facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京二期会オペラ劇場「金閣寺」

2019年02月28日 | pocknのコンサート感想録2019
2月22日(金)東京二期会オペラ劇場
【演目】
黛 敏郎「金閣寺」
原作:三島由紀夫/台本:クラウス・H・ヘンネベルク
《フランス国立ラン歌劇場との共同制作》

東京文化会館

【配役】
溝口:宮本益光/鶴川:髙田智士/柏木:樋口達哉/父:星野淳/母:腰越満美/道詮和尚:志村文彦/有為子:冨平安希子/若い男:高田正人/女:嘉目真木子/娼婦:郷家暁子

【演出】宮本亜門 【装置】ボリス・クドルチカ 【衣装】カスパー・グラーナー 【照明】フェリーチェ・ロス 【映像】バルテック・マシス

【演奏】
マキシム・パスカル指揮 東京交響楽団/二期会合唱団

一昨日の「紫苑物語」に続き、日本人作曲家によるオペラ公演。今夜は日本のオペラの「古典」とも云われている黛敏郎の「金閣寺」。世界的にも作品の評価は高く興味はあったが、ちゃんと聴いたことはなかったので、今回のフランス国立ラン歌劇場との共同制作による国際プロジェクトの公演を楽しみに出かけた。

日本の作曲界が競って前衛的な作品を積極的に発表していた1970年代、その先頭グループにいた黛の音楽は、全体として妥協を感じさせない厳しさに貫かれ、新鮮に響いてきた(最後の場面の幕切れで、普通の主和音の持続で終わったのはちょっと残念だったが…)。
ただ演奏面では、シーンによってはもう一つ突っ込んだ、生々しく強烈な音像があればと感じることが多く、精彩に欠ける気がした。これは、指揮のパスカルが、総じておとなしめなアプローチだったのが問題だったのかも知れない。

ソリスト達の歌う歌は、語り口調が主流で、心に残る印象的な歌がなく、その結果、歌手の印象が薄かった。その中でインパクトを与えたのは、足の障害を利用して楽しく過ごす柏木役の樋口達哉の存在感。ちょっと斜に構えた歌と演技が妙に説得力を感じさせ、役をうまく表現していたと思う。
オペラの筋書きは、周囲との人間関係から徐々に追い詰められ、孤独感を募らせる主人公の溝口が、ついに金閣寺に火をかけることになる心理描写を軸に進んで行くというものだが、溝口の様々な出会いや体験の場面が、お互いに関連性を持っていることが感じられず、場面が進んで行っても、それが高揚感に繋がりにくかった。

この公演で最も印象に残ったのは、舞台の視覚的な要素だった。プロジェクションマッピングによって映し出された金閣寺の幻想的な表情や戦争の悲惨なシーン、とりわけ原爆雲を表したと思われるキノコ雲がステージいっぱいに広がる様子はリアルで、戦慄を覚えた。最後の金閣寺炎上の場面は象徴的に扱われてしまい、期待したような臨場感はなかったが。

合唱団は、集団として一丸となって動き、型を決め、そこに当たる照明効果が場面の情景や心理を生き生きと描写していた。ミュージカル的な手法のようにも思えたが、演出の宮本亜門らしい持ち味が生かされていたと思う。溝口の回想シーンでは、実際に声を出す役と、演技パフォーマンスをする「ダブルキャスト」だったが、これは少々説明臭かった。溝口が南禅寺で遠くから見つめる美貌の女が乳房を露わにして、茶碗に母乳を絞るシーンはドキッとしたし、これなら溝口がこの女に引き込まれてしまうのが納得できた!

いろいろと目を引く場面はあったが、肝心の音楽、そして演奏では強烈な印象がなく、オペラ公演の醍醐味を満喫できたとは言い難かった。

♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« N響 2019年2月B定期(パーヴ... | トップ | 台湾最南端に立つ(墾丁その... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2019」カテゴリの最新記事