があるため、不安もあったのですが、演奏者の助けを頂いたおかげで4曲のなかでも一番気に入って下さった方が多くいらっしゃいました。
また次の「鯨法会」へのつながりも含め、曲集としてのコンセプトも感じて頂けたことは大変嬉しく思います。