3月24日(土)上村文乃(Vc)/佐藤勝重(Pf)
東京文化会館小ホール
【曲目】
1. バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009
2. ストラヴィンスキー/イタリア組曲
3. シューマン/アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70
4. ラフマニノフ/チェロソナタ ト短調 op.195
【アンコール】
1.ドヴォルザーク/ユモレスク
2.カサド/愛の言葉
ヴァイオリンの青木尚佳さんが目当てで行った超地元の個人宅の音楽室でのコンサートで上村文乃さんのチェロに出会った。今日のリサイタルのことは、この時知って楽しみにしていた。その後、上村さんは音コンでの2位、学生音楽コンクールでの1位獲得などを果たし、メキメキ頭角を現してきて、リサイタルが益々楽しみになった。
11月に聴いた堤さんのリサイタルの会場で上村さんを見かけたので、リサイタルを楽しみにしていることを伝えると、とても大変そうに「本当によろしくお願いします!」と頼まれた。若い演奏家がリサイタルを開くというのはなかなか大変なことなんだと感じ、奥さんと友達のザコブも誘い、お客の動員に少しばかり協力したが(独りお留守番となった小学生の息子も誘ったが、あっさり断られた。。)、フタを開けてみれば開場前から長蛇の列、ほぼ満席状態で開演を迎えた。
会場には堤剛さんも見守るなか、最初にステージに登場するときは緊張した様子が窺えた上村さんだったが、演奏が始まるや、バッハのプレリュードの開始の朗々とした下降音階から、会場の聴衆を魅了した。上村さんのチェロには迷いがない。弓の根元から先端までを最大限に使い、大きく深い呼吸で息の長いフレーズを生み出す。ホームコンサートでこの組曲の一部をやったときも、力強く逞しくい演奏に圧倒されたが、あの時、至近距離で聴いたのと同じ力強さは、今日座った文化会館小ホールの比較的後方の席でも伝わってきた。音のひとつひとつに魂を込め、余計な小細工をせず真正面から熱く語りかけてくるバッハは、ストレートに心に訴えかけてきた。
バッハに始まり、ストラヴィンスキーの新古典調の曲が続き、後半がシューマンとラフマニノフという、ロマンチックな度合いが徐々に増してくるプログラミングで、曲が進むごとに演奏にもロマンチックな香りが加わり、自由度が増してきたが、芯を貫くものは変わらず、迷いのなさ、思いきりの良さ、ダイナミズムがどの曲でも前面に出て、常に能動的な演奏を聴かせてくれる。上村さんのチェロの音にはいつでも熱い意志と信念があり、男性的とも言える猛々しさを伝えてくることもしばしば。
後半のシューマンとラフマニノフでは、そうした情熱的な気持ちで愛を追い求めるように、憧れと焦燥が内包されたドラマチックな演奏となって迫ってきた。とりわけラフマニノフのソナタは圧巻!この大曲を、一瞬たりとも集中力を途切れさせることなく愛と憧れを歌い上げた。この曲はピアノパートも聴きものだが、佐藤さんのピアノは繊細で柔軟、もっと熱くなってもいいと思うこともあったが、冷静にチェリストの熱い思いをしっかりと受け止め、隙のない充実したアンサンブルを作り上げた。ピアニストの功績もあって、ちゃんと聴くのは初めてだったにもかかわらず、最初から最後まで演奏に縛り付けられ状態だった。
上村さんは間違いなくチェロ界期待の大型新人だ。完成品というより、聴く度に発見と前進が感じられそうで、これからまだまだ凄い演奏家になる未知のエネルギーを感じた。近々ヨーロッパに留学するようだが、日本での演奏も是非続けてもらいたい。
東京文化会館小ホール
【曲目】
1. バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009
2. ストラヴィンスキー/イタリア組曲
3. シューマン/アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70
4. ラフマニノフ/チェロソナタ ト短調 op.195
【アンコール】
1.ドヴォルザーク/ユモレスク
2.カサド/愛の言葉
ヴァイオリンの青木尚佳さんが目当てで行った超地元の個人宅の音楽室でのコンサートで上村文乃さんのチェロに出会った。今日のリサイタルのことは、この時知って楽しみにしていた。その後、上村さんは音コンでの2位、学生音楽コンクールでの1位獲得などを果たし、メキメキ頭角を現してきて、リサイタルが益々楽しみになった。
11月に聴いた堤さんのリサイタルの会場で上村さんを見かけたので、リサイタルを楽しみにしていることを伝えると、とても大変そうに「本当によろしくお願いします!」と頼まれた。若い演奏家がリサイタルを開くというのはなかなか大変なことなんだと感じ、奥さんと友達のザコブも誘い、お客の動員に少しばかり協力したが(独りお留守番となった小学生の息子も誘ったが、あっさり断られた。。)、フタを開けてみれば開場前から長蛇の列、ほぼ満席状態で開演を迎えた。
会場には堤剛さんも見守るなか、最初にステージに登場するときは緊張した様子が窺えた上村さんだったが、演奏が始まるや、バッハのプレリュードの開始の朗々とした下降音階から、会場の聴衆を魅了した。上村さんのチェロには迷いがない。弓の根元から先端までを最大限に使い、大きく深い呼吸で息の長いフレーズを生み出す。ホームコンサートでこの組曲の一部をやったときも、力強く逞しくい演奏に圧倒されたが、あの時、至近距離で聴いたのと同じ力強さは、今日座った文化会館小ホールの比較的後方の席でも伝わってきた。音のひとつひとつに魂を込め、余計な小細工をせず真正面から熱く語りかけてくるバッハは、ストレートに心に訴えかけてきた。
バッハに始まり、ストラヴィンスキーの新古典調の曲が続き、後半がシューマンとラフマニノフという、ロマンチックな度合いが徐々に増してくるプログラミングで、曲が進むごとに演奏にもロマンチックな香りが加わり、自由度が増してきたが、芯を貫くものは変わらず、迷いのなさ、思いきりの良さ、ダイナミズムがどの曲でも前面に出て、常に能動的な演奏を聴かせてくれる。上村さんのチェロの音にはいつでも熱い意志と信念があり、男性的とも言える猛々しさを伝えてくることもしばしば。
後半のシューマンとラフマニノフでは、そうした情熱的な気持ちで愛を追い求めるように、憧れと焦燥が内包されたドラマチックな演奏となって迫ってきた。とりわけラフマニノフのソナタは圧巻!この大曲を、一瞬たりとも集中力を途切れさせることなく愛と憧れを歌い上げた。この曲はピアノパートも聴きものだが、佐藤さんのピアノは繊細で柔軟、もっと熱くなってもいいと思うこともあったが、冷静にチェリストの熱い思いをしっかりと受け止め、隙のない充実したアンサンブルを作り上げた。ピアニストの功績もあって、ちゃんと聴くのは初めてだったにもかかわらず、最初から最後まで演奏に縛り付けられ状態だった。
上村さんは間違いなくチェロ界期待の大型新人だ。完成品というより、聴く度に発見と前進が感じられそうで、これからまだまだ凄い演奏家になる未知のエネルギーを感じた。近々ヨーロッパに留学するようだが、日本での演奏も是非続けてもらいたい。
最近の日本の若い演奏家は、達人的な腕前だけでなく、
歌でもハートでも世界に通用する人が多くなってきました。
上村さんは応援していきたいですね。
実はチェロ教室の同門の人も聴きにきていたそうで上村さんは伸びるよと言ってました。
この先が楽しみですね。