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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

葵トリオ & 磯村和英 ~日本モーツァルト愛好会例会~

2022年01月22日 | pocknのコンサート感想録2022
1月19日(水)葵トリオ & 磯村和英
師弟でつなぐアンサンブルの魂 ー大望、そして豊かな実りへー 
~Pf:秋元孝介/Vn:小川響子/Vc:伊東裕~ Vla:磯村和英(ゲスト出演)
~日本モーツァルト愛好会第507回例会~
自由学園明日館講堂

【曲目】
1.モーツァルト/ピアノ三重奏曲第5番 ハ長調 K.548
2.アレンスキー/ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.32
3.モーツァルト/ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K.493
【アンコール】
♪ ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 Op.25~第4楽章

昨年のサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンで初めて聴いて強い感銘を受けた葵トリオが、良い響きと雰囲気を持つ歴史的建築の自由学園明日館でモーツァルト中心の演奏会をやると知って出かけた。会場はいつもとちょっと違う雰囲気の客層。日本モーツァルト愛好会の例会と知りこのアウェイ感の訳がわかったが、コンサートが始まるや、すっかり身も心も演奏に没入した。葵トリオの驚くべき力量に圧倒され、このトリオの存在が一層強く心に刻まれることとなった。

葵トリオは、それぞれの作品の様式やテイストを柔軟な演奏スタイルで最大限に活かす。色彩や香り、熱量や湿度といった表現手段でも、それぞれの作品の魅力が最大限に発揮される。アンサンブルの密度と勢い、演奏の伸びが半端なく、3人は密接に絡み、あらゆる機能が連動して噛み合い、生きた有機体として最大限の振り幅で音楽を奏でる。それぞれが個性を匂わせつつ3人のベクトルは同じ方を向き、それらが合わさってパワーを増大する。これこそ常設トリオの真骨頂だ。

最初のモーツァルトのトリオは瑞々しくて新鮮で流麗。大漁で網の上でキラキラピチピチ跳ねる魚たちのような生気に満ちた演奏。
次のアレンスキーは馴染みのない作曲家で、今夜の曲も知らなかったが、1度聴いただけで魅了されてしまった。それも葵トリオあってのことだろう。ラフマニノフを思わせる情熱的でロマンチックな音楽を、葵トリオはたっぷりと濃厚に奏で、熱と湿度が渦巻き、パワーみなぎる演奏で聴かせた。そこには無駄な力や余分なパフォーマンスはなく、四肢がしなやかに動き、均整の取れた美しい力がみなぎっていた。

後半は、東京クァルテットのメンバーとして長年活躍したヴィオラの磯村和英さんをゲストに迎えてのモーツァルト。前半の2曲とはまた趣をガラリと変え、温かく親密な空気が流れた。それに加え、ピアノも弦もピリオド楽器で奏でているような繊細な響きがした。メンバー同士が優しい眼差しで穏やかに歌を交わし、落ち着いた包容力のある柔らかな演奏を聴かせる。磯村さんの味わい深い演奏と、彼を師と仰ぐトリオのメンバーとの親密さがもたらしたものと云えるだろう。粒立ちのいい流麗な秋元さんのピアノを中心に、4人は自然で伸びやかに幸せなモーツァルトを奏で、聴いている方も幸せな気分になった。

そんな幸福感を迫真の高揚感へと高めたのがアンコールのブラームス。熱気と勢い、朗々とした熱い歌による堂々たるパフォーマンス。民族色ではなく、誤魔化しのない明晰さで深く切り込む圧巻のアンコールだった。

ゲストが加わってもアンサンブルとしての緻密さや精度にいささかのほころびも生じない。これは磯村さんの技と経験という面も大きいだろうが、このトリオはゲストに誰が来ようと、自分たちの演奏に巻き込んでしまう牽引力があると感じた。葵トリオは世界でもトップクラスのトリオと確信。目が離せないユニットだ。

キラめく俊英たちⅢ 葵トリオ 2021.6.19 ブルーローズ
Vn:小川響子/Vc:上村文乃/Pf:秋元孝介 2017.1.29 尾上邸音楽室

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