さて、今回改めて気が付いたことがありました。イノベーションを起こすための期間についてです。
今回のエポックな結果については、その実証実験の報告書ができるまでに足かけ5年もかかっているわけです。
たくさんのステークホルダーが関与することと小規模な実証実験にも関わらず、予算も時間もかなりかかります。
これが五年間続くとどうなるか。
一番最初に組織された優秀な中堅社員たちには、5年のあいだに男性はキャリアアップのための異動や昇格のタイミングがやってきます。3年くらいで別の部署に異動しないと次のキャリアが怪しくなってきます。これは優秀な中堅社員にとってはクリティカルです。
ずーっとこんな雲をつかむような、霞を食べるようなイノベーション生活を続けるよりもキャリアアップの機会が会社から提示されれば異動せざるを得ません。
6人ほどいた男性は、5年経過すると、私と子会社の中堅社員しか残っていません、実際。
みんな異動していきました。寂しいけれども。
では女性社員はどうか、というと、5年もあると、こちらも大事なライフイベントが立ちはだかります。しかも学業優秀な才色兼備な女性たちです。
必ず結婚と出産です。結婚だけならあまり影響は少ないですが、すぐに出産がやってきます。離脱せざるを得ない。
2人いた女性のうち、1人は結婚と出産で離脱
もう一人の女性は奇跡的に、5年の間に出産していなくなりましたが復職して同じこのタスクフォースに復帰してくれたのでした。しかし、幼い子どもを抱えての勤務時間はフルタイムには遠く及ばない。
でも復帰してくれたのがこれが大きかった。私は助けられました。
ずーっとやっていて、施設やITベンダーの間に入ってリードできるのは私とその女性しか5年経過すると残らなかったのです。過去の経緯を知らないとこのタスクフォースは繋がりません。結構壮大な野望なので。
さらに私1人ではシニアマネジメントとの折衝で必ず喧嘩をしてギクシャクしてしまい予算が取れなくなる。上位会議体で承認がとれなくなり、頓挫する。すぐ、上位者におまえやめろというタイプだから。女性がいてくれると社内シニアマネジメント調整がうまく運びます。
私は社外のステークホルダーとの交渉や関係構築に集中出来るわけです。役割分担ですね、
これがうまくいったと思います。
なにを言いたいかというと、5年の時間が必要なプロジェクトは、実証実験に到達することすら、成立しにくい。
私が別件で業界に先んじて導入したサービスも、2018年に開始して、他の会社からうちもやりたいから教えてほしいと問い合わせが来るまで5年もかかっています。
この業界で誰もが課題を感じている必要な新しいサービスを入れるのに5年も必要。しかもコロナ禍の需要があってこそ。コロナ禍は悪いことばかりかと言うとそうでもなく、ピンチをチャンスに変える機会でもありました。
きせいさんぎょうであることも影響していますが国が出すガイドラインができるまで投資すら開始しない企業がほとんどで、まあイノベーションが起こりにくい業界の体質。すぐに横並びになって左右をキョロキョロ様子をうかがう会社ばかり。
さらに新しいことを始めなくても、チャレンジしなくてもある程度出世すればかなりの収入が約束されている。
こうなると、長く時間をかけてチャレンジしなくなるし、出来なくなる。
しかし業界そのものがゆでガエルになっていることに危機感のある先生たちはかなり前から気がついているが企業側が、危機感が少ない。
ジリ貧になっているのを黒字リストラで利益を上げようとしている不健全な状態に思えます。
やっぱり社内人材の青田買いをやめるべきですね。何年か腰を落ち着けて、種をまいて水をやる作業も同時並行でやらないと。3年くらいで動かすのは早すぎ。しかも脂の乗った中堅社員でないと無理。
なにか幹部候補を絞っておいて、出世のレールに乗せてしまって、後のその他大勢は、リスクの少ない単調な仕事を長期間やらされる、という二極化が進むように思えます。これだと優秀な選抜された人材は腰が落ち着かないし、課題に気がついた頃に異動してしまう。
かたや選抜されなかったその他大勢はへばりついてルーチンワークに忙殺される。
どちらにもよくないし、イノベーションが起こりにくい、さらに経営陣はボトムアップの意見が出ないのでコンサルタントに頼るようになり、コンサルタントの考えた上っ面のプランばかり落としてくる。ドーピングですよね。
その他大勢の何割かは希望退職させて、今の短期的な目標を達成できそうな人材と置き換えて。でも支配層は不動、という何とも夢のない状態に。
そういった環境下でも、5年の時間が取れたのはキャリアアップしないポジションであることが多分に幸いしている。私が外れたら絶対におじゃんだった確信があります。
それは能力の問題ではなく、ずーっと定点観測できたことが非常に大きい。
もともとやりたいことを出世のために引き換えにするタイプではないので、必然と偶然がうまいこと重なったのだと思います。
個人的には搾取されている気分にはなるものの、あまりにも管理されないことと仲間に恵まれたのはラッキーでしたし、関わって頂いた皆さんに感謝ですね。
ITベンダーのメンバーも同様に、ある人はライバル企業に転職したり、ニューヨークのアートオブカレッジに留学したり、私たちに近い会社に転職したり、して、五年でほとんどが入れ替わってしまっています。しかし、何億もの予算を長期に投資して頂いたのも本当に感謝に堪えません。
こんななんの力もないおじさんの夢物語にお付き合い頂いたのは、さすが世界的な企業グループです。
施設の皆さんにもたいへん可愛がって頂いた実感もあるし、同じテーマを違う立場で知恵を出し合って1つの製品を社会実装していける体験は何にも代え難いものがありました。
異なる立場、異なる職種の人たちがコラボレーションするって本当にイノベーションを起こせる可能性が何倍にも高まるんだな、と会社の中の論理ではなく、大きな実験場を作れたのは本当に素晴らしい体験でした。キャリアのピークと言っても過言ではありませんね。プレシャスな時間でした。
さらに今住んでいる場所も本当に施設に近くて、この町に住んでいて本当によかったと腹から思いましたし。ここでなければ、毎月顔合わせしてディスカッションできなかった。