冥土院日本(MADE IN NIPPON)

生霊は温かい?

昨日の鍋ネタの後日談です。


その後、私の知人は深夜の不眠現象に悩まされ続けた。どんなに遅い時間に就寝しても、午前3時頃になると寝苦しくなって目が覚めてしまうのである。寝室の気が悪くなっているのではないかと思い、部屋を掃除し、線香を焚き、寝具を洗濯し、よく日に当てても一向に良くはならなかった。

ある夜の事、知人は同じように寝苦しくなって目が覚めたそうである。半開きの目で枕元の時計をみるといつもと同様に午前3時を回ったところであった。「またか」と思った刹那に身体が凍りついたように動かなくなってしまった。『金縛り』である。寝起きの変性意識状態を金縛りと感違いすることも多々あるようだが、意識ははっきりと覚醒していたという。金縛りを解く呪文を何度唱えても全く効果がない。すると後ろから肩越しに青白い手と腕が伸びてきて知人の両手をしっかりと押さえ込んでしまった。もちろん後ろを振り返るにも身体の自由はきかない。

その時、知人は「しまった」と思ったそうだ。財産分与の話が出たため自宅の処分も考えなければならず、前日に不動産会社を下見に呼んでいた。その下見の前に門柱の神札と玄関の盛り塩を取り払っておいたのだそうだ。(人によってはこの手のものを嫌う人もいる)離婚話にはなるべく冷静に対処し、傍目には平静を装ってきたが、自分の波動がひどく下がっていることは間違いない。波動同調の法則で、性質の良くない低級霊を呼び込んでしまったのかと一瞬後悔の念がよぎったという。

そして、悪霊への対処法として『汝は我と何の関係があるのだ』という言葉を思い出したそうである。釈迦が菩提樹の下で悟りをひらく際に悪霊が様々な妨害をした。その時釈迦はこう言って悪霊の誘惑から逃れたといわれている。座禅等で魔界に繋がった時にも効果があるとされているのを私も聞いたことがある。

知人はこの言葉を心の中で言った。が、しかし何の効果もない。益々、青白い腕は知人の身体を強く押さえ込み、左手の甲に爪をじりじりと食い込ませ始めた。知人はあせったが、その痛みがやけにリアルだったため、逆に冷静さを取り戻すことが出来た。そして奇妙なことにその腕の感覚に微妙な温もりがあることを感じた。つまり、悪意に満ちた悪霊や死霊の冷ややかな感覚がないことに気がついたというのだ。

咄嗟に、知人は『○○、自分のところに帰れ』と叫ぶと、腕はぐにゃりと曲がって消え、同時に金縛りが解けた。この体験が現なのか幻だったのかは俄かには区別がつかないほど身体が疲れきっていて、すぐには立ち上がれなかった。やっとの思いで部屋の明かりをつけ、ふと我に帰った時、左手の甲がひりひりとやけに痛む。そこで自分の手を見ると・・・何と赤い筋状の爪あとがはっきりと残っていたそうである。

ここまで書けばもうお分かりであろう。別居中の奥さんの生霊が知人に取り憑いた訳である。青白い腕の主に気づいた知人が最初に叫んだのは奥さんの名前であった。釈迦の言葉も効き目が無いのは当然である。『汝と我は大いに関係がある』からだ。前日のブログでも書いたように、この奥さんが発する想念は相当強力なものであった。もちろん本人はそんな念を飛ばしているなどとは毛頭自覚がない。

恨みや怒りの想念は相手を不快にさせたり、体調をおかしくさせる。この想念がさらに凝り固まると生霊となって相手にとり憑き、健康を害したり、時には命さえも奪うことがある。さらに始末が悪いのは、自分の発した悪想念が自分自身を苦しめ、波動低下の悪循環によって悪霊を呼び寄せてしまうことである。

しかし念の総てが悪い訳ではなく、相手の無事や幸せを心から願う良い想念は強力なバリアーとなって、相手の身を守り幸せにもする。生身の人間だから一時的に怒りや恨み、妬みの感情を持つことはあっても、その感情を浄化し、持ち続けないことである。『利己的な心』には悪想念が起き易い。常に『利他の心』を持ち続けることが大切なのである。

リニューアル早々、生霊などというおどろおどろしい鍋ネタとなってしまった。しかし。知人にとり憑いた生霊にかすかなも温もりがあったのは、純粋な恨みや怒りではなく、旦那に対する『未練の想い』が混ざりあっていたのではないかと、私は解釈している。男女の愛憎は微妙かつ複雑で不可思議なものであるが、この話にはわずかながらも救いがある。

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