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ADACHIGAHARA ~銀座の地下に鬼が棲む~

2022年03月01日 | pocknのコンサート感想録2022
2月25日(金)ADACHIGAHARA
~銀座の地下に鬼が棲む~
観世能楽堂

【演目】
♪ 能「安達原」(加藤昌則作曲による音楽入り)

【出演】
里女/鬼女:武田宗典
ワキ:森常好/ワキツレ:舘田善博/アイ:野村太一郎
地謡:岡久広・観世芳伸・関根知孝・藤波重孝・角幸二郎・坂井音雅・清水義也・木月宣行
後見:武田宗和・山階彌右衛門
笛:一噌隆之/小鼓:田邊恭資/大鼓:亀井広忠/太鼓:小寺真佐人
ヴァイオリン:篠崎“まろ”史紀/ソプラノ:森谷真理/クラリネット:金子平
【作曲】加藤昌則 【演出】家田淳 【題字】藤田雄大


観世能楽堂と王子ホールとのコラボ、まろワールドで斬新&興味深い企画を行ってきたまろさんが出演、「銀座の地下に棲むのは鬼かはたまた…。」というキャッチコピー、色々な興味が重なった。プレトークではなくアフタートーク付きということは、謎は謎のままにしておいた方が楽しめるのではと思い、公演名のADACHIGAHARAが能の演目ということさえ知らないまま、何の予習もせずに出かけた。観世能楽堂は2017年に銀座にオープンした新しい能楽堂。来るのは初めてだし、能楽堂というところが初めて。

能の要素を取り入れた全く新しいシアターピースのようなものを想像していたが、実際は安達原という伝統的な能の演目を、狂言を間に入れた完全な形で上演し(確信はないけど)、そこにクラシック畑の新しい音楽が加わったものだった。

音楽的に興味深かったのは、「ノヴェンバー・ステップス」のように和楽器と洋楽器を対峙させるのではなく、両者が語り合ったり、一体となったりしてコラボしていたところ。異質なもの同士の同居ではなく、互いが溶け合って一つの音楽として成り立っている。安達原がどんなストーリーかは全くわからないながらも、雅やかな雰囲気とか、般若の面を付けた「亡霊」と山伏の闘いの場面などが、クラシック音楽が加わることでより鮮明でリアルに心に迫ってきた。

クラシックの音楽を担当したまろさんの硬軟織り交ぜた説得力のあるヴァイオリン、森谷さんの妖艶で滑らかで雅やかな歌唱、金子さんの歌と語りを巧みに表現したクラリネット、3人の演奏が能の舞台にしっくりとハマって場を盛り上げ、空気を熱くした。

これまでのわずかながらの能体験では必ずと言っていいほど眠くなってしまったが、今夜は全く眠くならず、観るうちにどんどんハマって夢中になってしまった。これはこのコラボの産物と云っていいだろう。アフタートークで、日本の伝統芸能は譜面には書き記せないタイミングや「気」が大切だという話になったとき、まろさんが、クラシックでも譜面に書き表せない作曲家の思いを第六感を使って演奏に反映させることが大切だと話していた。今夜はお互いのそうした「気」が歩み寄ることで上演の効果を高めたと云えるだろう。

ただ、この上演を体験したことで、逆に能という日本古来の伝統芸能そのものへの興味が大きくなった。能楽師たちが歌い、奏でる音楽は真っ直ぐに心に届き、足踏みも加わった舞は、この世のものとは思えないような畏怖を伴った幽玄の世界へと引き込んだ。新たに作曲された音楽を伴わずに能舞台そのものを体験したらどんな感覚を得られるだろうか。特に、能楽の音が入らずに加藤の音楽が鳴っていたところが本来は静寂に支配されるとしたら、印象はまた異なるものになったのではないか。

能を現代の人たちにもより分かりやすく、親しみやすく演出するという意味で、このコラボは成功したと思うが、新たな芸術を創造するという意味では「能」のウエイトが勝り過ぎている印象を受けた。作曲を担当した加藤氏がアフタートークで、「両者が遠慮し合ってしまうと無難なものにしか仕上がらない。今回は能に思いっきり踏み込んで音楽を付けた」と話していたが、能の世界を破壊するほどの強烈なインパクトのある音楽をぶつけるなど更に踏み込んだアプローチを行うことで、能そのものの魅力とはまた異なる魅力が生まれるのではないだろうか。

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