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新国立劇場オペラ公演「オルフェオとエウリディーチェ」

2022年05月23日 | pocknのコンサート感想録2022
5月19日(木)
グルック/歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」

新国立劇場


【配役】
オルフェオ:ローレンス・ザッゾ/エウリディーチェ:ヴァルダ・ウィルソン/アモーレ:三宅理恵
【ダンス】佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳
【管弦楽&合唱】
鈴木優人 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団/新国立劇場合唱団

【演出・振付・美術・衣裳・照明】勅使川原三郎
【アーティスティックコラボレーター】佐東利穂子【舞台監督】髙橋尚史


舞台、オーケストラ、ソロと合唱、バレエ、どれもが美しすぎるぐらい美しい「オルフェオとエウリディーチェ」だった。勅使川原三郎が手掛けた舞台は、モノトーンに近い色彩のなかで、光と影とグラデーションを用い、息をのむほどの気高くピュアな美しさ。ステージとして使われた円盤に施された光の変化と、背後の幾輪もの大きな百合が織りなす幻想的な光景が暗闇に妖しく浮かび上がり、悲しいほどの静謐な美を湛えていた。

ここに音を添えた鈴木優人指揮の東フィルは、バロックオケのようにデリケートな語り口で、極上の美しい演奏を聴かせた。音の所作、佇まいが自然に湧きあがって収まっていき、何とも優美で音楽的。ときに熱く雄弁に愛や苦悩も表現する。まるで音楽の女神ミューズが奏でる音世界だ。

3人のソリストのうち、ほぼ全幕で歌い続けたオルフェオ役のローレンス・ザッゾ、歌は人間臭くて熱いハートに溢れ、悲しみや苦悩、焦燥、そして愛を惜しみなく表現し、心に深く刻まれた。エウリディーチェ役のヴァルダ・ウィルソンは、すらっとした美しい容姿に相応しい、透き通った美しい声で、気高く、くっきりとした歌唱を聴かせた。アモーレを歌った三宅理恵は、声は艶やかで歌唱も安定しているが、いわゆるお手本のような歌で個性が感じられず、何か匂い立つものが欲しかった。

合唱は視覚的には表舞台に出ることなく、黒い衣装を身に着けて目立たないが、聴覚的にはほれぼれする柔らかく美しいハーモニーと語り口で、悲しみや喜びを表現した。これも優人さんの才覚が合唱団の技と持ち味を引き出した賜物だろう。

そしてこの公演を特徴づけたのが4人のダンサーによるバレエ。勅使川原の振付けによるダンスは、リアルでありながらデリケートな優美さを湛え、このオペラの主題である愛と苦悩の葛藤、慈しみや優しさを見事に表現していた。

公演を構成する全ての要素が総動員して調和し、美の真骨頂とも云える世にも美しいひとつのアート作品を作り上げた舞台にどんどん引き込まれ、最後はじわっとした感動に包まれた。この公演は、日本的な美意識を凝縮したような稀有な出来栄えで、世界に向けて積極的に発信してもらいたい。

カーテンコールには大入りの客席から盛大な拍手が送られたが、ブラボーが聞こえないのは寂しいものだ。それにカーテンコールで、未だに出演者や演出家による手を繋いだ挨拶がない。勅使川原さんが出演者の一人に手を差し出したのに、握手してもらえなかったのも残念だった。優人さんとだけは握手できたのが救い。いったいいつまでこんな意味のない感染対策パフォーマンスを続けるのだろう。オペラで当たり前のシーンを早く取り戻してもらいたい。

「オルフェオとエウリディーチェ」~北とぴあ国際音楽祭2017より~ 2017.12.4
鈴木優人/BCJ:歌劇「ポッペアの戴冠」  2017.11.23 タケミツメモリアル
伶楽舎雅楽公演:武満徹「秋庭歌一具」/勅使河原三郎 2016.11.30 タケミツメモリアル
ヴォックス・クラマンティス/勅使川原三郎  2012.5.5 東京国際フォーラム
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