植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

ペチュニア 日光量と成長の関係

2024年09月30日 | 植物の生態

植物を日向で育てた時と家の中で育てた時の成長の違いを観察しました。今回採用した植物はサフィニア(ディープブルー)です。

二つの鉢に同じくらいの草勢になるように育てて観察に供しました。左の鉢は部屋の窓際の観葉植物が置いてある位置に置きました。直射日光は当たらない位置です。右側の鉢は外に出して天気の良い日は十分に日光に当てて育てました。写真の色温度と露出がやや不適ですが、いつも同じ条件で撮影したため補正せずに載せることにします。

そして1週間後に比較したのが下の写真です。

1枚目と同じ色温度と露出で撮影。上からのアングルで比較すると・・

外で育てた方が葉の色が濃くのびのびと成長していました。

花の色の比較では・・

 

左側(1枚目)が室内の株、右側(2枚目)が外で育てた株です。室内では花色が薄くなり色むらも起きているように見えました。外の株の方が花の色がしっかり濃く出ており花の形も良いものでした。

それから花の香りについても違いが出ていました。撮影は夕方行ったのですが、外の株に咲く花の方が良い香りがしていました。本来ペチュニアは夕方から夜にかけて香りを出して主に蛾を呼ぶ性質があります。室内だと昼夜のリズムが崩れるためでしょうか、理由ははっきり分かりませんが香りがほとんど感じられませんでした。


今回のもくろみは日光量と花色の違いの観察だったのですよ。日光量、特に紫外線が強いと花色が濃くなる、というようなことが言いたかったのです。でも、採用した実験方法と植物種が良くなかったようです。室内と外の比較だと様々な環境に差があるので何が原因で違いが出たのかさっぱり分からないという結果に・・・。唯一分かったのはペチュニアは室内では元気に育てられないということくらい。栽培用ライトとか紫外線ランプを使用すれば、人工気象室でなくてもなんとかなったのかもしれません。採用する植物も開花期間が比較的長く開花中に花の色が変わらない植物にすべきでした。ペチュニアでは開花後の経過時間で微妙に花色が変わってしまうのです。

香りにも差が出たのは興味深い点でした。香りは研究室レベルでないとなかなか定量しにくいですし香りの内容も説明しにくい部分ですが、植物種と香りの日周変化についても今後観察していきたいテーマです。

 

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ダイヤモンドリリー・花びらがキラキラ輝くのはどうして?

2024年09月27日 | 植物の生態

ヒガンバナ科ネリネ属。私が買ったのは原種系のマソニオルムという品種です。この品種は他の園芸種と違って花がとっても小さいし葉が細く紐のような感じです。それに他に比べても咲くのが早い。野生味溢れた印象です。見栄えを優先させるなら園芸種の一択でしょう、でも咲き始めていた花があまりにも可愛いらしかったので思わず買ってしまいました。花被片に太陽光が当たり、花が風で揺れると宝石のようにキラキラ輝くのでダイヤモンドリリーとも呼ばれています。

今日は、その輝く理由について探っていきたいと思います。

マソニオルムはこんな花です。

花被片を拡大すると・・

こんな感じ。静止画ではわかりにくいのですが表面の粒々が光を反射してキラキラします。

その理由を探るために顕微鏡で調べてみます。まずは100倍

花被片の表面は透明感のある粒々でぎっしりと覆われています。

さらに拡大して400倍にしてみると・・

このように、表皮細胞の粒々を通り抜けた光が焦点を結ぶように輝いていました。

裏面も見てみます。

同じように裏もキラキラしていました。

次に花被片の断面を見てみると・・

上の面が花被片の表側です。表、裏ともに粒々とした細胞が並んでいますが、特に表側の方が球形に近く見えました。淡いピンク色の色素は、表裏 双方の表皮細胞中にありました。


次に比較のためにジニアの花弁でも調べてみました。

こちらはマット調でキラキラはしません。表側を100倍で・・

当てる光の角度を色々変えても全然キラキラはしませんでした。断面を見てみると・・

写真上が花弁の表側です。このようにジニアの表側の表皮細胞は、鋭角円錐型の突起となっておりネリネよりも一つ一つの細胞が詰まって並んでいました。多くの顕花植物ではこの形状を採用しているのではないかと思っています。というのも、表皮がこの形であれば、表面反射が抑えられ表皮細胞中にある色素の発色を良く見せられるから。むしろポリネーターにアピールするにはこちらの方にメリットがあるような気がします。ネリネには何か特別な事情があるのでしょうかね。

以上まとめると、ネリネの表皮細胞は球形に近く大きめの細胞のため、透過した光が凸レンズ効果で収斂し一層明るい光点として反射するためキラキラして見えることがわかりました。


チューリップに「ユニークデフランス」という品種があります。その売り文句に「通常のチューリップに比べて明らかに花のつやが違います」とありました。これもネリネと同じ理由なのかな?ちょっと興味があります。今年はその球根が手に入れられるかどうか。もし入手できたら調べてみたいと思います。

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キキョウは雄が先!?

