「誰かが見ている」 宮西真冬 274頁
第52回のメフィスト賞受賞のデビュー単行本2017年出版。
4人(+1人)の女性(+2人の子ども)がそれぞれ1人称で
立ち替わりに語り進め、物語のピースを埋める。。
というかルービックキューブを交代で順番に自分の色(家庭)を揃えてゆくような印象を受けた。
自分のターンになると必死に、けなげに自分の家庭や生活を整え揃えようと女性たち、妻、母親、保母、・・・・
SNSとブログで理想のなりすまし母娘の投稿を続ける母親。
セックスレスに悩みながら不妊治療にすがる妻。
保育所のストレスに過食に走り、結婚に救いを求める保育士。
高級マンションに住み母子ともに一見、恵まれた容姿と境遇に見える母親。
ようやくそろい始めた自分の色の面=幸福な家庭、に手が届き
始めるとキューブは次のプレーヤーの女の手に渡り、盤面が乱されてしまう。
非常にも・・
夫や父親は書き割りのように類型的で存在価値を読みだせない、妻や母親の悩みも子育ての苦労もお手伝い、協力レベルでやってみようか?程度の他人事なのだ。
どの女性も「隠し事」を抱え「裏の面」を抱え、日々軋み悲鳴を噛み殺しいる。
「助けて」と誰も言えない、誰にも言えない
ネットで相互監視するように隣人の緑の芝生を注視することしかできない。いつの間にか嵌ってしまった異様な社会です。
読者の女性は激しく共感し、読者の男性は慙愧の念にさいなまれるでしょう。
それでもキューブは物語りのラストの一つの完成形に向けてターンが繰り返されてゆきます。お互いのターンがお互いの面に干渉し、組み合わされながら一つの形にそれぞれの女性たちの人生、家庭が絡み、収束してゆく。
全てのピースが組み合わさり 出来上がったキューブの色は?図柄は?どんなものになったのでしょうか?
それはネタバレで書けませんが
僕にはこの辛い経路をようやく走り終えたような、読了の満足感を得たものであることのみ報告しておきます。
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