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DSH等の受験

2022年05月23日 | ドイツ留学相談室

DSH等の受験

「ドイツへ留学したい!」と思い立って、準備を進めてきた留学計画の最後の難関は各大学で行われるドイツ語テストや、ドイツ語コース受け入のためのテストだ。この試験は志望留学先大学まで出向いて受けなければならない。不合格→帰国、なんていう最悪のシナリオは何としても避けたい。DSHとはどんな試験か。

DSH
 Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang

DSHとは「大学入学のためのドイツ語試験」のこと。ドイツの大学で行われる授業は基本的には全てドイツ語。ドイツ語の講義を聞いてノートをつけたり、授業中にドイツ語でディスカッションしたり、レポートを書いたり発表したり・・・ もちろん授業だけではなく、学籍登録や履修登録など諸々の手続きもすべてドイツ語だ。DSHではドイツの大学で学生としてやっていく上で支障をきたさないだけのドイツ語能力が試される。
出願書類で提出した語学証明はあくまでもDSHを受けるための証明書にしかならない(DSH免除となる証明書もある。→「DSHの免除」)。本当にそこで証明されているドイツ語能力で大学生活を送れるかは、各大学がDSHで審査することになる。
DSHに合格すれば、キミは晴れてドイツの大学の正規の学生になることができる。どこか1つの大学でDSHに合格すれば、それは全てのドイツの大学で一生有効なドイツ語能力証明となり(※シュトゥットガルト大学を除く)、どこの大学で勉強する場合でも新たにドイツ語の試験を課せられることはない。

2004年6月にDSHの新しい実施規定が施行された。旧規定との大きな違いは、従来「合格か不合格」としか判定されなかったものが以下のDSH-3~DSH-1の3段階評定となり、更に合格最低ラインが引き下げられたこと。但し、最低合格評定値のDSH-1では原則として入学許可には不十分。

【DSHの3段階評定】

DSH-3ずば抜けて高いドイツ語能力を有していると見做される。一部の学部ではこのレベルが求められることもまれにある。C2レベルに相当。
DSH-2大学の学部入学に十分なドイツ語能力を有していると見做される。殆どの大学の殆どの学部の合格ライン。C1レベルに相当。
DSH-1大学の学部入学を条件付きで認められる場合があるが、大半の大学では合格ラインとは見做されない。B2レベルに相当。

2001年よりTOEFLのドイツ語版ともいえる世界基準のドイツ語統一試験(TestDaF)が実施され、TestDaFが普及するに従ってDSHに取って代わると思われていたが、TestDaFは世界で同時に同じ条件で試験を行うことが求められ、世界規模での実施に困難な問題も多く、DSHはTestDaFと並んで、今後も留学生にとっては重要なドイツ語試験として継続される見込み。以下はDSHの概要。

形式と内容

DSHは各大学それぞれが独自に実施するが、すべての大学のDSHは全国統一の実施規定(DSH-Rahmenordnung)に基づいて出題される。試験は「筆記試験」と「口述試験」に分かれる。筆記試験は4時間に及び、体力と集中力の持続が求められる。筆記試験で最低ライン(57%)をクリアすると、別の日に行われる口述試験の受験ができる。筆記試験で合格ラインをクリアできなければ、その時点で不合格となる。

 筆記試験

筆記試験では次の3つの分野の問題で構成される。学部の専門分野に関するようなテーマは取り上げられないが、大学生として当然知っているべき基礎的な学問知識はあることが前提として出題される。

1.聞き取り
大学の講義やゼミの内容を聞いて理解でき、ノートを作成でき、質疑応答できる能力が問われる。5500~7000字程度のテキストが用いられ、読まれたテキストに関する質問への解答や、要約、文の構成など。試験時間は約80分。

2. 読解と応用力、学術的な構成力
テキストを読んで理解し、有効に活用できるかどうかが問われる。4500~6000字程度の学術文献を読んで質問に答えたり、文を組み立てたり、テキストについての説明を行ったりする。試験時間は約90分。

3. 文章の構成能力を審査する問題
大学での学問に関連した課題(250ワード程度・図表やグラフ等が用いられる場合あり)について論述する。採点では、内容よりも文章構成力により重きが置かれる。試験時間は約70分。

