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イノセント・デイズ

2022-11-10 18:37:00 | 書評 読書忘備録
イノセント・デイズ 早見和馬
装画 東才子
この本を読むのには覚悟が必要だ。どんな覚悟かというと例えば10kMマラソンするような覚悟とか、
或いは東京国立博物館の国宝展を観に行くときのような覚悟とかだ。
要するに本気で読まないとこの本は(作者は)本気で書いてきているので、力負けしてしまう

内容:ある死刑判決を受けた女性主人公田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺した罪。
彼女は死刑を宣告される。死刑執行のその日のオープニングから物語は幸乃の生い立ちにさかのぼり始める。
凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人。
の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そして意外な真実と哀れな幸乃の人生。
「ああ無常」と「湊かなえ」を足して2で割らずに掛けてしまったような本だ。
はっきり言ってしんどい、辛い、楽しくない。でも、読み進めずにはいられない。
そこに、この本の作者の心髄がある。辛くとも読め!という圧が頁から吹き寄せてくる・・・・

前回、名古屋闇サイト殺人事件の「いつかの夏」を読んだ繋がりで手に取ったこの本だが、このコンボは
実に適切であり、それゆえズシン、と腹の堪えた。
是非、自分に続き挑戦されたい方は心身を整えて覚悟して面してくださいませ。
最後に、本書は新潮文庫で読まれることをお勧めする、文庫版にのみ辻村深月さんの、いい解説が
寄せられている。疲れたメンタルをいたわり、共に長い距離を走り終えた同士の共感といったものを
与えてくれる。この解説だけでも、何度も読み返してしまった。それだけの価値がある。