話は『騎士団長殺し』の後半の後半。
飲まず食わずで疲弊しきった主人公の「私」に 免色氏がつくってくれたのが
オムレツだったという話です。
ちなみに免色氏は谷間を隔てたゴージャスな邸宅に住む隣人の男性です。
さて、ギリギリの状態で助け出された「私」にまず差し出されたのは、
ミネラルウォーターでした。
それから、リンゴの皮を剥いたものを3個か4個。
次にクラッカー。
そして蜂蜜入りの紅茶。
最後に冷蔵庫を覗いて作ってくれたのがオムレツでした。
免色は冷蔵庫から卵を四つ取り出し、ボウルの中に割り、箸で素速くかき混ぜ、そこにミルクと塩と胡椒を加えた。そしてまた箸でよくかき回した。馴れた手つきだった。それからガスの火をつけ、小型のフライパンを熱し、そこにバターを薄く引いた。抽斗の中からフライ返しをみつけ、手際よくオムレツをつくった。
「私」が予想したとおり、免色氏のオムレツは完璧でした。
「そのまま料理番組に出してもいいくらいだ」と「私」は考えます。
オムレツは皿に移され、ケチャップと共に「私」の前に供されます。
「完璧なオムレツだ」と私は言った。
免色氏はなにもかも見事にスマートで手抜かりなく、効率よく、繊細な手際の持主。
その彼は、どのような形で物語に絡んでいくのでしょうね。
それは本を読んでのお楽しみということで。