2024年09月26日 | 植物の生態

暑さはようやくおさまって来ましたね。秋の雰囲気を出そうと思って桔梗を買って来ました。

桔梗というと花冠も雌しべの先も5つに割れるのが普通だと思っていました。でもこの花は雌しべの先が4裂です。そういうこともあるのですね。

以下、一つの花に絞ってどのように咲き進むのか調べていきたいと思います。

ちょうど翌日開花しそうな蕾があったのでこれに決めました。でも形がなんかが変・・

正面から見ると四角い小包のよう。??これが5つに割れるのでしょうか?

 

開きました〜。ぱちぱち。開花1日目。あら〜やっぱり花冠は4裂でした。

開花直後は写真のように雌しべに雄しべがべったりとくっついています。仲が良いんですね・・。この段階で花粉はまだあらわにはなっていません。

次の写真が開花2日目・・

 

雄しべの数も花冠の割れと同じく4でした。2日目では雄しべは雌しべから離れて花冠近くまで倒れていました。そしてその葯には花粉が残っていませんでした。花粉はというと、雌しべの側面に生えている細かい毛にべったりと付いていました。雄しべは花粉を雌しべに託してその役割をあっという間に終えるのですね。花粉は雌しべ側面に提示されている一方で柱頭はまだ展開していないので雄が先に熟すという意味で「雄性先熟」といいます。

がくの数はどうなっているでしょうか。後ろから撮ってみると・・

がくも4つに割れていました。この花は全部4つで統一されているようです。同じ茎から出ている他の花では花冠・がく共に5裂で、雄しべが5本というのもありましたので遺伝的に決まっている形質ではないということです。

そして開花6日目の花が・・

柱頭が割れました。これも4裂でした。雄性期に入って4日が経過しており、この段階でほとんどの花粉が虫によって運び去られていました。柱頭が開いて花粉を受け取れるようになったのでここから雌性期になります。このように、雄性期と雌性期をずらすことで自家受粉を巧みに避けているのです。

今後の興味は、蜜のありかと花の微細な構造。それに子室の数。この花では子室が4つになると予想。花冠が5裂で柱頭が4裂の花ではどうなるのでしょうか。花冠が5裂で柱頭が3裂という花もありました。そのあたりは追って報告したいと思います。

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マツバボタンの雄しべ・触れると自ら動く!?(改)

2024年09月25日 | 植物の生態

「ポーチュラカとスベリヒユとマツバボタン」シリーズの第6回目(改)です。9月20日に投稿した「マツバボタンの雄しべ・触れると自ら動く!?」は削除しておきました。

今回はポーチュラカとマツバボタンの雄しべが人知れず涙ぐましい努力をしているかもしれないというお話。スベリヒユだって頑張ってはいますが花が小さすぎて観察しにくいため今回はお休みしてもらいます。

動きがあるものはやはり動画の方がわかりやすい・・ということでマツバボタンの雄しべが動く動画をYouTubeにあっぷしておきました。懲りもせずつまらない動画を作ってしまった・・・ブログの方はチャプターの静止画で説明したいと思います。

まずはポーチュラカを観察していると・・

ヒメハナバチがポーチュラカの花に訪れていました。虫が雄しべに触れると雄しべが自ら動くというのですよ。でもヒメハナバチの戯れが激しくてね。雄しべが自ら動いているのか蜂が動かしているのかよくわからん。

ということで、人為的に雄しべに触れてみることにしました。ヒメハナバチ(種類は不明)は花粉を集めるのが好きみたいです。

選手交代でマツバボタンです。まずは触れる前の写真。次に触れようとした写真・・

こんな感じに花の上側の雄しべをさら〜って爪楊枝の先で軽く触れました。すると・・

この写真のように雄しべが触れた方向に「むにょ〜〜」って動いたのですよ。変な擬態語が出ちった・・静止画で説明するのって大変。

そんでもって・・

約4分半後には雄しべは元の位置まで戻りましたとさ。めでたしめでたし・・この写真は載せなくてもよかった?