 口述試験

口述試験では大学のゼミナール等の授業において、討論・発表・意見交換等のスムーズなコミュニケーションができるかが問われる。所要時間は最長40分。最長20分の準備時間が与えられ、短いテキストや図表を読み解いて5分程度でそれについての内容や意見を述べたあと、試験官との問答が行われる。話す内容、正確さ、発音やイントネーションだけでなく、しゃべり方なども審査の対象となる。
口述試験では十分な理解に基づいて適切な内容の話しができるか、といった内容のほかに、話し方、言葉の正確さ、発音等も審査の対象となる。

合格ラインと評定

筆記試験で57%以上正答した者だけが口述試験に進め、ここでも57%以上正答した場合に合格とされる。合格者は筆記と口述のうち正答率の低い方の評定が下表に基づいて総合評定として適用される。
DSHの3段階評定はそれぞれ、TestDaFの3段階評定(TDN3~TDN5)に対応している。TestDaFではTDN4を入学許可レベルとしていることから、DSH-2以上の評定を得られない場合は原則として学籍登録は認められない。つまり、DSHに合格したといってもDSH-1の評定では入学許可レベルとはみなしてもらえない。

正答率DSHの評定TestDaFではGoethe-Zertifikatでは
57%~ 66%DSH-1TDN3B2
67%~ 81%DSH-2TDN4C1
82%~100%DSH-3TDN5C2

DSHの例題

外部サイトで複数の大学のDSHの出題例を紹介しているページがある。DSHが実際どんな試験なのかを知り、力試しをするのは良い準備になる。サイトに書かれているが、DSHの出題基準に則っていない場合もあることには留意のこと。
DSH-Beispiele

受験資格

DSH準備コースを実施している大学は、その受講者向けのDSHが実施される。その際のDSHの受験資格は、当然ながらその大学のDSHコースの受講生であること。
外部者用DSHは通常の入学志願を行ったうえで"Zulassungsbescheid"をもらっている志願者が対象となる。つまり、DSH受験の指示付きのZulassungsbescheidをもらうことが受験資格となる。
上記のいずれの場合も、DSHを受験するにはC1程度のドイツ語能力が求められる。
DSHの受験には受験料がかかる。料金は大学が定め、50ユーロ~170ユーロと開きがある。事前に受験料を支払っていることも受験資格となる。

試験の実施時期

内部者用DSHはDSHコースの受講終了時に行われる。外部用DSHは、通常当該学期開始前の3~4週間前に行われる。詳しい日程は送られてきた"Zulassungsbescheid"に記載されている。

受験回数の制限

従来、「DSHは生涯を通じて原則として2回しか受けることができない。」ということになっていたが、2004年に施行された新しいDSHの実施規定では、単に「DSHは繰り返し受験が可能である "Die DSH kann wiederholt werden"」と変更された。これをどう解釈するかは現状では各大学に委ねられていて、過去の受験回数を問わない大学が多いが、なかには「3回まで」と云った受験回数の制限を設けている大学がある。
再受験を1回しか認めていない大学で2回DSHが不合格となると、たとえ他のDSHの免除条件(TestDaFなど)をその後に満たした場合でも受入れを拒否されることもありえる。DSHを受ける際は受験回数制限の有無について直接大学に確かめること。

DSHの免除

こうした厳しい試験はできれば受けたくないものだが、実はDSHを受けなくてもドイツ留学する方法はある。以下の条件のいずれかに該当する場合はDSHが免除される。

   ▼▼▼
DSDⅡ(Deutsches Sprachdiplom Stufe Ⅱ)に合格している場合。若しくはTestDaFで4つの分野全てでTDN4以上を取得している場合

※以前はDSHの代わりになるとされていたKleines Deutsches Sprachdiplom、Grosses deutsches Sprachdiplom、Zentrale Oberstufenprüfung(ZOP)等のドイツ語検定試験は、2012年にゲーテのC2と統合された。

TestDaFについて
TestDaFでは、4つの分野全てにTDN4を取得していない場合でも(例えばTDN4とTDN3が2つずつ)DSHを免除する大学や学部が相当数あるので、中級者であれば受けておくといい。
但し、大学の学部によってはTDN5の評定を求められる場合もある。
TestDaFの詳細については、本サイトの「ドイツ語能力証明」も参照されたい。

