千秋楽―心のグラス

幕は降りた
極彩色と愛と優しさに包まれた芝居は終わった

心の中のグラスの大きな喜びを一気に飲み干した
だから空っぽだ

贅沢かもしれないけど
空っぽは寂しい
グラスが綺麗な物ならなおさら！

でもある日気づいた
空っぽは
次にまた何かで満ちる証なのだと
東へ西へ
あちこち走って触れて発見して
楽しさや喜びで満たしてやればいい
並々と何かが注がれていく喜びを
まだ見ぬ観客に伝えてゆけばいい

空っぽに耐えるのは役者の仕事だ

「あいする」

小さな女の子が
「あいする」という言葉を見かけました
回らぬ舌で　あ・い・す・る
何度も口ずさんでいるうちに
これはきっと綺麗で素敵な言葉だと感じました

だから今度は画用紙にクレヨンで書いてみます
あ・い・す・る
「あ」や「す」がうまく書けない！
だから繰り返し書き続けました

大人の愛も同じです

何度も経験しないと上手にならない

真冬のオリオン

どんなに寒くても
夜空の写真を撮ろうとせず
記憶に焼きつけようと
寄り添って手を繋いで
じっと上を見つめた君

来年の冬も一緒にここに来ようね
オリオンの思い出は
今日から始まったのだから…

芽吹き

今という時期は
あまりにも中途半端
花はこの先咲く準備だけしていればいいのが羨ましい
私はマフラーに顔を埋めながら
押し寄せる別れを予感してうつむけばいいのか
出会いを信じて前を見ればいいのか迷っているのだから…