次に雄しべに強く触れた時、連続して何回くらい反応を繰り返せるのかを調べました。あの・・これから似たような写真が連続しますけれどびっくりしないでください。

まずは1回目。刺激後10秒程度の時、雄しべが最大に動いた時のチャプターです。この後4分半ほどかけて元の位置に戻ります。

そして2回目 同じく雄しべが最大に動いた時のチャプター。注目点は奥側の花弁です。1回目の時と比べると水分を失ってやや萎れた感じがあります。動画を見ると、雄しべが元の位置に戻るのに合わせて花弁も萎れていく印象がありました。雄しべが元に戻る時には花弁に貯めてある水分が利用されているのかもしれません。

3回目から、雄しべの動き方が明らかに小さくなりました。花弁のしおれ方についてはさらに強まっています。

4回目以降は3回目の時とほぼ同じような感じでした。すなわち、雄しべが動き方は小さい一方、動いた分については数分のうちに元の位置に戻っていました。この写真は7回目のものです。連続7回繰り返して雄しべの動きが完全にストップすることはなく、観察は終わりにしました。


雄しべに触れると自ら動く意義について。雄しべが動くことで訪花昆虫に託す花粉を多くして結実量を増やすとする見解があります。しかし、投稿したYouTubeのポーチュラカとヒメハナバチに見るようにあのクラスの蜂が頻繁に来ればこんな涙ぐましい努力は不要でしょう。蜂の行動量が十分大きいので少しばかり動いたところで大同小異で意味ありません。一方でそれとは別の視点もあります。植物側の本来の目的は自家受粉を避けることで雄しべが雌しべから離れる動きに過ぎないというもの。特に花弁が閉じる前後で雄しべが雌しべに接触しないようにテンションをかけているが、花弁が開いている時も雄しべの感覚の鋭敏さが保たれているので、虫が触れただけで結果的に動いてしまうという見解。雄しべの感度が上がるのは花弁が閉じる前後らしくそのような推測が成り立つそうです。

いずれにしても小さなことからコツコツと・・どんな境遇だったとしても小さのことでも頑張っていることが大切なのかも・・です・・と無理やり終わりにして締めてみた。

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なぜメランポジュームの筒状花には種子ができないのか

2024年09月24日 | 植物の生態

メランポジュームの3回目です。1回目では着果の様子を写真で示しました。 2回目はまとまり良く花がたくさん咲く理由を解説しました。

今回は、メランポジュームのタネが舌状花だけに稔る理由を調べていきたいと思います。

まずは結実の様子から・・

写真右下のように舌状花の下にドーナツ状に並んで種子ができます。

次に咲き始めの花を観察してみます。

1:舌状花の花冠 2:舌状花のめしべ 3:筒状花の花冠 4:筒状花の雌しべ

舌状花から咲き始め、さらに筒状花の外側から中心に向けて咲き進んでいきます。舌状花にはおしべが見当たらず、めしべは先が二つに分かれていました。

さらに咲き進むと・・

舌状花のめしべが一番先に黒くなり枯れます。一方、舌状花の花冠は最後まで枯れずに残り頭花を飾ります。

咲き始めの筒状花を顕微鏡で拡大してみると・・

1:舌状花の花冠 2:舌状花のめしべ 2’:柱頭(花粉を受ける部分) 3:筒状花の花冠 4:筒状花のめしべ 5:筒状花の葯(葯筒)

キク科の筒状花では、めしべを取り囲んで葯が合着し葯筒になります。筒状花の雌しべには毛が多数生えており、その毛が葯筒から出される花粉を受け取ります。

次第にこの写真のようにめしべが伸びて花粉をまとわり付かせて花粉を運ぶ虫が来るのを待っています。

さらにめしべが伸びたところ。花粉の多くは虫に持ち去られて残りわずかになっています。

筒状花で実をむすぶ花(例えばアザミ、ジニア、ヒマワリなど・・多数種)では、この後に柱頭が開いて雌性期になりますが、メランポジュームではこのまま花が終わり種子ができないのです。

まとめると、メランポジュームでは、舌状花は雌花の役割で種子を作り、筒状花は花粉供給の雄花の役割に徹しています。筒状花は外側から順に咲いていくので一つの頭花で長期間花粉が出続けることになります。ほぼ100%の結実率は、雌花に対して花粉の供給が安定して多くなるためと考えられます。メランポジュームは、着果数は少なくても確実に舌状花に稔らせる方針を採っている植物なのです。


ついでに花粉の顕微鏡写真を撮りました。ジニアのそれと比較してみます。

これは今回花粉を調べたジニアの花。ジニアでは舌状花だけでなく筒状花でも種子ができます。この写真でわかるように筒状花の柱頭もくるりと開いて活動します。

花粉を比較すると・・

花粉の大きさ:メランポジュームが約24μm、ジニアが約32μmでした。花粉の大きさはジニアの方が一回り大きいですが、両者ともに表面がトゲトゲしており、この特徴はキク科共通のものです。

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