以下は更にもう少しハードルを下げて、DSH免除の条件を見てみよう。

   ▼▼▼
ドイツで学位取得を目的とせず、1~2セメスター程度の短期間ドイツの大学に留学したい場合。

日本の大学に在籍しながらのドイツ留学だったら期間は1年程度になるので、この免除条件はありがたい。

しかし、この条件はドイツの全ての大学共通ではなく、こうした条件を提供している大学は限られている。その上、この件は各大学の資料やホームページにも載っていない場合が多い。志願者の成績や志望学科などによって個別に判断され、一律に決められないためだ。「提出されたドイツ語証明が本学に定めた条件に合っていること」とか、「日本の大学に最低2年間在学している場合」といった付帯条件が付けられている場合が多い。

また「教授の受入れ推薦書があること」という条件が付く場合もある。これはもちろん留学先大学の教授の推薦書であるが、自分が今通っている日本の大学のゼミの教授などに、ドイツの大学の教授で知り合いがいないかどうか聞いてみると思わぬ可能性が開けるかも知れない。

「学位取得を目的としない1~2セメスター程度の留学」の場合、DSHが全て免除とまではいかなくても、Mündliche Prüfungが免除されたり、Schriftliche Prüfungの合格最低ラインを下げてくれる大学もある。

どの大学がどんな条件でDSHを免除、或いは軽減しているかは自分で直接志望先大学に問い合わせなければならない。

   ▼▼▼
交換留学生などの身分で学位取得を目的としない1~2セメスター程度の短期間留学する場合。

上にあげた、1~2セメスターの留学が「交換留学生」など大学間や学部間の交流協定に基づいて行われる場合は、どこの大学でも原則として無条件でDSHは免除される。交換留学生になるには、大抵派遣元の日本の大学で選考試験が行われるだろうが、大抵の場合DSHよりは易しい。1年次より選考試験合格目差して頑張れば、交換留学生としてドイツの大学に留学できるチャンスは大きい。
日本の大学に在学している場合は、自分の大学がドイツの(或いはオーストリアやスイスの)どんな大学と協定を結んでいて、どうすれば派遣されるかを調べてみよう。

   ▼▼▼
日本の大学でドイツ語学科や独文科など、Germanistik関係の学科を卒業している場合。

これもドイツの全ての大学が共通で認めているわけではないが、これを認めている大学は上の「短期間の留学の場合」でDSHを免除してくれる大学より数はずっと多い。しかも、この場合は短期の留学だけでなく、学位を取得するための留学、つまりドイツで卒業を目標に留学する場合も適用される。卒業してから留学、という時間とお金の余裕があれば選択肢に入れる価値は大いにある。

DSH準備コース受入れ試験


DSHを受験する前にDSH準備コースでドイツ語を学びたい、という計画でドイツへやってきた場合に受ける試験が、「DSH準備コース受入れ試験」だ。EinstufungstestとかAufnahmeprüfungと呼ばれている。

形式と内容

問題の形式はDSHのような全国統一の規格はないが、DSHに順じた形式で出題される場合が多く、筆記試験のみが主流。量的にはDSHより短い場合が多く1時間程度が多い。過去のそこの大学で夏に行われている「夏季ドイツ語コース」のクラス分け試験がそのまま使われるという噂もある。

レベル

前述のようにドイツの大学で開設しているドイツ語コースは中級以上。初級者をカバーするコースは原則としてなく、クラスのレベルはなかなか高い。こうしたコースの試験に合格するには独検2級ぐらいのドイツ語力は必要。

合格ライン

DSHは、合格基準点をクリアすれば合格できるが、ドイツ語コースでは志願者が多数いた場合、定員まで絞らなければならないので、どの程度できれば合格かということは一概には言えない。競争率は3倍程度から28倍もの狭き門のドイツ語コースもある(ポツダム大学)。

試験の実施時期

外部者用DSHと同時期に行われ、当該学期開始の2~3週間前。試験の期日はZulassungsbescheidに記される。

プレテスト


DSHやDSH準備コースの試験の前に「プレテスト」を行う大学がある。プレテストの結果で、DSHかドイツ語コース試験か、どちらかを受けるように指定されることもある。マインツ大学などではプレテストの結果が悪いと、DSHは受けさせてもらえない。プレテストの有無や時期については送られてきた手紙に書いてあるはず。

留学開始時にやる事




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